13-13.メッセージ
私はグリアとの話を続ける。
「グリアは横槍を入れている国についてどう考えているの?
サラさんともその話はしていなかったようだけど」
「どうと言われては範囲が広すぎるが、
君が気にしているのは、横槍がある現状で
ギルドが我々を国として認める事が出来るかという話かね?」
「そうね。
それにギルドに渡った技術のその後についても重要よ」
「まず、認めるかについてだがね、
これは問題は無いと考えている」
「一から説明するならば、
まず、ギルドの立場は本来中立だ。
つまり、各国の国政に関与できない代わりに、
ギルドは各国の思惑に縛られないはずなのだ」
「それは何故かというならば、
彼らが一国では抗えない程の
大きな武力を持っているからだ」
「彼らから国を守る為に、
各国は国政に口出ししてはならないと約束させている。
武力で脅されれば従うより他に無いからだ」
「その代わりとして、
ギルドの中立は認められている。
これを世界の総意とする事で、
全ての国が手を組んで、
ギルドが自由に振る舞うことに制限をかけているのだ」
「ギルドが本気でやりたい放題すれば、
世界中の国を落とす事すら可能なのだ。
ならば、ギルドの中立性は保たれねばならん。
それが発足当初の考えだったはずなのだ」
「その上で、何故現在のギルドが
こうも各国の思惑に踊らされているかと言うならば、
結局のところ運営する者達はただの人間でしか無いからだ」
「しかも彼らは個人的な武力も持たない者達だ。
ギルドの本来の理念など守れようはずもない」
「ある者は思惑を持って国から派遣され、
ある者は立場を利用して金儲けに走る。
ギルドの長い歴史の間にそんな者達の集団に成り下がった」
「そのような者達が何を望むか。
それは君にもわかるだろう?
利益になりさえするならば、
ギルドも邪魔する国も口を塞ぐのだ」
「本来侵されないはずのギルドを妨害出来るならば、
横から情報をかすめ取る事くらいできるはずだ。
我々が自ら情報を広めると言うのだ。
一先ずは好きにさせてみようと判断するだろう」
「少なくとも、現在横槍を入れている国は、
世界のためにそうしているのではない。
あれだけの事件がありながら、
その上で介入している者達だ」
「彼らの思惑は自らの利益だけだ。
今、ギルドに介入されればそれが損なわれると考えている」
「何故なら早急に調査しようとする者達が、
君と同じ様に世界のためにと戦っている者達だからだ。
数は少ないがまだ存在しているのだから」
「彼らは足の引っ張り合いをしているのだ。
正義を行おうとする者達の足を引っ張っているのだ。
自らだけが利益を得るために慎重になっているのだ。
他国に出し抜かれないように、
確実に事を進める時間が欲しいのだ」
「そこに、君達の思惑はわかっている。
だから欲しがっている物を与えようと
メッセージを送るのさ」
「きっと彼らは食いつくだろう。
ギルドを利用して利益を得ようとするだろう」
「無理をして動かなくても、
勝手に情報が入ってくるならそれに越したことは無いだろう」
「しかもその情報が自分達では
本来得ることが不可能な失わえたドワーフの技術だ。
それを何故か冒険者アルカは扱うことができる。
ならば、任せてしまうのが手っ取り早い」
「そうして時間が稼げればこの地を独占する準備を進められるだろう」
「本当に大きな利益が眠っているのか見極めてからでも遅くはないだろう」
「我々は話のわかる存在だと、
少なくとも交渉する余地はあるのだと認識させようではないか」
「そうしてまずは我々の存在を認めさせよう」
「我々を国と認めるだけで、
莫大な利益が手に入るのだと理解させよう」
「今の話を聞いていると、
そもそもの方針自体を疑いたくなるのだけど。
本当にギルドに任せて大丈夫なの?」
「そこはこれからの課題だ。
我々は情報の取捨選択をせねばならん。
危険な技術は封印せねばならん」
「ダンジョンコアの制御装置は既に漏れている以上仕方がない。
仮にも冒険者ギルドだ。
あの技術の危険性は誰よりも知っているだろう。
慎重に取り扱ってくれる事を祈るしかあるまい」
「だが、それ以外の危険な技術を広めるわけにはいかない」
「その為には時間が必要だ。
これには各国を牽制して時間を稼ぐ意味もある。
いつ過激な行動を選択する者達が現れるとも限らんしな」
「過激な行動って言ったて、
現状、彼らは何も出来ないでしょう?」
「何を言っているのだね。
いくらでもやりようはあるだろう。
買い出し班を襲撃するなり、
セレネ君やピレウスの町を人質にして君を利用するなり、
ギルドの調査員に紛れ込ませて侵入するなりな。
君なら全てを防げるかもしれんが、
君が全てを見守るわけにもいかんのだ」
「・・・そうね」