12-17.白猫少女の後悔
呼び出しのあった国を再び訪れた私達は
まずこの地のギルドに向かった。
「あっ!アルカさん!
お久しぶりです!」
私の顔を見た受付嬢はそんな事を言う。
だあれ?
いやまあ、ここにも少しは滞在したし、
その時にはある程度強くなってたから向こうは知ってるんだろうけど。
すみません。正直憶えていません。
などとは言えず、曖昧な返事を返す。
「登城するようにって聞いた」
「はいその件ですね!
直接城に来て構わないと伺っています!」
この受付嬢さんテンションが高い。
あまり身近にいないタイプだ。
たぶん当時の私は苦手だったのだろう・・・
ほんとごめん・・・
呼び出しを受けたとは言え、
城に行くのにアポ無しなの?
「アルカさんまさか憶えていないんですか?
昔この国を救ったじゃないですか!」
????
え?憶えてないけど。
ここにいた頃には国家規模の事件にも度々巻き込まれていたから、
一々どの件だったか憶えてないわ・・・
まあ、良いか。
私に悪印象を持っていないなら好都合だ。
私はギルドを出て城に向かう。
さっきからノアちゃんが全然喋っていない。
どうかしたのだろうか。
元気がないのかな・・・
「ノアちゃん。
元気が無いけどどうしたの?」
「いえ。大丈夫です。
少しアリア達の事が気になっていました」
「すっかりノアちゃんにも懐いたものね。
さっきも手を繋いで歩いていたし」
「ええ。そうですね。
妹が出来たみたいでちょっと嬉しいです」
そう言いながらも、
ノアちゃんの表情は優れない。
私はノアちゃんの手を引いて路地裏に入り込む。
「アルカ?どうしたんですか?
転移するんですか?」
私は人目につかない所に来たのを確認し、
ノアちゃんを抱きしめて語りかける。
「ノアちゃんが元気になるまではどこにも行かないわ。
例え王様だって待たせてしまいましょう」
「私は元気ですよ?」
「そうは見えないわ。
話せる事なら話して欲しいし、
話せないなら元気になるまでこうしているから。
けど急がなくて良いからね。
時間がかかりそうなら今日はもう帰ってしまうから」
「ダメですよ。
皆に迷惑がかかります」
「私が謝るわ。
ノアちゃんは私にとって他の何よりも大切なの」
「・・・」
「大丈夫。
無理はしなくていいから」
私はノアちゃんを抱きしめて待ち続ける。
十分位経った頃、
ノアちゃんは少しずつ話し始めた。
「私は自分勝手なんです」
私は黙って聞き続ける。
「私はアリア達に嫉妬して
アルカから無理やり引き離しました」
「その挙げ句、
アリアの気持ちはわかっていたのに、
自分の都合で焦って誰かに預けてしまおうとしていたんです」
「ダーナさんにも諭されていたんです。
保護者の都合を押し付けるのも仕方がない事はあるけど、
その前にちゃんと話しをするようにと。
少なくとも私の行動にはそれが足りていないと」
「私は抑えきれないんです」
「アルカを好きだって気持ちが。
その気持を邪魔する人を許せないって気持ちが」
「だからアリア達に酷いことをしました」
「今の私が近くにいたら、
感情が溢れてアリア達を傷つけると思ったんです」
「それでアリア達の意見も禄に聞かず、
説得もせずに話しを進めてしまおうとしたんです」
「それはもう既に酷い事なんだってわかってなかったんです」
「だから私は自分勝手なんです」
静かに泣き始めたノアちゃんを抱いたまま、
私はテントに転移する。
「ごめんね。
ここなら誰にも聞かれないからね」
「ノアちゃん。
泣くのを我慢しないで。
そんな時は思いっきり泣くの
いっぱい泣けたら気持ちがスッキリするから」
「私がずっと抱きしめていてあげるから」
ノアちゃんの泣き声が少しずつ大きくなっていく。
ノアちゃんが少しずつ気持ちを吐き出していく。
私はノアちゃんが泣き止むまで抱きしめ続けていた。