12-19.決意
私はノアちゃんを伴って再び城を目指した。
アリア達と心置きなく話をするために、
まずはこの件を片付けてしまおう。
ノアちゃんも今度こそ大丈夫だ。
いっぱい泣いていっぱい気持ちを吐き出したから。
それに・・・
昨日の事を思い出すと顔が熱くなる。
飽きもせずに夜遅くまで互いの頬にキスを繰り返していた。
途中からはノアちゃんもヒートアップして、
何度も私の顔を舐めていた。
少し唇も舐られてしまったけど止めることが出来なかった。
私だって初めてなんだ。
あんな雰囲気で我慢できるわけがなかった。
ああなる前に止めるべきだったのに。
セレネにどう説明しよう・・・
絶対にあの時のノアちゃんの感情は伝わっているはずだ。
ノアちゃんは何も言わなかったが、
きっとセレネは問い詰めようとしているはずだ。
セレネにも同じくらいの事はするべきなのだろう。
二人を平等に扱わずにいれば、
いずれはこの関係は破綻するはずだ。
けれど、次は理性が持たないかもしれない。
たぶんノアちゃんはキスが最上の行為だと思っている。
今はまだその方面の知識が疎いから、
その程度で済んでいるんだ。
けれどセレネは違う。
今はまだセレネの望む事はしてあげられない。
私は何でこんなに意思が弱いのだろう。
頬に一回だけなら良いと思った。
その程度なら家族のじゃれ合いで済むと思った。
けど、結局あんな事をしてしまった。
あれではもう意味が違ってしまう。
弱った幼い女の子にあんな事をするなんて最低だ。
しかも自分に好意を寄せてくれる相手だ。
その好意まで断っておいてやることじゃない。
そう後悔しながらも、
懲りもせずにあの幸せな時間を思い出してしまう。
今までに感じたことの無い高揚感だった。
経験の無かった私には刺激が強すぎた。
もっとあの時間を過ごしたいと思ってしまった。
そんな感情に飲み込まれたらおしまいだ。
きっと私はノアちゃんとセレネを引きずり込んで、
引きこもるだろう。
きっとエイミーに言われた事を気にして、
誰も知り合いのいないところに逃げるのだろう。
そうして三人だけの世界で溺れていくのだろう。
そんなの絶対に幸せにはなれない。
そう思うのに、
それが出来たらどんなに幸せだろうと夢想してしまう。
矛盾しているけど、
それ程までに一時的な快楽に惹かれてしまう。
散々二人の感情について指摘しておいて何たるざまだ。
気をしっかり持とう。
同じ失敗を繰り返さないと決意しよう。
きっと、今ならまだ引き返せる。
あと四年はなんとしても耐えて見せる。
皆で心の底から幸せになるために。
この決意だけは絶対に守り抜く。
もう二人の心を踏みにじる様な真似は絶対にしない。
・・・そうするとセレネには
今回の分の補填はどうしたらいいのかしら・・・
近づいて来た城を見て私は意識を切り替える。
ノアちゃんは何も言わないが、昨日とは様子が違う。
もしかしたら昨日の事を思い出しているのかもしれない。
顔には出さないけれど。
ノアちゃん凄い。
「ノアちゃん。
いつも通りにお願いね」
「っはい!」
私はノアちゃんと繋いでいた手を離して城の衛兵に向かっていく。
「あっ」
手を離した瞬間、ノアちゃんから声が聞こえたけど、
今は知らないフリをする。
「冒険者アルカ」
私は冒険者カードを提示して名乗る。
本当に突然の来訪でも問題ないようで、
衛兵は躊躇いもせずに私を城内に招き入れる。
衛兵に案内された先は城内の一室だった。
ソファとテーブルが中央に置かれており、
周囲は豪華な装飾で彩られている。
本当にここなの?
場違い過ぎない?
多分重要な客人を招く場所だ。
王の時間が空くまで、
適当に冒険者を待たせておくための部屋ではない。
正直数時間でも待たされる事になるとすら覚悟していたけど、
この丁重ぶりはそうでは無いようだ。
本当に私はこの国を救ったことがあるのだろう。
そしてこの国は私に恩を感じているのだろう。
まさか特別な意図も無く偶然呼ばれただけなの?
私がこの町を訪れた事をどうやってか知って、
いい機会だからと呼び出しただけ?
少しだけ待っていると、
何人かの貴族らしき人達を引き連れた国王が現れた。