12-11.保護
少女たちは孤児のようだ。
突然男たちに囲まれて連れて行かれそうになったらしい。
こいつらは人攫いかしら
この子達どうしよう・・・
別に孤児が珍しいわけじゃないし、
こうして助けた事が無いわけじゃない。
けど、大体の子供達は、
私が助けてもすぐにその場を逃げ出してしまう。
孤児達は大人に保護される事を恐れる。
孤児院にも受け入れてもらえない境遇だったり、
そもそも孤児院から逃げ出して来た子だったり、
その他にも理由は様々だ。
殆どの孤児達が大人を警戒する。
例え助けられても、
親切心で憲兵や孤児院に連れて行かれると困るからだ。
この子達はそうではなかった。
事が済んでも私から逃げ出さないどころか、
私の服を掴んで見上げてくる。
もしかしたら孤児になってから日が浅いのかもしれない。
この地域の孤児院はどうなのだろう。
連れて行っても受け入れてもらえるとも限らないけど。
「名前は?」
「アリア」
「ルカ」
!?
なんでよりによって私と似てるのよ・・・
というかなんで私今名前聞いたの?
深入りしないつもりなら黙って孤児院に連れて行くべきだった。
なんかやりづらくなっちゃったじゃない・・・
「お姉ちゃんは?」
大きい方のアリアがそう返してきた。
「アルカ」
「ルカ?」
小さい方のルカがキョトンとする。
「私の名前。アルカ」
それを聞いてはしゃぎだす二人。
やっぱり孤児に見えない。
普通はこんな事で笑える程の余裕は無いだろうに。
でも着ている服はボロボロだ。
なにか妙な感じがする。
この二人は路地裏に住むような孤児にしては不自然だ。
見た目はそれなりに長く孤児だったように見えるのに、
内面はそうではない。
全然擦り切れていない。
誘拐されて逃げ出したばかり?
それならもう少し怯えるはずだ。
孤児のフリをしているの?
もしくはさせられている?
誰かがこの子達を利用してなにかしている?
孤児院から逃げ出してきたなら
たぶん私からも逃げるだろう。
だめだわからない。
ともかく一旦離れよう。
もしかしたらさっきのアリアの声や、
争った音くらいは誰か聞いているかもしれない。
憲兵に見つかると面倒な事になる。
私は外出禁止の身なのだ。
男達を魔法で縛り上げて、
大通りの隅に転移させてその場を離れる。
憲兵に突き出すべきだろうけど、
流石にそこまで迂闊な真似もできない。
これだけの人数を返り討ちにしたのだから、
私の事も聞かれるだろう。
身分証の提示を要求されたらアウトだ。
あれならすぐに憲兵も駆けつけるだろう。
罪に問えるかはわからないけど。
歩きながら質問を続けてみる。
「二人の家族は?」
「いないよ・・・」
「どうして?」
「捨てられちゃった」
「そう・・・」
「お姉ちゃんも捨てちゃうの?」
まだ拾ったつもりは無いんです・・・
そんな事を言われたら放り出せ無いじゃない。
まあ、もうそんなつもりは無かったけれど。
どうしよう。
やっぱり孤児院を探して保護してもらうべきだ。
憲兵にお願いしても拒絶されるだろうし。
「他に仲間は?」
「いないよ。皆どっかいちゃった」
「皆って?」
「一緒に暮らしてた皆」
「一緒にって孤児院?」
「そう。だけどなくなちゃった」
そっちか・・・
アリアの話しを整理すると、
家族に捨てられた後、孤児院に入ったのだろう。
服装を見る限りそれも多分貧乏なところだったはずだ。
それでも最近まで皆と仲良く暮らしていたはずだ。
アリアもルカもスレていないのはそのためだろう。
で、孤児院が無くなって放り出されたのか。
他の子達は引き取られたのか、
自分達で生きていく事を選んだのか。
幼い二人の事は面倒が見れなくて放り出してしまったのだろうか。
けど、どの道それだと保護してもらえる可能性は低い。
孤児院が貧乏で潰れるなんて、
しかも他の孤児院に移すわけでもなく放り出すなんて
この地域の保護は期待できるものではない。
それなりに大きい都市だけど、
それだけ孤児の数も多いのだろう。
どうしようかしら・・・
「いっしょに来る?」
「「うん!」」
ノアちゃんになんて説明しよう・・・