14-19.親子
私はセレネの寝室に転移した。
「私がイタズラしたのよ。
ノアちゃんには悪いことをしたわ」
ノアちゃんに頼まれた通り、
リヴィの事を伝えず、
ノアちゃんが驚いた原因を伝える。
「どうやってあそこまで驚かせたの?
ノアの隙を突くなんて相当難しいはずよ?」
セレネの言う通り、
今のノアちゃんには隙が無い。
少なくとも私にも見つけられない。
ルネルなら簡単にできそうだけど。
ともかく、ノアちゃんの覚視も、
単純な気配察知もそれ程に高レベルだ。
その上、常時私の事を覚視で視ている節すらある。
私自身がノアちゃんの隙を突くことなど、まず不可能だろう。
今回はリヴィの姿が変わっても、
気配が変わっていなかった。
気配に敏感なノアちゃんからしたら、
単にリヴィが近づいてきただけだと思ったのだ。
そうして、振り向いた所で、
リヴィの姿が違った為にあの驚き様だったのだ。
「私も驚いちゃった。
まさかあそこまで驚くなんて思わなかったもの。
お陰で思いっきり怒られてしまったわ」
「そうね。凄い怒ってたわね」
セレネのお墨付きだ。
それだけ心底キレていたのだろう。
「それで?まだどうやったのか教えてくれてないわ」
迫るセレネ。
「そう言えばセレネは晩御飯食べたの?
今、ノアちゃんが作ってくれてるから、
時間があるのなら一緒にどう?」
「行くけど。その前に」
セレネはそのまま私の唇を奪う。
いつの間にか頭もガッツリ抑えて逃さない構えだ。
セレネの次の行動に驚いて、
私は転移で逃げてしまう。
「ダメよ!舌入れるのは無し!」
「ノアには刺激が強いから気を使ったのに」
「そう言う問題じゃないでしょ!
グリアにも話が出来たからセレネも来なさい」
「ごめんなさい!悪ふざけが過ぎました!
お願いだからグリアさんには言わないで!」
「セレネの読む本に制限を付けてもらうだけよ。
こんな事言ったりしないわ」
「アルカ!
お願い!それだけは!
何でもするから!」
「もう。程々にしなさい」
「は~い」
「ノアちゃんも待ってるわ。
早く行きましょう」
「うん!」
私はセレネとテントに転移する。
「私の子です」
ノアちゃんはリヴィを抱えてセレネを迎える。
「リヴィよね?」
セレネは大して驚かなかった。
「アルカ?」
「私は何も言ってないわ!」
「流石にわかるわよ」
「残念です。
もっと驚くと思ってたのに」
「ノアこそ何であんなに驚いたの?」
「・・・ご飯にしましょう」
「まあ、良いわ。
何となくわかったし」
「エレネ!」
惜しい!
ノアちゃんに言い含められていたのか、
今まで大人しく待っていたリヴィがセレネに抱きつく。
「リヴィ喋れるのね!」
リヴィを抱えてクルクル回るセレネ。
「アウア!」
「ママ!」
自分だけママと呼ばれて嬉しそうなノアちゃん。
ノアちゃんはリヴィを膝に乗せて食事を始める。
人間の体に不慣れなリヴィにスプーンの持ち方を教え始めた。
どうしよう。
リヴィはいつ元の姿に戻すべきなのかしら。
ノアちゃんは我が子として可愛がっている。
そんな二人の姿は微笑ましい。
とりあえず本人達から言われるまではこのままで良いか。