13-20.仲良し母娘
次は母娘三人で仲良く料理をする。
一匹はまだ風呂に浮いている。
相変わらずマイペースだ。
今回はカレーを作る事にした。
準備しておいたミックススパイスの出番だ。
ノアちゃんが慣れた手つきで玉ねぎを炒めている間に、
私とセレネは具材を切っていく。
セレネの危なっかしい手つきにハラハラしながら、
私も隣で野菜を切りつつ、
たまにノアちゃんにもカレー作りの手順を説明していく。
ノアちゃんなら先に一度聞けば自分で出来るだろうけど、
せっかく一緒にやるのだからと回りくどい手段をとっているのだ。
こうして三人で作るのもとっても楽しい。
「何でアルカの故郷の料理は臭いの強い物ばかりなんですか?」
「別にそういうわけじゃないのよ。
それに厳密にはカレーもラーメンも元々は故郷の料理じゃないの」
「私の住んでいた日本って国の料理は再現が難しいのよ。
味のベースになる調味料がまだ見つけられて無くてね」
「それに、この世界と向こうとでそんなに大きく食の文化が違うわけじゃないから、
どうしても向こうにしか無いものを選ぶとインパクトのある物になっちゃうのよ」
「それで比較的再現が出来そうなカレーやラーメンを選んだの。
そもそも私もそこまで多くの料理を知っているわけでもないしね」
「そうなんですね。
逆にこっちにしか無いものもあるんですか?」
「それはちょっと答えるのが難しいわね。
さっきも言った通り、
私が知っているあの世界の料理ってほんの一部なのよ」
「向こうにはこの世界よりずっと多くの国があって、
それも海を隔ててたりするから、
各国ごとに料理も結構違うものがあってね。
私が知らないものでも、
もしかしたら向こうの世界にもあったのかもしれないわ」
「そうですか。
私もそっちの世界に行ってみたいです」
「そうね。
それが出来たら楽しそうだわ」
「ノア!切れたわ!見て頂戴!」
「・・・まあ、大丈夫でしょう」
「何か歯切れが悪いわね。
ノアみたいに綺麗に切れてないものね・・・」
「大丈夫。綺麗に切れているわセレネ。
お客様に出すのでは無いのだからこれで十分」
「そうね!この大きいのはアルカにあげる!」
「ごめんね。ちょっと大きいから切っちゃうね」
「ひどい!」
「アルカってたまにひどいですよね・・・」
「二人とも!?」
ノアちゃんがカレーを煮込んでいる間に、
私はナンの準備をする。
生地は予め仕込んでおいた物を収納空間に仕舞っておいた。
セレネと一緒に生地を切り出して広げていく。
そうしてカレーの出来上がりに合わせて焼いていく。
最後にノアちゃんがさっき川で取った魚を塩焼きにしてくれた。
少し量が多いけどまあ良いだろう。
リヴィも風呂から上がってきたところだし。
「「「いただきます」」」「キュキュイ」
ノアちゃんもセレネも見た目に怖気づく事なく口に運ぶ。
まあ、自分達で作って、
何が入っているのかはわかってるしね。
「「美味しい!」」「キュイ!」
全員お気に召してくれたようだ。
このペースだとナンが足りないかもしれない。
生地はまだあるから焼いておこうかしら。
多いかと思ったのにまさか足りないとは。
三人とも食べ盛りだものね。
私が追加で焼いていくナンも次々に三人の胃袋に消えていった。
リヴィと二人の食べる量が変わらないのってどうなのだろう。
リヴィって二人の半分くらいしかサイズがないのに。
まあ、仮にもドラゴンだから不思議でもない気もするのだけど。
でも食べる割には成長しないのよね・・・
午後は満腹で動けなくなった二人と一緒に
ゴロゴロしている内に眠ってしまった。
夕方頃に目覚めると、
二人は既に側にはいなかった。
外ではしゃいでいる声が聞こえる。
リヴィと一緒に追いかけっ子でもしているのだろう。
私は晩御飯の支度でもしておこうかしら。
でも皆お腹すいてるのかな?
お昼にあれだけ食べて昼寝までしてしまったのに入るのかしら。
正直私はあまりお腹が空いていない。
やっぱり私も混ざってこようかな。
体を動かせば少しはお腹も空くかもしれない。
そう思って、家の外に出る。
その瞬間、娘たちが飛びついてきた。
なんだか凄いハイテンションだ。
イタズラ成功って感じで笑い転げている。
楽しんでくれて良かった。
二人とも可愛い。
ついでにリヴィも。