12-15.白猫少女の悩み
「ノアお姉ちゃん!」
私を見た途端、アリアちゃんが飛び込んできた。
たった半日で私にも随分懐いてくれたようだ。
「おはよう。アリアちゃん。
ルカちゃんはどうしたの?」
私はアリアちゃんを受け止めながら質問する。
「リヴィと遊んでる!」
結局昨日からリヴィは泊まり込んでいた。
アリアちゃんともすっかり仲良くなったようだ。
リヴィも大概浮気性だ。どっかの誰かのように。
まあ、アルカはそういうわけでも無いのはわかってる。
けど思わず当てつけたくなる気持ちも仕方がないと思う。
昨日はリヴィも帰ってこなかったので、
アルカとセレネと三人で過ごした。
いつも通り露天風呂で長風呂に付き合わされた。
二対一だから拒否権が無い。
お風呂は嫌いだけどセレネとアルカだけにもしておけない。
結局いつも渋々付き合わされる事になる。
アルカとくっついてお話出来るからちょっとだけ満更でもないけど。
最近はお風呂でくっついていると妙な気持ちになる。
前はこんな事無かったのに。
なんでだろう?
アルカは昨日の事を本当にちゃんとわかってくれたのかな。
アルカはああ言っていたけど、
問題はあれだけじゃないと思う。
アルカは何も考えずに行動してしまう時がある。
真面目モードの時はそうでも無いのに、
のんびりモードに入ると顕著だ。
条件反射で動いてしまう。
たぶん考える事自体を放棄しているんだろう。
放棄というか、気にしないっていうのが正しいのかな?
後の事を忘れて眼の前の事をなんとかしてしまう。
それ自体もあまり深く考えずにだ。
けれど本当はアルカが私達の気持ちを何にも考えていないなんて思ってはいない。
きっとちゃんと考えてくれているのだろう。
少なくとも真面目モードの時は。
まだきっと私達の事が一番に頭に浮かんではいないんだ。
私は常にアルカに一番に考えて欲しい。
のんびりモードで思考を放棄していたって、
最初に私の事を思い浮かべてから行動して欲しい。
優先順位は常に私が一番でいて欲しい。
いつかアルカが受け入れてくれたらそうなるのかな?
アルカは私を選んでくれるかな?
セレネが選ばれたら私は耐えられるのかな?
怖くてたまらない。
アルカを好きな気持は大事に思っているけど、
こんな風に不安でたまらなくなる。
あまり良いことばかりでは無い。
最近はアルカに怒ってばかりだ。
大好きだから喧嘩するとセレネは言っていたけど、
たぶんその通りなのだろう。
アルカの事が好きで好きでたまらないから、
大したことでは無くてもアルカに酷いことをされたと思ってしまうのだろう。
やだなぁ・・・
私はアルカと楽しく過ごしたいだけなのに。
アルカに一番好きになってもらいたいだけなのに。
「ノアお姉ちゃん!」
「どうしたの?アリアちゃん」
「元気無い?
アルカと喧嘩した?」
「大丈夫。そんな事無いよ。
ありがとう。アリアちゃん」
「良かった!」
「今日は一緒に行くところがあるから
ルカちゃんを呼んできてくれる?」
「うん!」
アリアちゃんは素直な良い子だ。
それにとっても可愛い。
アルカもきっとアリアちゃんの事が好きだろう。
私は必死に湧き上がる嫉妬を抑え込む。
あんな良い子にこんな感情を向けちゃだめだ。
なんで私はこんなに嫉妬深いのだろう。
最近感情に振り回されすぎだ。
前はここまででは無かったのに。
アルカはいつか慣れると言っていたけど、
本当にこんなのが慣れるのだろうか。
感情が大きすぎていつも爆弾を抱えているような気分だ。
意識していないとすぐに暴発するだろう。
セレネに相談してみようかな。
最近少し辛い。
こんな我慢、何時までもは続かない。
ルカちゃんを連れて来たアリアちゃんにお礼を言って、
皆で歩き出す。
リヴィも途中まで付いてきたけど、
魔物除けがあるから町には連れていけない。
今日は町の代表であるダーナさんに、
この子達の事を相談する為の時間を作ってもらった。
アリアちゃんを納得させられているわけじゃないけど、
とにかく手は打っておかないと、
アルカが面倒を見る事になるのも時間の問題だろう。
アリアちゃん達の事が嫌いなわけではないけど、
最近の私は感情が抑えきれなくなりそうだから、
側には置いてあげられない。
出会って間もないけど、
この子達に酷いことはしたくない。
上手く解決すると良いのだけど。
アルカをあげられない代わりに、
絶対アリアちゃん達が喜んでくれる方法を考えよう。
そんな方法があるかは、まだわからないけど。
とにかく頑張ろう。