表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

186/1353

12-4.会議③:手のひら返し

私はノアちゃんとセレネを連れて、

テントに戻ってきた。



「「ごめんなさい」」


私は宣言通り、二人にお説教をしていた。



「わかったのならもう良いわ。

私達だけの時はいっぱい甘えさせてあげるから、

外では我慢してね」


「「はい」」


「ここからはお説教ではないのだけど、

少しだけ、この前の話の続きね。

二人共自分たちが暴走している自覚はある?」


「「・・・」」


「ノアちゃんは外ではちゃんとしていたよね?

けど、私を好きになってから我慢できなくなった。

今日の事や、この前ギルド長さんの前でくっついていたりとかね。

これは本当に正常な事だと思う?」


「・・・そうですね。

自分の心を抑えられていないのはわかります」


「そうね。

自分の心のままに行動したらダメな理由もわかっているわよね?

少なくとも前のノアちゃんはわかってた。

それが出来なくなってしまったのよね?

これは私が今の二人の気持ちを受け入れられないのにも関係がある事よ?」


「はい・・・」


「セレネも同じことなの。

前は私達に対してもしっかりしていたのに、

ここ数日、勢いで行動しすぎよね?

セレネの本心が見れるのはとっても嬉しいけれど、

それだけではいつか誰かを傷つけてしまうかもしれないわ。

前にノアちゃんに言い過ぎてしまった事もあったでしょう?

あれだって積み重ねればいつか本当に嫌われてしまうのよ?」


「そうね・・・」


私は二人を抱きしめて続ける。



「今の二人は感情を持て余しているの。

けれどそれは当たり前のことなのよ。

決してパスが原因ではないの。

誰もが経験する事なの。

そうやって失敗して大人になっていくものなの。

だから二人もちゃんと出来るようになるから。

不安にはならなくて良いからね。

私は二人が失敗しても絶対に離れたりしないからね」


「「はい」」


「じゃあ、少し休んで戻りましょうか。

今の二人の顔を皆に見せるわけにはいかないわ。

いつも通りの可愛いお顔に戻るまで楽しい話をしていましょう」


「「うん!」」






----------------------






「ごめんなさい。遅くなったわ」


「皆も揃っているわね。

それじゃあ、会議を続けていくのだけど、

ここまでで何か言いたいことはある?

休憩中に話題に上がった事とかでもなんでも良いわ」



「ならば、私から提案させてもらおう。

結論から言うならば、

ここに国を興そうではないか。

君は初代国王として国を導きたまえ」



「グリアはなんでそう思ったの?」



「アルカ君。これから我々が挑むのは国同士の争いだ。

これはもう揺るがない事だ。

なんせ、我々が何もしなくとも敵から向かってくるのだから。

立ち向かうには同等の存在になる必要がある」


「現状我々はバラバラだ。

暫定とは言え、

指導者である君にそもそもの帰属意識など無い。

各組織に強い繋がりも無い。

無い無い尽くしの寄せ集め集団だ。

そんな事では立ち向かえないのだよ」



「一応回避する手段はあるじゃない。

自給自足を実現して、転移装置を破棄すれば少なくとも安全に暮らせるわ」



「それは不可能だ。

技術や時間的な問題もあるがそうではないとも」


「国は、人は一人では生きていけないのだ。

完全に外部との接触を絶ってしまえばそこには滅びしかないのだよ」



「いずれ開国する事を前提とした鎖国にしたらどう?

この町の力が足りていないのも、

私達がバラバラなのも時間があればなんとかなるかもしれないわ」



「君がこの町に骨を埋める覚悟ならあるいは。

けれど、そうではないのだろう?

君以外に外部との接触手段が存在しない以上、

君がいなくなれば力を付けるどころでは無くなるさ」


「脅威を知らず、敵も見えない状況で頑張り続ける事などできはしないのだよ。

いずれは気力を失い朽ちていくだけさ」



「けれど実際にこの国は六百年もの間孤独に耐えたじゃない」



「それも時間の問題だったではないか。

六百年あっても技術は失われていく一方だ。

誰か転移装置の修復が出来る者がいるかね?

魔物除けは?それらが失われればこの町はお終いだと言うのに。

誰か一人でも技術を得ようとし続けた者がいるのかね?」



「そうね・・・」


「わかった。グリアの言う事は最もだわ。

皆はグリアの意見にどう思う?

賛成でも反対でも何でも良いわ」



「アルカ。我々は既に全員が賛成している。

先程の休憩中に話し合っていたのだ。

議長を除け者にしたのは悪いがな」


テッサのギルド長がそう告げる。



「つまりもう外堀は埋めてあるわけね」



「会議とは本来そうするものだ」



「耳が痛いわね。

グリア、貴方が主導したの?」



「君には悪いと思ったがね。

時間を稼ぐと安請け合いしてしまったが、

想像以上に事態は切迫している。

力が及ばず済まない」



「いえ。グリアのせいじゃないわ。

最善の手を考えてくれているのだもの。

謝る必要なんて無い。

けれど・・・」


「やっぱり一国を背負うなんてそう軽々と決断は出来ないわ。

例え一時的なものだとしてもね」



「悪いがそう時間も無いんだ。

悩んでいる時間すら」


私はテッサのギルド長に向き直る。



「そうは言うけど、

あなたギルド本部側の立場でもあるのでしょう?

冒険者に国を興せなんて唆して良いの?」



「言いわけあるか!

それに個人的にもアルカにそんな事をさせたくはない。

だが、他ならぬアルカの望みだ。

この町を救うことは。

そのために必要な事を提示しているだけだ。

心配せずともギルドの事はなんとかしてやる」



「・・・そう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ