13-24.顛末
「本当にグリアの読み通りになったわね」
「当然だとも。
想定しうるパターンの中から、
いくつか可能性が高いものを君に叩き込んだのだ。
あれだけ苦労して失敗などしてたまるか」
お手数おかけしました・・・
グリアも本当に何度も練習に付き合わされたものね。
よく自分がやると言い出さずにいてくれたものだ。
「当然だろう。
君でなければならないパターンは多いのだ。
今回のように君個人を目的としている相手など特にね」
「まさかそんな人が来るとは思わなかったわ。
もっと傲慢な偉そうな人でも来るのかと思っていたのに」
「そんなわけなかろう。
そんなタイプがノコノコこんな所まで来るわけがない」
「まあ、そうなんだけど」
「まあ、君も良くやったとも。
及第点とは言い難いがな」
「厳しくないかしら・・・」
「相手の手札を出しきらせる前に君から唆してどうする。
向こうも無茶な要求である事はわかっているのだ。
もっと引き出せるものはあったはずなのだ。
それを君は~」
グリア先生のお説教が始まった。
不出来な生徒ですみません・・・
でも、コミュ障なりには頑張ったと思うの。
誰か褒めてくれないかしら。
後でセレネに慰めてもらおう。
セレネの胸に顔を埋めると得も言われぬ幸福感が・・・
これがバブミ!?
やっぱり不老魔法を解いて成長してもらおうかしら。
ママもう少しお胸があっても良いと思うの。
「聞いているのかね!」
はい!すみません!
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それから暫くして、
ギルドから幹部を含む数人がやってきた。
今度こそ国として扱うつもりのようだ。
ユーリスさんも頑張ってくれたのだろう。
私はグリアと一緒に彼らとの話し合いを続けていく。
最終的にギルドにこの地を譲渡する事が決まった。
その際、グリアは見事な話術で次々に条件を飲ませていった。
これらがやぶられた時には
冒険者アルカが何をするかわからないという
脅しまできっちりかけた。
一先ず人々の生活は問題ないはずだ。
それに伴い、
この国は役目を終えた。
私の国王としての任期も
約一年半という短さで幕を閉じた。
これで履歴書に国王経験有りってかけるのかしら。
国王としての仕事なんて何一つやってないけど。
また一月程かけて引き継ぎを行っていく。
国の引き継ぎにはどう考えても短すぎるが、
必要なものは全て準備してある。
そもそも国としての形は解体するのだ。
あとはギルドの好きにしてもらおう。
人々の生活を脅かさない範囲で。
転移装置の移設も完了した。
あとはマーヤさんとダーナさんに任せられる。
必要ならギルドを通して私に話が来るようにもしてあるし。
また、いつかのようにお祭りを開いた。
お別れ会かしら?
送別会?
まあ、何にせよ、
誰一人暗い顔をする事も無く、
この国の終わりは祝福された。
国民達にも予めこの状況は説明されていたので混乱する事も無い。
むしろ、買い出し班や地上で生活していた者達を中心に、
外の世界と繋がる事を楽しみにしている者達もいるくらいだ。
それでも、
私や娘達、グリアやルスケア領一行が
この地を離れる事に涙してくれる者達もいた。
けれどそれは別れを惜しむ悲しみの涙だ。
未来への絶望や不安ではない。
グリアは教会に帰るようだ。
セレネ共々お世話になりっぱなしだ。
世界を巡る際には忘れずに書物を集める事にしよう。
他にも何か恩返しが出来ると良いのだけど。
どら焼き喜んでいたし、
これからもこまめに作って持って行く事にしよう。
ルスケア領一行は領地に帰っていった。
一部、この地に残る者達もいたが、
まあ、幸せにやってくれているようで何よりだ。
こっちは洗脳が解けたのかな?
ルスケア領主の態度は相変わらずだ。
権力を取り戻したらまた逆恨みしそうとか思ってごめん。
完全に釈放すると告げたら泣いて縋りつかれたので、
なにか困った事があったら協力を求めるから宜しくと伝えておいた。
なんか力を付けておくみたいな事を言われた気がするけど気にするまい。
私のために国家転覆とかしないわよね?
ギルド長ズにも感謝を伝えに行った。
次に寄った時はいっぱい依頼をこなすとしよう。
でもな~
今までは人助けだと思ってたのにな~
この依頼も殆どが金儲けのためだったんだよな~
まあ、もちろんそんなわけがないのだけど。
いくらギルド本部が真っ黒でも、
支部長達は実際に現場にいる人間だ。
周囲の町の為に頑張っている人達だ。
彼らとギルド本部の思惑は関係無い。
末端の人間の多くはまだ人々の為に戦っているのだ。
だから、あまり気にする必要は無いのだと思う。
少なくとも私の知るあの二人はそういう人達だ。
私はノアちゃんとリヴィと三人で旅立つ事にした。
セレネは週一で旅にも同行する事になった。
またも教会に専念しようとしたセレネを
ノアちゃんが引き止めた。
私は毎晩キスしに行っているけど、
ノアちゃんもセレネと会いたいものね。
リヴィも地下での生活で沢山の人と触れ合っていたから、
もう流石に不安もない。
町中に連れて行っても大丈夫だ。
うっかり冒険者に攻撃されても
今のリヴィに勝てる者などそうそういないだろう。
なんせノアちゃんママのシゴキを受けて、
未開拓地深部の魔物達にすら勝てるのだから。
「次はどこに行くのですか?」
先を歩くノアちゃんが振り返ってそう言った。
「とりあえず女神との接触方法か、
二人のパスを何とかする方法を探しましょうか」
「後は不老不死ですね!」
「そっちはもう良いでしょう?
少なくとも成長は止まったのよ?」
というか、
もしかしたら今かかっているのが、
既に不老不死の方かも知れないんだよな~
試すわけにもいかないし、どうしたものかしら。
それに、いつかはこれも解除したいくらいだ。
まだ出来る気がしていない。
なんでだろう?
かけられたのだから解くのは簡単だと思っていたのに。
「アルカといっぱい一緒にいたいですから!
それにリヴィの成長も見届けなければいけません!」
ノアちゃんは純粋だ。
私もノアちゃんの成長が見たいわ。
自分でかけといてあれだけど。
不老不死の末路について語っておくべきかしら。
いくつか漫画とかで見た憶えがある。
でもせめて解除方法がわかってからにしよう。
無駄に怖がらせるのも良くない。
「ついでに女神にでも聞いてみましょうね」
解除方法も聞けばわかるかしれない。
ノアちゃんは私の元に駆け寄ってきて、
私の手を握る。指を絡めて。
「どうしたの?
甘えたくなっちゃった?」
「セレネがよくこう握るので、
アルカともこうしてみようかと思いまして」
単純な好奇心なのだろうか。
ノアちゃんも良い加減、
いろいろ理解しているのだろうけど、
あまり表に出さないので変化が分かりづらい。
もう恋心は完全に根付いたのだろうか。
触れ合う意味は変わったのだろうか。
ノアちゃんも抑えきれない欲求を抱えているのだろうか。
結局、私は聞くことはせず、
セレネとも違う手のひらの感触を楽しみながら歩いていく。
久しぶりの旅だ。
ゆっくり歩いて楽しむとしよう。
こんな時間を何時までも続けていくために。
「12-22」の誤字報告を下さった方、ありがとうございました!
読んでくださって大変嬉しく思っております!