14-11.冒険
数時間後、目覚めた私達はそのまま少し話をする。
『ありがとう。
とっても気持ちよく眠れたわ』
『良かったです!
ここ良いですよね!ですよね!』
『そうですね。
また来たいくらいです』
『いつでもどうぞ!
歓迎します!
お待ちしてます!』
『でも良いのですか?
家出したいのでは無かったのですか?』
『どうしてそれを!?
秘密ですよ!?!秘密にしてたのに!?』
『失礼、冒険したいのでは無かったのですか?』
『そうです!冒険です!
冒険したかったのです!』
その後、家出の理由を話はじめたレーネ。
要約すると、単純に過保護にされすぎて窮屈だったようだ。
別に親が嫌いとか誰かに酷いことをされたと思っているわけでもなく、
一人で外に出てみたかっただけのようだ。
冒険というのもあながち嘘ではないらしい。
というのも、一応の目的地があったそうだ。
とはいえ、
本人も実質、家出でしか無いことはわかっているようだった。
兵士達にも付いて来て欲しくなくて、
黙って一人で出てきてしまったのだから。
『どこか行きたい所があるのなら私達がついていきましょうか?
いっぱい歓迎してもらえたお礼もしたいですし』
ノアちゃん!?
そんな事勝手に決めて大丈夫?
後でセレネに何か言われない?
セレネもノアちゃんも
私には深入りする事を止めるように言うくせに、
自分達も大概お人好しだ。
私だけならレーネを介抱した後は放置して立ち去っただろうに。
いや、町に送り届けるくらいはしたかもしれないけど。
結局二人の行動でどんどん深入りしている気がする。
理不尽とまでは言わないけど・・・
なんだかなぁ・・・
『良いのですか!お願いします!
行きたい所あります!あるんです!』
『構わないけど、
ちゃんとご両親に許可をもらうのよ?』
『大丈夫です!きっと問題ありません!』
早速飛び出したレーネを追いかけて、
私達も人魚の国に戻る。
レーネの言う通り、
あっさり国王夫妻は許可をくれた。
私達が一緒なら安心だと言う。
いくらなんでも寛容すぎない?
この辺りには天敵の類がいないのだろうか。
そんなわけないか。
兵隊がいる以上、敵はいるのだろう。
単に娘に甘すぎるだけなのかしら。
私達の強さもある程度見抜いているのかもしれない。
まあ、良いというなら少しの間預かるとしよう。
ノアちゃんも望んでいるし。
セレネも私の事で何か言ったとしても、
レーネを助ける事自体は賛成するだろう。
レーネの目的は沈没船なのだと言う。
人魚に伝わるおとぎ話に登場するそうだ。
本当に存在するの?
あったとしても、見つかるまでに何年もかかったりしない?
試しに王様にも聞いてみたが、場所は知らないと言う。
ただ、話が残っている以上は存在するんじゃないか的な事を言っていた。
おとぎ話というより伝承なの?
もしかしたら何かしらの痕跡はあるのかもしれない。
まあ、私がいれば転移出来るのだし、
私達も夜は地上に帰りたいから毎晩送り帰す事にしよう。
そんな話をしたら王様も喜んでくれた。
レーネは不満そうにしていた。
流石に一緒に地上に行けるわけでも無いだろうし仕方がない。
そうして、私達はレーネを連れて、
人魚の国を旅立った。
私達のペースでゆっくり泳ぎながら深海を探索していく。
『何か手がかりはありませんか?』
『たぶんこの近くには無いと思います。
お魚さんに聞いてもわからないようですから。
面目ないです・・・』
この子、テンションが下がると普通の話し方になるのね。
『お話の中にはどうですか?』
『深い海溝に沈んでいったとありました。
けれど、先日探した限りでは、
この辺りにその様な場所は無いのです・・・』
『では、もっと遠くに行きましょうか。
アルカ。お願いします』
レーネの速度に合わせて泳ぐのだろう。
私はノアちゃんを抱え、ノアちゃんはリヴィを抱える。
準備が出来た私が合図を送ると、
レーネは全速力で泳ぎだした。