12-12.悪い魔女
私は一先ず二人を連れて、
テントに転移した。
まずはお風呂とご飯だ。
その後は服も買いにいかなきゃ。
流石に小さすぎてサイズがない。
アリアなら昔のノアちゃんの服は着れそうだけど、
勝手に着せたら別の怒りも買いそうだ。
もう怒られる事は確定しているけど、
理由を増やす必要はない。
この子達は可能なら地下のあの町で保護してもらおう。
ダメそうなら責任持って他の国に探しに行こう。
流石に私にこれ以上抱え込む余裕はない。精神的に。
私は二人を連れて露天風呂に向かう。
お風呂に入った事が無いようで
大量のお湯に戸惑っていた。
水浴びくらいはした事あるだろうし、
まあそのうち慣れるだろう。
慣らしたらダメじゃない?
流石にあの地下の町にもお風呂は無いわよ?
そんな事を考えながら、
二人を洗い流していく。
そうして綺麗になった二人を見て驚く。
アリアはとんでもない美少女だった。
ルカはまだ幼すぎるけど、アリアによく似ている。
この子達は血の繋がった姉妹なのだとよくわかる。
ルカも成長したらアリアみたいになるのは間違いない。
戸惑ったままの二人を乾かして、
私の昔の服からなんとか着せられる物を探してとりあえず急場を凌ぐ。
その後はテントに移動して、
二人に食事を与えていく。
今日買い足したばかりの出来合いのものを並べて促すと、
二人は一心不乱に食らいついていく。
「アルカは魔女さんなの?」
食事をしてようやく我に返ったアリアはそんな質問をしてきた。
「そうね。魔法使いよ」
「食べちゃうの?」
「何を?」
「私たちのこと」
!?
森に住む悪い魔女?
グツグツ煮込まれたと思ってる?
肥えさせられてるのかな?
「そんなわけ無いでしょ。
食べ終わったのなら服を買いに行きましょう。
その服じゃサイズが合っていないわ」
「え?」
また戸惑い出したアリア。
この地に来てから驚きすぎて、
ずっと頭が追いついていないようだ。
ルカは殆ど喋らないから良くわからない。
見る限りアリアよりは気にしていないような気がするけど。
私は満腹になった二人を連れて、
再び先程の町に転移する。
この町はそれなりに大きい。
昔少しだけ滞在していたが、
流石に服屋の場所は憶えていない。
当然二人も服屋なんて知らないだろう。
探して彷徨う間は二人はテントに残しておくべきだっただろうか。
けど身綺麗にした二人の事はわからないだろう。
そもそもこの子達が狙われていたとも限らない。
たまたま目について攫おうとしただけかもしれない。
ようやく服屋を見つけて中に入る。
高級店っぽいけどまあ良いか。
「お客様。どの様な物をお探しでしょう」
まあ良くなかった・・・
話しかけられる系かぁ・・・
やだなぁ・・・
でも自分の探すわけじゃないからまだましかな・・・
というか私の格好見ても追い出さないんだな。
冒険者らしい格好だから高級店は嫌がるかとも思ったけど。
「この子達」
私はアリアとルカを示す。
「!?
かしこまりました」
初老の店員はなにかに一瞬驚いたが、
すぐに気を取り直して二人の体を測定していく。
アリアが美少女すぎるからかな?
またもアリアは戸惑っている。
ルカは呆然としてるのかぼーっとしてるのか良くわからない。
ひととおり普段着が揃った。
「下着と寝間着も」
店員は直ぐ様承知して続けていく。
お陰であっという間に必要なものが揃った。
「ありがとう」
私達は服を購入して立ち去る。
この店ならまた来ても良いかもしれない。
今度はノアちゃんとセレネを連れてこよう。
ご機嫌取りも必要になるし・・・
違う女の子を連れてきたらあの店員さんにどう思われるのだろう。
危ない人に思われないかしら。
流石に通報されると困ってしまうのだけど。
というか、二股野郎みたいだ。
まあ、実際既に二股してるようなもんだけど。
これで四股?
アホな事を考えるのは止めよう。
それにこの子達は自分で育てるわけじゃない。
あの地下の町で暮らしてもらうだけだ。
最悪私が出資して孤児院を作っても良い。
あの町には必要が無かったから存在しないけど、
人が増えればいずれは必要になるかもしれない。
どうせならちゃんとしたものを作っておいた方が良い。
さあ、次はいよいよ叱られる時間だ。
ノアちゃんとグリアに報告に行こう。
行きたくないなぁ・・・