13-16.開拓
私はグリアに昨日の話しで思ったことを伝えた。
「なるほど。
君は焦ってしまっているのだね。
ギルドに期待を裏切られたと、
私達に全てを押し付けてしまったと、
そう思ってしまったのだろう。
それで君はやる気が空回りしているのだ」
「私ももっと君と話しをしておくべきだった。
良かれと思って遠ざけてしまったのは間違いだった。
これからは気になったことは何でも聞きたまえ。
私の思っている事ももっと共有しよう」
「だから、まだ焦る必要はない。
ちゃんと君にもやるべきことを示そう。
君がどうしてもと望む事なら方法も一緒に考えよう」
「確かにギルドに任せるだけでは不安だという気持ちもわかる。
だからそれ意外の選択肢も用意したいのだろう。
それが外の世界との繋がりだと言うのもわかる」
「けれど、ギルドの実態も考えもわかった上で、
それでもギルドに任せられる様にと準備は進めている」
「引き渡せる情報の選択と隠滅。
この地で使われている技術や設備の見直し。
町の人々の特殊技能習得。
その為の二年だ。
君だけならともかく沢山の人が絡んでいるのだ。
そう簡単にはいかないとも。
けれど安心してくれ。
皆頑張ってくれている。
計画通りに事が進めばきっと上手くいく」
「だから、まずは君も話しをしよう。
有用な意見なら取り入れよう。
君のやるべきことも共に見つけよう」
「・・・ありがとう。
そうね。お願いするわ」
その日から、
私はグリアと度々話し込んだ。
私は日本での知識も用いて様々な提案をした。
グリアはそれらを取り入れられるか検討してくれた。
グリアは約束通り、
私の意見も取り入れて少しずつ計画も修正していった。
時にはへパス爺さんも交えて新しい技術を取り入れたりもしていった。
工作機械ならぬ工作魔道具を作って、
技術者たちの出来る事も増えていった。
そんな風にして忙しい時間はあっという間に過ぎていった。
----------------------
ギルドから派遣された調査団を連れて、
私は地上に転移した。
既に地上にはセレネの結界が張ってある。
魔物除け魔道具も後で設置することになるだろう。
私は地形操作の魔法で木々ごと広範囲を巻き上げて、
木や植物は収納空間に納めていく。
あっと言う間に村ひとつ分くらいの土地が平らな地面に様変わりする。
事前に畑を作って練習したとおり、土の状態も問題無さそうだ。
収納空間から予め必要なものを混ぜ込んでおいた農作用の土を取り出し、
同じように魔法で決めていた場所に撒いていく。
たった数分で未開拓地の森が、
直ぐにでも農業が始められる土地に様変わりした。
おまけに、農具小屋まで建てておいた。
最後に魔物除け魔道具を設置して、
パフォーマンスは終了だ
ちなみに、この魔道具は爺さんが新たに作り出したものだ。
以前の物にあった危険な要素は取り除かれている。
効果の程も確認済みだ。
町の職人でも工作魔道具を用いれば作れるようにしてくれた。
今後はこちらをメインにしていくだろう。
グリアがそれを見届けて調査団と話しを始める。
隣に予め作っておいた畑と見比べながら、
この地の開発状況について解説しているようだ。
これで、例えギルドが認めずとも、
直ぐにでも十分な国力を得てしまう事は伝わっただろう。
それから間もなくして、
ギルドから国として認められた事が通達された。
この地に来てから半年近くが経過している。
ひとまず、これで我々は世界的に見ても無法者集団では無くなった。
ちょっかいをかけようとしても前より難しくなるはずだ。
ギルドが表向きに保証したのだから、
ギルドの裏で暗躍する者達も間接的に認めたのだろう。
ならば、そのまま良く見ていてもらおう。
この地の価値を高めていこう。
けれど、危険なものは漏れないように。
あと一年程頑張ればこの生活も終わるはずだ。
グリアのお陰で、随分予定も短縮された。
私達は地下空間だけでなく地上にも町を作っていった。
建物を建てたり、川から水を引いたりは殆ど私が魔法でやってしまったが、
それでも、一部は町の人達にも作業してもらった。
自分達でも作ったほうが愛着も湧くだろう。
一部はこちらに住んで、農作を担当してもらう。
移動は入口通路の途中で分岐させて、
すぐ地上に出れるようにした。
エレベーターも欲しい所だが流石に難しいと断念した。
下階層のと違って、上方向にはかなりの高さがあるのだ。
作ってもメンテナンスが難しく、維持しきれないだろう。
町の人々は殆どが始めての地上での暮らしに不安がったが、
一部の若者達は興味を持ってくれた。
今後は彼らを中心に頑張ってもらおう。
町作りは意外と楽しかった。
今度別の場所でもやってみようかしら。
私とノアちゃんとセレネのためだけに作って、
別荘代わりにしても良いかもしれない。
作ったら引き籠もりそうだからダメかしら。
でもやっぱり楽しそうだから、
今度未開拓地のどこかに丁度良い場所を探しておきましょう。
家が一軒建てられて、
景色が良くて川が近い所ならどこでも良さそうだし。
でも小さい畑なんかも作れると良いかも。
なんだか楽しみになってきた。