14-14.中途半端
私達はベットで横になる。
今度は私が中心だ。
「今日から寝る前のキスは唇にしてくれなきゃ嫌よ?」
セレネはもう調子を取り戻したようだ。
あえて元気に振る舞っているのもあるのだろうけれど。
「次は十五歳になってからと思っていたのだけど・・・」
「ノアにはもう何度もしているじゃない!」
「え!?セレネが何で・・・はっ!」
「別にカマかけたわけじゃないわ。
ノアがキスする度にすっごい感情が伝わってくるんだから」
「セレネ!!約束!」
「そうね。ごめんなさい。
ともかく、今すぐして!
ノアにしたように慰めるためでも良いから!」
私はセレネの唇にキスをする。
「うふふ・・・」
「私もして下さい」
セレネの感情が伝わったのか、
ノアちゃんもおねだりしてくる。
私はノアちゃんの唇にもキスをする。
我ながら本当に中途半端だ。
さっきあんな風に後悔したのに、
結局また流されている。
一度してしまえばこうなる事はわかっていたのに。
本当に情けない。
けれど、そんな気持ちですることではない。
もう開き直ろう。
どれだけ自分が不甲斐なくても、
二人を泣かせる事だけはしたくない。
私の行動原理なんてそれで良いんだ。
そう開き直ってしまおう。
不老魔術まで使っておいて、
今更将来も何もないんだから。
本当に行き当たりばったりの中途半端。
けれど、これが私なのだから。
こんな私の事でも好きでいてくれるのだから。
絶対にもう二人の事を泣かせたりなんてしない。
それだけは守り抜こう。
「ノア!私ともしましょう!」
「・・・まだダメです」
「なんで!?
好感度は十分なはずよ!」
好感度て・・・
ノアちゃんの感情がわかるから、
好意が十分な事はわかるけど、
流石に拒否される理由まではわからないのね。
「・・・ちゃんとしたいですから。
そんなついでみたいなのは嫌です。
それに今日はアルカとしたんですから、
いきなり全部済ませてしまうのは勿体ないです」
「ノア!」
感極まったセレネが、
私の上を飛び越えて、
ノアちゃんに覆いかぶさる。
「ダメよ!
そんな事を言われてしまったら
尚更我慢出来ないわ!
ノアも私の事好きすぎよ!」
「嫌です!
今日はしません!」
無理やりキスを迫るセレネと、
セレネの顔を押し返すノアちゃん。
「そんな事言いながら満更でもないじゃない!
ノアの気持ちは伝わってくるのよ!」
「それでもです!
拒否する気持ちだって伝わっているはずです!」
「こんな弱々しいのないのも一緒よ!」
「わかってるなら無理やりしないでください!
私だって本当は!」
「セレネストップ」
私はセレネを抱き寄せて、
代わりにキスをする。
「無理矢理はダメよ。
それに折角なら、
一緒に最高のシチュエーションを考えましょう」
「協力してくれるの?」
「もちろん!」
「妬いてしまわない?」
「当然嫉妬するわよ。
きっと、二人が初めてした直後に、
私も二人にキスしてしまうわ」
「「それは嫌」」
「なんで!?」
「余韻くらいは必要だと思うの」
「アルカって初めてキスした時も平気そうでしたよね。
いろいろ鈍いのでしょうか」
「私にした直後にノアにもしてたものね。
ちょっと悲しいわ」
「まあ、私達のどちらかにだけして
終わりってわけにもいかないですしね・・・」
「パスが無ければやりようもあったのだけどね」
「結果的にはアルカの鈍さのお陰なのでしょうか」
「・・・なんか改めてそう考えると怒りも湧いてくるわ。
やっぱり決着付けたいわね」
「アルカの初めては・・・」
「仕方がないから次はノアに譲るわ」
「次?」
「なんでもない。
まだ初めては残っているから安心して」
「どうしてセレネが勝手に決めているのかしら・・・」
「私を一番と決めてくれるのなら、
アルカの好きにしていいわ」
「ダメです!アルカの一番は私です!」
「さっきまでキスしようと迫ってたのに喧嘩しないで」
「アルカのせいよ!」
「アルカのせいです!」
「そもそも!
この際だからハッキリ言っておくけど!
私は二人の事をどちらか選ぶつもりなんてないわ!
絶対に二人ともが一番って納得させてみせるんだから!」
「「無理です!」」
「勝負よ!
二人の気持ちにだって負けないんだから!」
「いいでしょう!
アルカは私達を納得させれば勝ち。
私達はそれぞれどちらかを選ばせれば勝ちですね!」
「アルカ!
勝負なんて言い出したらノアが乗るに決まってるじゃない!
それはズルいわ!
ノアも!そんな選択肢を増やさなくていいの!
私達はどちらかが選ばれるって決めたでしょう!」
「二人の気持ちも嬉しいけど、
こればかりは負けるつもりなんて無いわ!
私の二人を想う気持ちの方が強いって証明してみせる!」
私達が各自の主張をぶつけ合っている内にまた夜が過ぎていく。
それでも、昨晩も寝ていないのに、
何時までもは続かなかった。
セレネが寝落ちしたのをきっかけに、
ノアちゃん、私と続く。
キスして喧嘩して叱られて仲直りして、
また喧嘩して。
そんな長くて目まぐるしい一日がようやく終わった。