15-2.ドジっ娘女神?
「魔法が使えない!?」
一先ず、一応の目的は済んだので、
落ち着いて状況を整理するために、
私は自宅に転移しようとした。
なんか神官さんも話しをする前にどっか行っちゃったし。
だが、瞬間転移も転移門もどちらも使えなかったのだ。
というか、自分の中にあったはずの魔力を上手く感じ取れない。
セレネやノアちゃんと同じように、
神力を得たことで魔法の素質が消えてしまったの!?
「嘘でしょ!?
あの女神、加護を与えるとか言って
なんてもの奪ってるのよ!」
神官さんを通して女神を問い詰めようとするも、
肝心の神官さんがどこにも見つからない。
ノアちゃんですら神殿内に気配を感じないと言う。
まさか逃げたの!?
まあ、そんなわけないか。
女神の降臨で消耗したのかもしれない。
なんか体を貸してそうな流れだったし。
どこかに転移でもしたのだろうか。
その方法教えてから行って欲しかったわ。
あかん・・・
収納魔法ですら発動しない。
こんな山奥で手ぶらよ!?
一体どうしろっていうの!!!
ホントなんなのこれ・・・
魔力が無くなってしまったの?
それとも魔力を扱う事が出来なくなったの?
神力なんて渡されてもいきなり使いこなせないわよ!
やっぱあの女神なにかズレてるわ!
本人と話してみると、
意外と悪い存在じゃないんだな、なんて思っていたのに!
これは女神のドジなの?
それとも織り込み済みなの?
何か試練でも与えているつもりなの?
そうだ!
「セレネ!あの手袋見せてくれる?
神力で収納を使う手段を知りたいの!」
「良いよ。はいどうぞ」
私はセレネから受け取った手袋を観察する。
細かっ!!
こんな薄暗い場所で見えないわよ!
「あと、ごめん明かりも出せる?」
セレネは神力で明かりを生み出してくれた。
私は手袋に刻まれた魔法陣を覗き込みながら考え込む。
む~り~こんなの直ぐには解読できない~
そもそも私自身が神力を扱えな~い
「アルカ。
私がそれを使うから視てもらうのはどう?」
「そうね。お願いするわ」
セレネに手袋を返して、
セレネが魔法陣を起動するのを観察する。
うん。無理。
だって魔法陣に流し込んだ後は一瞬だもの。
変換の過程なんて読み取れないわ・・・
というか、魔法陣って普通の魔法より発動速度速いんじゃない?
今度私も使ってみようかしら。
魔法陣の技術はグリアの秘蔵だから、
流石に教えてはくれないかな?
「困ったわね・・・
食料も寝床も無いのに、
こんな山奥に取り残されてしまったわ。
神官さんもどっか行っちゃうし」
「なんとかしてルネルさんに連絡出来れば良いのですが」
「そうね。
それに、何時までも連絡が無ければ
ルネルが探しに来てくれるかもしれないわ。
あと、朝になれば神官さんも戻って来るかもしれないし」
「じゃあ、今日の所はもう休みましょうか。
流石に眠くなってしまったわ」
「セレネそう言いながら、
自分だけ起きているつもりですね?
アルカの事を見張っていたいのでしょう?」
「・・・だってまた邪神に干渉されたら止めなければいけないもの」
「だからと言って何時までも一人では守れません。
私だって、アルカに何かあればセレネを起こすくらいは出来ます。
私と交代で眠りましょう」
「ありがとう。
ノアになら任せられるわ」
「セレネは先に寝て下さい。
既に一度力を使っているのでしょう?
少しでも回復して次に備えて下さい」
ノアちゃんはそう言いながら、
リヴィを差し出す。
「今のリヴィは温かいですよ。
良い抱き枕になります。
夏とはいえ、流石にここは冷えますから」
「zzz・・・」
リヴィは既に眠っていた。
人間態になって、
体温とかまで変わっているのかしら。
ドラゴン態の時は少しひんやりしているくらいだったのに。
「ありがとう。
そうさせてもらうね。
アルカも、何かあったら絶対にノアに言うのよ?
変に我慢したりしないでね?」
「約束する。安心して。
ありがとうセレネ。愛してる」
私はセレネにキスをして、
私の膝に横たえる。
セレネはすぐに眠りについた。
(いっぱい頑張ってくれてありがとう。お疲れ様。)
「アルカも寝て良いんですよ?
私が見張っていますから」
「ううん。私は一晩くらい平気だから、
今は神力の使い方をどうにかするわ。
神力で収納が使えるのは間違いないのだから、
私が使いこなせれば解決するもの」
「ならお手伝いします」
ノアちゃんがそう言って、
私の手を握る。
私の手に神力を流し込んでいるようだ。
なんだかゾワゾワする。
とっても落ち着かない。
私はノアちゃんに押し返すように力を流そうと試みる。
やっぱりすぐには上手く行かない。
当然だ。
今まで持っていなかったものをそう簡単に使いこなせるわけがない。
暫く挑戦していたが、
耐えられなくなってノアちゃんの手を離してしまう。
「アルカ?
どうしたんですか?」
「これとっても辛いわ」
それを聞いて、
また私の手を握るノアちゃん。
「待って!ちょっと休憩!
これ辛いんだってば!」
「ダメです。
アルカも早く帰りたいのでしょう?
頑張ってください」
「絶対目的違うでしょ!
なんかイジワルな顔してるわよ!」
「そんなわけないです。
アルカの為にやっているんですから」
「嘘よ!絶対楽しんでるわ!」
「あんまり騒ぐとセレネが起きてしまいます。
大人しくしていて下さい」
「ノアちゃ!むぐ!」
ノアちゃんは私にキスをして口を塞ぐ。
「やめ!やだって!」
膝に乗せたセレネも気になって上手く身動きがとれず、
禄に抵抗も出来ないままノアちゃんにイジメられ続けた。