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14-25.欲望

私はノアちゃんを抱きしめたまま、

自室のベットに腰掛ける。



「ノアちゃん。どうして欲しい?

今なら何でも聞いちゃうわ」


「・・・嘘つき」


「え!?」


「本当に何でもなら!

今すぐ私だけを一番だと決めて下さい!」


「・・・ごめんなさい」


「嘘つき」



「出来もしない事を言うのは無責任よね。

でも、今の私に出来る事なら何でもしたいのは本当なの!」


「じゃあこうして抱きしめながら

アルカの気持ちを教えて下さい」


「わかった」



私はノアちゃんを抱きしめながら、

耳元で思いつく限りの事を囁き続ける。


好きよ。愛してる。

ノアちゃん達の事が一番よ。


ノアちゃんのお気に召さない言葉は背中を抓って伝えてくる。


ノアちゃん可愛い。

素直な所が好き。

努力家な所が好き。

優しい所が好き。

可愛いのに格好いい所も好き。

ノアちゃんの作るご飯も好き。

ノアちゃんのお腹大好き。


また抓られる。


ノアちゃんの綺麗な目が好き。

何時までも覗き込んでいたい。

猫耳可愛い。

長い尻尾も好き。

可愛いお尻も触りたくなっちゃう。


抓られる。


頼りになる所が好き。

ノアちゃんびっくりするくらい強くなった。

ノアちゃんが一緒なら負ける気がしない。

ノアちゃんならクレアにだって勝てるわ。


抓られる。


すぐに嫉妬しちゃう所も可愛い。

こうして悲しくなってしまうくらい

私の事が好きでいてくれて嬉しくてたまらない。

一生ノアちゃんの事を独り占めしていたい。

もうこのまま離さないでいたい。


ノアちゃんの事が、

初めて見た時からずっと大好き。



「・・・もう大丈夫です。

これすっごく恥ずかしいです。

もう耐えられないので終わりです」


「まだまだ言えるわよ。

一晩中だって足りないわ」


「もうお終いです。

・・・リヴィ達も心配です」


「本当に安心してくれた?」


「・・・はい。

疑ってごめんなさい。

私もアルカの事が大好きです。

愛しています」


私はノアちゃんの唇にキスをする。



「私はもう大丈夫ですから

セレネにもしてあげて下さい。

私の感情が伝わったせいで

セレネも不安定です」


「わかった。

ノアちゃんを送り届けたら行ってくるわ」


「お願いします」


私はノアちゃんをテントに送り届けて、

またセレネの所に転移する。



「ノアの差し金ね。

私は大丈夫よ。

ノアが眠るまで一緒にいてあげて」


「そんな事したら

今度はノアちゃんに怒られちゃうわ」


「・・・ノアに怒られるから慰めに来たの?」


「セレネに安心して欲しいから来たの。

これは間違いなく私自身の思いよ」


「そう・・・」


私はセレネの横に座って抱きしめる



「とっても濃いノアの匂いだわ。

ついさっきまでこうしていたのね」


「・・・複雑?」



「そうね。そんな感じかも。

自分でノアの事を頼んで、

アルカはそのお願いを叶えてくれただけ」


「それにノアの匂いも大好き」


「けれど、

他の女の子を慰めてから来たって考えると

酷いと思わない?」



「そうね。私はとっても酷い人間よ。

最低な事をしているってわかってる。

それでも二人の事を手放すつもりなんて無いの」



「アルカはとってもひどい人。

気を使うのは下手だし、

私達の気持ちなんて何にもわかってない」


「私達だけって言うくせに、

アリアにもレーネにもちょっかいかけてる」


「絶対に思い通りになってくれないし、

私の事を一番にしてくれない」


「けど大好きな人。

私にとっては一番の人」



「けれど、私は言ったはずよね?

私達以外の誰かに必要以上の優しさを向けて欲しくない。

誰かの気持ちをアルカに向けるような事をして欲しくないって」


「そう言った私に、

アルカは初めてのキスで応えてくれた。

酷いことを言う私にとっても素敵なものをくれたの」


「あの時の私がどれだけ嬉しかったと思う?

本当に言葉では表せない程に嬉しかったの。

もうこれ以上に嬉しい事なんて無いんじゃないかって思っていたの」


「それなのにこの仕打ちなの?

レーネの事を放っておけないのはわかってる。

でも、私は自分勝手なの」


「そんな事を私達に伝える前に、

アルカに何とかして欲しかったの。

アルカの家族は私達だけだって断って欲しかったの。

私にも良い方法は思いつかないけど、

自分勝手にそう思ってしまうの」


「アルカもとってもひどいけど、

私ももっと酷い人間なの。

きっと私達はお似合いなのね」







「セレネは酷くなんて無いわ。

そう思ってしまうのは当然なのよ」


私だって最初にセレネを受け入れる時ですら

似たような事を考えたくらいなのだから。



「私だってセレネを独り占めしてしまいたいの。

誰にも渡したくないし、

誰かがセレネを好きになる事すら我慢できないの。

セレネは私のだから手を出すな、

勝手に見るなって言いたいの」


「そんなの好きな人がいれば当然の事なの。

それだけ相手の事が大好きなんだから」



「それなのに私は何も考えずに話したの。

優しいセレネにあの話をしたら、

断わるなんてあり得ないよね。

私はそんな事も考えていなかったんだよね。

本当に酷いよね。

いつもセレネに我慢させてばかりだよね。

優しいセレネに頼ってばかりだよね」


「何時までもこんなんじゃダメだよね。

セレネにばかり負担をかけて、

セレネは潰されてしまうよね。

いつかセレネに逃げられちゃうよね。

セレネに嫌われちゃうよね。

けどそんな事認められないの。

絶対にセレネと別れるなんて出来ない」


「私はそんな優しいセレネに酷い事をし続けるの。

私は絶対にセレネを手放さないし、

私がどんな選択をしても、

セレネには好きでいてもらい続けるの」


「どんな手段を使ったってそれは叶えるの。

どれだけセレネを傷つけたって、

例えセレネが幸せになれなくたって、

私の思いは変わらないの」


「私に狙われるなんてセレネが可哀想だと思う。

けど、諦めてね?

いえ、諦めなくても良いけど無駄よ?

何があったって私から逃げる事なんて出来ないんだから。

やっぱり百年程度じゃ足りないわね。

不老不死も真剣に考えるわ。

数百年だって、数千年だって、

セレネは私に囚われ続けるの」


「ああ。なんだかそう考えるととっても素晴らしい気分。

あなた達が不老不死を望んだ時は

愛が重いなんて考えてしまったけど、

そんなものでは全然足りないわね。

どうしたら二人を私に縛り続けられるのかしら。

絶対に二人を失わない方法が欲しい。

何をしてでも叶えたい」



「・・・アルカ?

突然どうしちゃったの?

少し怖いわ。

私はどこにも行ったりしないから少し落ち着いて?」



「大丈夫。

何も心配はいらないわ。

私に任せておけば大丈夫。

私なら何だって出来るんだから。

でももっともっと力が欲しい。

セレネ達を絶対に失わない力が欲しいわ」






----------------------





「アルカ!?アルカ!!

落ち着いて!何を言っているの!?」


アルカが話始めてから少しずつおかしくなっていった。

今はもう全く私を見ていない。

恍惚とした表情で何事かを呟き続けている。


なにこれ一体何なの!?

アルカに何が!


私は明らかにおかしくなってしまったアルカを、

アルカ達が覚視と呼ぶ力で覗き込む。



魔王と同じ力!?


何で!?突然何が!?


まさか邪神が干渉しているの!?


何でこんな事に!

どうすれば良いの!?

このままじゃアルカが魔王になっちゃうの!?



そんなの絶対に嫌!


何が邪神よ!

私からアルカを奪わせたりなんてしない!



私は無我夢中で神力を

聖女の浄化の力に変えて

アルカにぶつける。



戻ってきて!

いつものアルカを返して!!!






----------------------







「・・・・セレネ?」



「アルカ!大丈夫!?

突然どうしたの!?

何で邪神なんかの干渉を許してしまったの!?」



「邪神?・・・何の話?」


「憶えていないの?

アルカが話始めてから段々おかしくなったの!

魔王と同じ力に干渉されていたのよ!」


「え?

なんともないけど・・・」


「本当に!?

本当にもうなんとも無いのね!!

・・・・・良かったぁ!

アルカぁ!!怖かったよぉ!」



私はわけもわからないまま、

泣きじゃくるセレネを抱きしめる。



さっきまでセレネを慰めようと、

必死に言葉を考えていたのは憶えている。


けど、今は頭がモヤモヤする。


なんだろう。

セレネは邪神の干渉を受けていたと言う。


なんで?

私は別に女神以外に恨みなんて抱いていない。


女神にしたって、

眼の前に現れたら一発いれれば済む程度だ。

どうしても許せないという程じゃない。



あの時考えていたのは何?

セレネを傷つけてしまったという後悔?

セレネを元気づけたいという想い?

セレネを失ってしまうという恐怖?

セレネ達を絶対に手放さないという決意?

セレネ達を私だけのものにしたい独占欲?



私の強い欲望に反応したの?

魔王といい、異世界人は邪神の影響を受けやすいの?


というか、邪神から力を与えられるのって、

もっとこちらに選択を委ねるようなものだと思っていた。


少なくとも私は何かを聞かれてはいないし、

選択した記憶もない。はずだ。


そんな勝手に押し付けてくるような物なの?


いくらなんでも悪質過ぎるじゃない!


あの優しい魔王がどうして邪神から

力を貰ってしまったのかと思っていたら、

そんなカラクリだったの!?



なによそれ・・・・

どうしろって言うのよ・・・



私は泣き止まないセレネを抱きしめながら困惑し続けていた。


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