13-21.マイブーム
また暫くの月日が流れて、
近々計画も最終段階に移行する事になった。
我らの国プラナがギルドに譲渡される事になるのだ。
ちなみに、プラナという名前は元々の町の名前をそのまま付けた。
これまでの間いろいろな事があった。
ノアちゃんとセレネは十二歳になった。
後三年の辛抱だ。
本当に?
辛抱できてる?
大丈夫。
まだ唇は奪ってない。
未開拓地に別荘を作ってからも、
なんとか忙しい時間の隙間を縫って、
私は二人と一緒に度々子供らしい遊びを探していった。
とはいえ、以前作った別荘地では
ノアちゃんが滝壺の中で見つけたとある魔道具をきっかけに、
また妙な事件に巻き込まれてしまった。
グリアももう何も言わなかったが、
呆れ果てていたのだろう。
私は未開拓地内でも出歩いてはいけないようだ。
いや、流石にもう無いでしょ?
二度あることは三度ある?
なので、限られた範囲でしか遊べなかったが、
それでも二人はよく笑ってくれた。
最近のセレネはファッションショーがマイブームだ。
私の収納空間に死蔵された昔の服を使って、
自分やノアちゃんを着せ替えて遊んでいる。
私もよくこれだけの服を買っていたものだと驚いた。
見せる相手もいないのに。
殆ど寝巻きか冒険者服しか着ないのに。
多分ストレス発散の意味でもあったのだろう。
なんとなく当時の心境は思い出したくはないけど。
このくらいの歳の頃には資金も使い切れない程溜まっていたし、
大金を手にして調子に乗っていたのもあるのかもしれない。
金遣いの粗さで身元を特定される事が既に二回もあったのだから、
良い加減自重するべきだろう。
二人の教育にも良くないし。
というか、その二回とも相手が味方だったから、
わざわざ教えてくれただけで、
案外敵にも私の居場所は筒抜けなのかもしれない。
気をつけよう・・・
まあ、今はこうしてセレネが喜んでくれているのだから良しとしよう。
セレネ可愛い。
ノアちゃんはなんとも言えない表情をしている。
可愛い服で着飾ったノアちゃんが
もう勘弁してくださいって顔してるのも、
それはそれで可愛いものだ。
けれど、普段からノアちゃんの好きな遊びに
セレネも付き合っているので、
嫌とは言えないのだろう。
ノアちゃん可愛い。
そんなノアちゃんは相変わらず外で走り回るのが好きだ。
身体能力や戦闘技能の問題で、
鬼ごっことか、かくれんぼは難しい。
誰も本気のノアちゃんを見つける事も捕まえる事も出来ないからだ。
まあ、私には好きな人を強制的に手元に引き寄せるインチキ魔法があるのだけど。
流石にこれを使ってはゲームが成立しない。
ノアちゃん曰く、
一瞬思考を止めさせる機能もあるようで、
この魔法を使われる事がわかっていても逃げ出せないのだと言う。
なにそれ?
いくらなんでも危険すぎない?
多分事故防止のためなのかな?
走っている最中に引き寄せた相手が、
そのままの状態なら零距離正面衝突だ。
他にも慣性とか直前の動きとかも消えてるから、
より正確に言うなら、
相手を無力化した上で、抱き寄せる魔法
が正しいのかもしれない。
相変わらずの至れり尽くせりっぷりだ。
本当に私の無意識を読み取っているからなのだろうか。
誰か新魔法の監修してない?
女神とか見てないわよね?
実はイメージした魔法を使えるようになるって、
厳密には新しく生み出しているわけではない?
この世界に既に存在した魔法の中から
近いものが選ばれているだけとか?
でも飛行魔法の改修とかした時は、
かなり細かくいじれたんだけどな~
飛行魔法なら既にそれだけ複数種類が試されていても不思議ではないけど。
能力名も詳細もわからないから何一つ確信が持てない。
女神に会えたらついでに聞いておくとしよう。
なんだか忘れてしまいそうだけど。
ノアちゃんの好きな遊びの話に戻ると、
最近はセレネの生み出した結界の巨大迷路がブームだ。
二人でいかに相手を迷わせるか、
迷路を攻略して見せるかで競い合っている。
セレネが半透明の結界に覚視対策を施して隠蔽し、
迷路状に展開すると、ノアちゃんが中に入っていく。
流石のノアちゃんも隠蔽結界は近づかないと見抜けず、
迷路の奥までは知覚できないようだ。
ノアちゃんの覚視に対抗できるセレネも流石だ。
わざわざ迷路を目視できるようにしているのは私のためなのだろう。
私の覚視じゃセレネの隠蔽結界は知覚できないからね。
器用なことをするものだ。
この遊びは覚視と、
結界や隠蔽技術の鍛錬にもなっているのだろう。
暫くすると、ゴールで待ち構えていたセレネに、
飛び出してきたノアちゃんが抱きついた。
今回の迷路も満足したようだ。
ノアちゃんもとっても楽しそうだ。
その様子を見ていると、
我慢できずに私は二人を魔法で抱き寄せてしまう。
そうして三人でくっついて、
今度はいつの間にか迷路に侵入していたリヴィの様子を眺めてすごす。
リヴィはノアちゃんの何倍もの時間をかけて、
なんとか迷宮から抜け出してきた。
ノアちゃんに向かって飛んできたリヴィを抱きしめて、
またノアちゃんは笑い転げる。
リヴィはなかなか迷路から出られなくて心細くなっていたようだ。
そんなリヴィの様子が可愛かったのだろう。
最近益々楽しい。