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14-3.海

「・・・」



ノアちゃんは砂浜から海を眺めて放心している。


良かった。恐怖は無いようだ。

湖とか川とかは問題ないから大丈夫だとは思ってたけど、

お風呂嫌いだから少し心配していた。

猫的な本能で怖がるようなら引き返そうと思っていたのだ。

まあ、最近はお風呂も普通に入るけど。



ノアちゃんは海の存在自体は知っていたけど、

実際に見るのは初めてのはずだ。


地平線まで続くこの光景はきっと驚いてくれると思っていた。


今日は良く晴れているし、

昼間の内に辿り着けたから海も空も青一色だ。


この綺麗な光景は私も見れて良かったと思う。

何時でも来れたけど、今まで見に来ようとは思わなかったのに。



リヴィは早速浅瀬で遊んでいる。

楽しんでもらえて何よりだ。




私は少し離れた所に今日の拠点を設置していく。

今晩はセレネも来る。


本当は明日ここに到着して、

セレネも一緒に驚いてもらおうと思っていたけど、

ここまでの日程が順調すぎた上に、

ついつい調子に乗って駆け抜けてきてしまった。


とはいえ、もうすぐ夕方だ。

休む準備を進めておこう。


まあ、収納空間からいつものテントを取り出す位しかないのだけど。


もう面倒になって、家具とかはそのまま入れてある。

収納魔法の安全装置のお陰で、

大雑把に放り出してもふわりと地面に着地する。



せっかくなら晩御飯も作ってしまおう。

ノアちゃんはまだ機能停止している事だし。


なにか海の幸でも取れるかしら。

明日の楽しみに取っておくのも良いかな?



結局、ノアちゃんは日が沈んで夜になっても、

海を眺め続けていた。



突然我に返ったノアちゃんの合図でセレネに転移門を繋ぐ。

きっと、セレネからの呼びかけで目覚めたのだろう。



「綺麗・・・」


セレネは夜空と海を眺めてそう呟く。


月明かりに照らされた海も確かに良いものだ。


周囲には町も船も無い。

ただ視界いっぱいに海と星空だけが映っている。


この世界の星空はとっても綺麗だ。

日本に居た時は私の住んでいた場所では見れなかった光景だ。



特に今日は雲一つ無い。

お陰で夜の闇の中でも不安に思う事も無い。



セレネもノアちゃんの隣で景色を眺める。


私はそんな二人を後ろから眺め続けていた。







それから更に時間が経過してから、

私は二人に声をかける。


今は夏とは言え、流石に風邪でも引いてしまうだろう。



遅くなった晩御飯を食べながら明日の計画を話していく。



「明日も一日ここにいようと思うのだけど、

セレネもそれで良い?

希望があれば先に町に行っても良いのだけど」


「それは悩むわね。

なんとか明後日も休んでしまおうかしら。

来週までなんてとても待てる気がしないわ」


「無理しないでも何時でも連れて行ってあげるからね。

明日も途中で切り上げて町に遊びに行っても良いのだし」


「セレネが望むようにして良いですよ。

私は物足りなければアルカに頼んでまた戻ってきますから」


「うぐぐ・・・

明日までに考えておくわ」


「とりあえず、起きたら海で遊びましょう。

二人の水着は用意してあるわ」


「「水着?」」


「海で泳ぐための服よ。

海では他にも遊ぶ人がいる可能性があるから、

裸じゃ恥ずかしいでしょ?」


「そんなのいつ用意したんですか?」


「ノアちゃんがお昼ご飯を作ってくれている時にちょっとね」


「セレネのところか家にでも帰っているのかと思ってました」


「それもあるわよ。

あと別荘の管理とかもしてるし」


「転移って便利よね。

どうにかして私も使えないかしら。

魔王も空間魔法を使っていたのだからできそうな気がするのだけど」


「神力の事はなんとも言えないわね。

グリアならわかるのでしょう?

あの神力で収納空間に繋ぐ手袋を作ってくれたくらいだし」


「グリアさんもいろいろ試してくれているわ。

けどまだ上手く行ってないの。

魔力なら成功してるのだけど」


「グリアも転移使えるのね・・・」


「アルカ程自在には使えないの。

今度また相談に乗ってあげてね?」


「喜んで。

グリアにも恩返ししたいもの」


「セレネが使えるようになれば、

私も使えるのでしょうか?」


「ノアちゃんは神力の量が問題かもしれないわね」


「アルカの杖みたいに貯めておければ良いのですが」


「できるよ?」


「「え!?」」


「神力って魔力と違って、

元々固めやすいものだから、ノアも自力でできるはずよ」


「そっか。纏ったり結界にしたりしてるものね。

でもその状態を維持し続けるの?

それであとから回収できるの?」


「えっと、その前の段階?で維持できるの。

私がやるからノアも良く見てて」


そう言ってセレネは神力を放出して固定する。


セレネの差し出したそれは結界等と違って触れることが出来ない。

物質化する前の段階なのだろう。


私も闇魔法の応用で同じこと出来ないかしら。

そう思って、闇の槍を作る工程を途中で止めてみる。

残念ながら、中途半端に放出された魔力はすぐに霧散してしまった。


これは練習次第でどうにかなるのかしら。

神力とは性質が違うから無理な可能性も高そう。

でも闇魔法を物質化する事は出来たのだから、

似たようなものは出来る気もするのだけど。

一応、ダメ元で試しておこう。


これが出来るようになったら杖で魔力を集める時にも役立つはずだ。

普段から自分の周囲に魔力を貯めておいて、

何かあったらそこから使えば良い。


そうすればあのスライムもどきだって、

始めから吹き飛ばせたかもしれない。

まあ、そんな事したら隣の町まで崩落していただろうけど。



ともかく、最近伸び悩んでいたから良い宿題が出来た。




ノアちゃんは苦戦しているようだ。

上手く中間を維持できずに霧散するか物質化するかを繰り返している。


元々、神力の扱い自体もセレネの方が上手い。

これは少し苦労するかもしれない。


ノアちゃんは覚視の扱いと体の使い方が私達よりずっと上手い。

セレネのやっている事を視た以上、きっと出来るようになるだろう。

ノアちゃんもとっても努力家だもの。



「なんでセレネは普段から維持していないの?」



「大変だし、危険だからよ。

これ慣れるまでは維持するのに結構神経使うし、

貯めてたものをついうっかりで放出しちゃうと教会が吹き飛んでしまうわ」


「それに私は元々使い切れない程の神力を持っているの。

今はこれを引き出す訓練の方を優先しているわ」



なるほど。

そんなリスクを冒す必要自体が無いのか。


女神は力を失っているとはいえ、

今のセレネには大きすぎる程の力をくれたらしい。

きっと魔王を倒すには必要だったのだろう。


考えてみればそれなりに大きな町一つを守り切る程の力だ。

普段私達との模擬戦で使っているものなど微々たるものなのだろう。

そして、セレネはそれをより多く引き出せるよう、訓練しているようだ。


数年前の事とは言え、防衛戦の時は相当無理をしているようだった。

平時からあれくらいの全力を無理なく出せるようになりたいのだろう。


セレネもまだまだ強くなっていく。


私も負けないようにしなくちゃ。

ずっと一緒に生きていくなら、

互いに守れるような関係でいたい。


そうでなくとも、

二人とも可愛い可愛い愛娘だものね。

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