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15-1.降臨

「お久しぶりですね」


神官はいつかの様に待ち構えていた。

まるで私達が来ることを知っていたように。


まあ、本当に知っていたのだろうけど。



私達は神官に近づいていく。



「我らが神がお待ちです。

アルカさんと話しをしたいと望んでおります」


「もうそこまで力を取り戻しているの?」


「短い時間ではありますが可能です。

聖女セレネ。あなたの献身に感謝を」


「そんなんじゃないわ。

私はアルカのためにやったの。

女神の為なんかじゃない」


「ええ。存じております。

我らが神の遣わした

異世界より呼び出されし者に

よくしてくれていると」


「それは私自身の意思よ。

女神に感謝される筋合いなんてないわ」


「・・・そうですね」




「では、これより我らが神が降臨致します。

どうかあの方の言葉に耳を傾けて下さいますよう」



神官の体が目を開けていられない程の眩い光りに包まれる。


薄暗かった神殿が光でいっぱいになった後、

徐々に光が薄れていくと、

神官のいた場所には幼い少女が立っていた。




見た目は何の変哲もない美少女だ。

翼も生えてはいないし、

華美な装飾も身につけていない。


手には何も持たず、

服装も質素なものだ。


そのためか、

かえって美しい金色の髪が際立っている。

とはいえ、

それも普通に美しい人間と変わらない。

世界中探せば何人かはいそうな程度だ。


けれど、存在感だけが違う。

纏う気配が神々しさを放っている。


たったそれだけで、

どんな宝飾品にも勝る印象を植え付ける。





「女神ニクス・・・」



「ええ。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。

アルカ様。

まずは謝罪を。

過酷な運命に一方的に巻き込んだこと、

深くお詫び致します」


「そして感謝を。

これまでよく頑張って下さいました。

アルカ様のお陰でこの世界は救われました」



「何を言っているの?

私はまだ何もしていないわ。

魔王を倒したのはセレネとクレアよ」



女神は静かに首を横に振る。



「それもあなたがいたからこそです。

今代の勇者と聖女を私の元に導いてくださいました。

それに、それだけではありません」


「アルカ様の行いの一つ一つに

感謝をお伝えしたいところですが、

今はあまり時間がありません」


「どうかお聞き下さい。

アルカ様は外なる神、

あなた方が邪神と呼ぶ存在によって、

既にその身に干渉を受けたはずです。

もうあまり時間は残されていないのです」


「まずは加護を与えます。

どうか受け入れて下さいませ」


言うなり、

女神の体から力が放たれる。



身構える隙も無かった。

気付いた時には私の体は神力を纏っていた。


クレアやセレネにも負けない程の力を感じる。



「何で突然こんな事を?」


「外なる神に抗う為には必要な事でした。

どうか負けないで下さい。

加護は純粋な力のみではありません。

どちらも使いこなせれば干渉は退けられます」


「魔王には与えなかったの?」


「あの方はその力に耐えられる素養がありませんでした。

ですがあなたはそうではありません。

聖女セレネとの接触がアルカ様を作り変えました」


「耐える?作り変えた?

神力の事じゃないわよね?

加護ってなんなの?

あなたは私に何をしたの?」



「いずれわかります。

力の使い方については

聖女セレネが導いてくれることでしょう。

それよりも、今は他に話すべき事があります」


「どうか心を強く持ち続けて下さい。

全ては認識する事です。

干渉があるのだと、

そう認識さえすれば抵抗も可能です」


「外なる神の干渉だけではありません。

異世界より呼び出された者には因果が付き纏います。

この世界にとって異物であると、世界が干渉します。

そうであると、まずは認識して下さい」



「そして、

どうか心安らかにいて下さい。

精神的な余裕があれば干渉はできません。

アルカ様が追い詰められる程に

事態は進んでいきます」



「私もあなた方の幸せを願っております。

どうか困難に負けないで下さい。

そして、どうか私の力を取り戻して下さい。

必ずあなた方のお力になると約束致します」



「そしてどうかお願いです。

聖女アムルをお許し下さい。

彼女もまた外なる神の被害者なのです。

あの子の心をお救い下さい」




その瞬間、

またも視界が光に包まれた。



女神ニクスは一方的に話して、

一方的に消えてしまった。



女神のいた場所には、

今は神官が立っていた。




「アムルは私達が初代と呼ぶ聖女の名前よ」


セレネがそう呟いた。

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