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13-14.決断

私はグリアとの話を終えて、

ノアちゃんを連れて森に建てた家に帰宅した。



「何かありましたか?」


帰宅するなりソファに座ってノアちゃんを抱え込んだ私に、

ノアちゃんが質問する。



「ちょっとね・・・」


ノアちゃんは私の方に向き直り、

正面から抱き合って、私に体を預ける。

そうして私の後頭部を撫でてくれる。


どうやら慰めてくれているようだ。



私は今日のサラさんやグリアとの会話を

思い出して考え込む。



私はサラさんにも指摘された通り、

ギルドの事を勘違いしていたのだろう。


根本的には魔物から人々を守る為に存在するのだと思っていた。


もしかしたら、最初はそうだったのかもしれない。

そうでなければ、ここまで世界中に受け入れられなかったと思う。


けれど時代は変わってしまったのだろう。


組織立って魔物を討ち滅ぼしていく人間達に、

賢い魔物達は近づかなくなっていった。


魔物が町に近づかないのなら、

ギルドが民を守る必要も無くなってしまう。


ならば、自ら魔物を狩りに行って、

魔物の素材で利益を得ていくしかないだろう。


そうやって変わっていってしまったのではないだろうか。

なんの根拠もないけどそんな風に思ってしまう。



現在のギルドは魔物を利用して利益を得ているに過ぎない。

サラさんも言葉を選ばずにそのような事を言った程だ。

これは事実なのだろう。



本当にそんな集団にこの国を預けてしまって良いのだろうか。

私は今更になって、勘違いしていた事に気づいてしまった。


セレネの言うようにもっと深く考えていれば別の道もあったのだろうか。


この町の人々を無理やり追い出して移住させ、

町ごと全ての技術を破壊し尽くしてしまえば良かったのだろうか。


サラさんには流出を防ぐためなんて言ったが、

彼らが外に出たところで大きな被害にはならなかった可能性も高いのだ。


なにせ、重要な技術は殆どが失われているし、

保管されていた高度な魔道具は私が破壊した。


そうすれば、結果的には誰もが幸せになれたのかもしれない。


けれど、そうはならなかった。

グリアもこれくらいの事は考えたのだろうし、

他にも問題があるのだろう。


移住先の新しい町を軌道に乗せるなど、

二年程度では済まないだろう。


けれど、それでも選ぶべきだったのかもしれない。

そうすればここまで事態はややこしくならなかったのかもしれない。


例え誰に恨まれてもそうするべきかもしれない。

この地での生活を捨てさせるべきだったのかもしれない。


爺さんを尊敬する姿から見て取れるように、

この地の人々はこの場所に愛着を持っているはずだ。


それでも取り上げるべきなのかもしれない。

今なら間に合うのだろうか。


こことは別に、他の町を新しく作ってみせようか。

そうして皆で移住すれば良いのだ。

私がいれば、すぐに建物も揃うだろう。

農作もここよりずっと始めやすいはずだ。

友好的な国もいくつかある。

場所には困らないはずだ。


けれど、もう事を起こしてしまった。

今更どうにもならないかもしれない。

もう、この地の人々の可能性は示してしまった。


今更この地の人々を隠した所で、

見つけ出されて利用されるだけだろう。


私は間違えたのだろうか。

ギルドは人々の味方だと盲信して、

道を踏み外したのだろうか。


この地の人々を道連れにしようとしているのだろうか。



もっと考えよう。

グリアの考えは正しいのかもしれない。

正しいだろうではなくそう思うべきだ。


散々頼り切っておいて今更だけど、

私も一緒に考えるべきだった。


グリアに全てを押し付けていないで、

私が決めるべきなんだ。

私がやりたいと言ったのだから。


グリアの考えは実現可能な範疇かつ、

短期間で目標を果たす事を条件としている。


本当にそれで良いのだろうか。

グリア達の優しさに甘えていないで、

もっと時間をかけてでも最良の選択肢を探すべきではないだろうか。





「アルカ。何を悩んでいるのかはわかりませんが、

私では力になれないのでしょうか。

考えるのは得意ではありませんが、

話を聞くくらいならできます。

それでは足りないでしょうか」


ノアちゃんが耳元で囁きかけてくる。



「そんな事ないわ。

ありがとうノアちゃん。

頑張って話してみるから聞いてくれる?」


「はい!」


私は今日の会話と、

自分の考えている事を伝えていく。


話しながら自分の気持ちにしっくり来るものと、

そうでないものを選り分けていく。



「アルカが何年でも時間をかけたいと言うなら、

私は反対しません。

いくらでも一緒にお手伝いします。

だから、私の事は気にしないで下さい。

アルカのしたい事を選んで下さい」



「ありがとう。

けれど、やっぱりそうするつもりは無いの。

セレネやグリアに沢山教えてもらって、

ノアちゃんに話しを聞いてもらって、

なんだか気持ちがスッキリしたわ。

やっと私の心も決まった気がする」


「とっても自分勝手だけど、

私はこの件をさっさと終わらせて、

ノアちゃんとセレネとイチャイチャしたいの。

もうそれで良いのよ」


「無理やりやりたくも無いことを続けたって、

本気で挑めやしないの」


「私がどんなに望んだって、

何百人もの人を全て幸せにする方法なんて無いのよ。

何時までも夢みたいな事を言っている場合じゃないの」


「もうグダグダ悩むのは止めにする。

必要な事を必要なだけ考えて、

私の考えた幸せを皆に押し付けることにする」


「そのかわり、

絶対に幸せに出来るって自信を持つことにする」


「私は精一杯頑張ったから、

後はあなた達が頑張ってって言えるようにする」


「私はノアちゃんとセレネの事を一番にする。

その上でするべき事を決めるわ」


「いっそ二年と言わず、一年以内にこの件を片付ける事にしてしまいましょう」


「そのかわり、その分は必死に頑張る」


「だから、ノアちゃんは

何時までも私と一緒にいてね。

私が間違えたら止めてね。

私が悩んでいたら話しを聞いてね。

私が苦しんでいたら抱きしめてね。

今まで以上に私の事を好きになってね」



「はい。

今もそうしているでしょう?

これからも変わりませんよ。

私はこれからもアルカの事を好きになり続けます。

アルカがどんな決断をしたって、

それは変わりません」



「ありがとう」



私はノアちゃんの頬にキスをして、

ノアちゃんを抱いたまま立ち上がる。


そのまま、ベットに移動して、

ノアちゃんを寝かせて覆いかぶさる。



「ノアちゃん体が固いわ。

緊張しているの?」


「少し久しぶりなので」


「そうね。結局あれからしてなかったものね」


けれど、顔の周りにキスするだけなんてまだまだよ。

本当はもっと凄いことしたいんだから。


それにしても何時まで理性は保つのかしら。

ノアちゃんの唇柔らかそう・・・

指で触るくらいなら良いかな・・・



「晩御飯作らなきゃです」


「良いの」


「・・・そうですか」


「耳触っても良い?」


「・・・好きにして下さい」

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