14-10.想い
明け方、ようやく開放された私は、
セレネを教会に送り届ける。
セレネの部屋で二人きりで少し話をする。
「ありがとうアルカ。
最後はともかく、今日はとても楽しかった。
また近い内に行けるようにするから宜しくね」
「わかったわ。
いつも通りノアちゃんに合図してくれれば迎えにくるから」
「くれぐれもレーネにまで手を出さないようにね。
私はノア以外認める気は無いわ」
「信じて!セレネとノアちゃん以外に
そんな気持ちになったことなんて無いわ!」
「それはもちろん信じているのだけど、
それはそれなのよ」
「どれだけアルカの気持ちを信じていても、
どれだけアルカにその気が無くても、
アルカにそういう気持ちを向ける人がいると思うだけでも我慢できないの」
「これが私達の我儘だって事もわかっているわ。
けれど、それでも優しいアルカに酷いことを言うけど、
私達以外の誰かに必要以上に優しさを向けて欲しくないの。
誰かの気持ちをアルカに向けるような事をして欲しくないの。
私達が独り占めしたいの。
勝手な事ばかり言ってごめんね」
想いが重い・・・
けれどそんな風に思ってくれるのは嬉しい。
私も二人が誰かに気持ちを向ける事も、
誰かが二人に特別な気持ちを向ける事も認められないだろう。
セレネの言葉を自分に当てはめるとしっくり来る。
確かにこれは嫌だ。
私も重いかもしれない。
私はセレネを抱きしめてキスをする。
真っ赤になったセレネを残して、
ノアちゃんの待っているテントに転移した。
テントに戻ると、
ノアちゃんが私に詰め寄ってくる。
「アルカ!セレネに何を!」
私はノアちゃんも抱きしめてキスをする。
「アルカ・・・こっちはまだって・・・」
「二人にも私の気持ちをわかって欲しくて。
次は十五歳になってからね」
「・・・むり」
それから昼過ぎまでテントで過ごした。
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『遅い!遅いです!』
『ごめんごめん。
ちょっと寝れなくて』
『まだ眠いです』
『大丈夫です?
明日にしますか?またでも良いですよ?
お疲れですよね?疲れてますね?』
今日は人魚の国を案内してくれるつもりだったようだ。
けれど、一番楽しみにしていたセレネがいないので今度でも良いだろう。
『そうですね!そうしましょう!
セレネさんにも紹介したいです!です!』
『じゃあ、今日は解散って事で』
『待って!待って下さい!
折角来て頂けたのです!
お気に入りのお昼寝スポットにご案内します!
きっと気持ちよく眠れます!眠れると思います!』
水の中で眠るのはなぁ・・・
魔法解けたりはしないだろうけど、
流石に抵抗があるのよね・・・
『折角ですし行ってみませんか?
試してみてダメそうなら帰りましょう』
「今二人になると眠れなそうですし」
ノアちゃんは最後の部分は私にだけ聞こえるように付け足す。
仕方ない・・・
ノアちゃんも一緒ならセレネ判定も問題ないだろう。
流石に誰とも関わるなとまで言っているわけでは無いのだし。
『じゃあ、お願い』
『かしこまりました!承知です!』
レーネに先導されて暫く歩き、国の外に出る。
そうしてアーチ状になった岩の下に案内された。
なんだか地面が柔らかい?
なんだろうこれ。
でも確かに快適かもしれない。
日差しの加減も丁度良い。
暗すぎず、明るすぎず。
岩の隙間から光が射している。
レーネに習って試しに横になってみる。
ノアちゃんも私の腕を抱いて横になる。
リヴィは私を挟んでノアちゃんの反対側に来ようとしたのを
ノアちゃんに引き戻されて、ノアちゃんの隣に横になる。
あっという間に四人とも眠りに落ちた。