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13-8.お菓子作り

私はセレネと一緒にお菓子作りをする事にした。



この世界は別に食の文化が大きく遅れているわけじゃない。

単純に輸送の問題で難しかったり、

高かったりはするが、殆どの物は存在している。


大都市の高級店なら町のすぐ側に自前の牧場を持っていたりする事すらあり、

鮮度の問題もだいたい力技で何とかしているようだ。


プリンとか作ってもダメだろう。



セレネが食べたこと無さそうなものだと、

和菓子の類だろうか。


そう思い、あんこに出来そうな豆は仕入れ済みだ。

グリエモンに頼んだら手配してくれた。

転移門ポケットは自前だけど。

買い出し班はミ◯ドラかな?


ミニ◯ラって最近いなくない?

私の知識は数年前だけど。



あんこは何度か試作もしてある。

ちょっと味は違うけどまあいい感じだ。


どら焼きでも作ってみよう。





「素晴らしいわ!

そうよ!そういうのがやりたかったの!

とっても嬉しい!」


提案したらセレネは言葉通り喜んでくれた。

こんなに喜んでもらえるなら

準備したかいがあるというものだ。

こっちの約束は憶えていて良かった。



「アルカのことだから、

一日中布団の中から出られないかと心配していたわ」


「お望みなら今からでも」


「嫌よ!やりたいなら雰囲気作って!」


「ちょっと前はセレネから迫ってきたのに。

コロコロ変わり過ぎじゃない?」


「アルカのせいでしょ!

あんな荒療治みたいな事しておいて良く言えたね!」


「ごめんごめん。

さあ、お菓子作りを始めましょう」



私はセレネと一緒に、

小豆代わりの豆と水を煮詰めていく。



「これどれくらいかかるの?」


十分位経った所で、

セレネは少し退屈になってきたようだ。



「一時間くらいかしら」


「そんなに!

なんかイメージしてたのと違うんだけど・・・」


「もっとイチャイチャしたかった?」


「そうだけど・・・」



火力調整を自動でやってくれる便利な機械は無いので、

ずっと鍋の側に張り付いていないといけない。


魔法の火なら調整もできるけど、

流石に一時間続けるのはしんどいだろう。

別に出来ないわけじゃないけど。



「一応収納空間に試作品もあるから、

そっちを使う方法もあるけど」


「いいえ。文句を言ってごめんなさい。

せっかくアルカが準備していてくれたのだもの。

このままやらせて」


「そっか」


セレネは真剣に鍋を見つめる。


流石にそこまで真剣になる必要は無いのだが、

殆ど料理すらした事が無いセレネは、

つい気になってしまうのだろう。


そんなセレネを眺めながら私は嬉しくなる。


セレネ可愛い。



「一回水を替えるからね」


私は鍋のお湯を捨てて、

また水を加えてもう一度火に焚べる。



「何で替えるの?」


「・・・わかんない」


「アルカ・・・」


「違うの!これは私が何も考えてないからじゃなくてね!

そういう作り方だったのを思い出しながら作ってるだけなの!」


「私は料理人やお菓子職人じゃないから

作り方の理由まで興味が無かったのよ」


「私のいた世界は情報が溢れてたから、

深く考えなくても大体のことが調べられるの。

けど、逆に情報が多すぎて一々掘り下げて

調べてはいられなかったのよ」


「もちろんちゃんと理由まで調べて

しっかりと身につける人達もいたわ。

私はそうでは無かってけど。

けれど、決して私みたいな人が少なかったわけじゃないの。

むしろ大多数がそうなんじゃないかしら」



「そんなに慌てて言い訳しなくても今日は怒らないわ。

せっかくアルカと楽しい時間を過ごしているのだもの」


「そうよね・・・ごめんなさい」


「謝るような事じゃないけど。

さあ、続きをやりましょう」


「そうね」


「なんでそんなに長い時間煮込むの?」


「えーと、煮潰してドロドロにしたいからかな?

そこにたっぷりの砂糖を加えた物が、

私のいた国では昔から親しまれていたの」


「そっか。ありがとう」


私が必死に考えて情報を付け足しながら答えると、

セレネはニコニコしながらそう答えた。


そんな感じでご機嫌なセレネの質問に答えながら、

お菓子作りを進めていく。



砂糖と少量の塩で味を整えてあんこが完成する。


セレネは初めて見るあんこに怖気づく事もなく、

味見してくれた。



「!?」


一口含んだセレネは

興奮して何も言わずに抱きついてきた。


どうやらお気に召してくれたようだ。



次にあんこを冷ましている間に、

生地の材料を混ぜて焼いていく。



そうして、二人で生地にあんこを挟んでいき、

大量のどら焼きが完成した。



「おいしい!」


セレネは両手にどら焼きを持って大興奮だ。

ノアちゃんの分は先に収納空間に入れておこう。

このままでは全部食べてしまいそうだ。



私はセレネの頬に口づけして、

付いていた食べかすを綺麗にする。



「!?

我慢できないの?」


セレネは乗り気になったようだ。

今のは別にそういう意図じゃなかったのだけど。

半分くらいは・・・


私が何も答えずにニコニコしていると、

セレネは私の膝に乗ってきた。



「食事中に行儀が悪いわ」


「アルカがそれを言うの!?」


「私は頬に付いていたのを取っただけよ?

セレネはどうかしたの?」


「いじわる!」


「セレネってなんだかイジメたくなるのよね」


「これ以上いじめるなら今日は無しよ」


「セレネがしたくなったらで良いわ」


「・・・・・・・・して」

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