14-16.理由
私とノアちゃんとリヴィは
レーネと一緒に沈没船の探索を続けていた。
『レーネはどうしてその沈没船を探そうと思ったの?』
『良くぞ聞いてくれました!
聞いてくれて嬉しいです!
それはですね!
そのためにはですね!
まずはお話を聞かせて進ぜましょう!』
何時にも増してハイテンションだ。
そういえば、誰も聞いていなかったのだろうか。
セレネとか興味持ちそうなのに。
レーネの語りだした沈没船にまつわるおとぎ話は、
なんというかよくある恋物語だった。
ある時、豪華な船がこの辺りを通りがかった。
その船に乗っていた船乗りの青年と、
その船に興味を持ってしまった、人魚の姫が主役だ。
その当時は、人間が人魚を狙う事も珍しくなく、
今のように人魚達も人間に好意的ではいられなかった。
当然、人間の船に近づく人魚などいなかったのだ。
けれど、箱入り娘として過保護に育てられ、
世間知らずだった人魚の姫だけは、
どれだけ周りからダメだと言い含められていても、
人間の船に興味を持ってしまう。
そうして、不用心にも人間の船に近づいた姫は、
とある青年と出会い、言葉を交わす。
青年に一目惚れした姫は国の宝である宝玉を持ち出し、
宝玉の力で人化して、船の乗客に紛れ込む。
そうして青年と親睦を深めていった。
しかしある時、姫の正体が乗客の一人にバレてしまう。
人魚が見つかればタダでは済まないとわかっている青年は、
必死に姫を追い払い、海に帰す。
けれど、どうしても青年を諦めきれない姫は、
そのまま船を追い続けてしまう。
そうして遂には、
姫を連れ戻しにきた人魚の兵達と、
姫を捕らえようとする人間達の間で争いが始まる。
軍用の船でも無かった客船は、
人魚兵の精鋭達には敵うはずもない。
元々人間達に恨みを抱く人魚達は、
争いを止めようとする姫の必死の訴えにも耳を貸すことは無かった。
そうして結局、船は沈んでしまう。
なんとか兵士を振り切った姫は、
青年を追いかけて船と共に深い深い海溝に潜っていく。
その後、姫が戻って来る事は無かった。
兵士達も探し続けるが、
深い海溝の奥底には屈強な人魚兵達ですら辿り着く事が出来なかった。
姫を失い、国中が嘆き悲しんだ。
そうして、二度と同じことが起こらないようにと
この話を語り継ぐ事にしたそうだ。
え?
終わり?
バットエンド!?
何でそんなおとぎ話が好きなの!?
というか、船あったとしても辿り着けないじゃん!
この話本当に実話?
姫と青年の行動は誰がいつ聞いたの?
というか、そんな話を娘に語り聞かせておいて、
王様も甘やかすことを止めないし、
今代の姫もその話を聞いて探しに出てるくらいだし、
語り継いでる意味なくね?
実際、レーネは私達が助けなければ餓死する所だった。
逆効果じゃん!
人魚の性質なのかもしれないけど、
よくこんなお気楽種族が生き延びてきたものだ。
ツッコミどころが多すぎる・・・
『宝玉!素晴らしいですよね!
人化ですって!人間さんになれるんですよ!
欲しいですよね!欲しいです!』
・・・物欲かい!
そこで恋物語に憧れてとかじゃなくて、
興味あるのはそっちなの!?
『レーネは人間になって何がしたいの?』
『前は地上を歩いてみたいと思ってました!
いっぱい冒険してみたいです!冒険良いですよね!』
『けど、今は美味しいものをいっぱい食べてみたいです!
アルカ様に頂いたの美味しかったです!
また食べたいです!ホタテ食べたいんです!』
今度は食欲かぁ
まだ花より団子なお年頃なのね。
ちなみに、ホタテは海にいるのよ。
言えないけど。
というか、あなたの家でも出てるんじゃない?
調理法が違いすぎて気付いていないだけだと思う。
レーネって鈍そうだし。
『海溝にはどうやって潜るつもりなの?
当時の兵士達でも立ち入れなかったのでしょう?』
『・・・どうしましょう?
どうしたら良いんでしょうか?』
のーぷらん
私の魔法でいけそうな気もするけど、
これって人魚にもかけて良いのかしら。
元々水中の種族にかけたら変な副作用でないかしら。
私は水圧だけ軽減出来るようにイメージして、
レーネにも魔法をかけてみる。
『なんですか!これなんですか!』
『それで海溝にも潜れるかもしれないわ。
見つけたら少しずつ試してみましょう』
『アルカ様凄いです!凄すぎです!
ありがとうございます!これで夢が叶います!』
まだ肝心な物が見つかってないけどね。
もしかして私の魔法で人化とか出来ないかしら。
流石にいきなりお姫様で試すのは怖いから、
今度リヴィで実験してみよう。