12-3.会議②:紹介②
「この人はドワーフ爺さん。
名前は私も知らないわ。
まあ、見ての通りドワーフのお爺さんね」
「へパスじゃ」
「え?」
「儂の名じゃ」
どういう心境の変化だろう。
この町でドワーフ爺さんと呼ばれるのに何かあったのかな。
まあ、国を滅ぼした因縁の相手が興した町だ。
いろいろと思う所はあるのだろう。
「ドワーフ爺さん改め、へパス爺さんね。
爺さんにはこの町の環境改善を監修してもらうわ。
町の設備や魔道具の修理、改良なんかもお願いするけどね」
「けれど一番重要なのは食料の事よ。
この町が今後自立していくためには食料の確保は必須事項なの。
この町を自給自足出来るように改善してもらうのが最大の目的よ」
「これには町の人達やルスケア領兵達にも協力してもらうわ。
ルスケア領兵達は働き次第では開放して元の土地に帰してあげるからしっかりね」
「は!粉骨砕身尽力致します!」
この場にいない領兵を代表して領主が答える。
私達の町のピレウス支部のギルド長がまた頭を抱えてしまった。
可哀想に。頭痛かな?
優しさが足りてないんじゃない?
「次に、テッサ支部のギルド長さんね。
彼女にはギルドの代表として私達とギルド本部との折衝をお願いするわ」
「実質的には当面の間、彼女が対外的な代表よ。
私達はギルド以外と可能な限り交渉の場自体を持たないことを目指すわ。
だから、外界との窓口となるギルド次第で今後の方針は大きく変わる事もあるから注意してね。
最悪、ギルドすら敵に回る事を想定して動く必要があるの」
少し脅し過ぎかしら。
とはいえ事実だ。
ギルドが敵に回ればこちらの人員も半減する事になるだろう。
テッサ支部もピレウス支部も手を引かざるを得ないのだから。
私が強引に領兵を放り込んだのはこの辺りの事もある。
使える者は使っていかないと万が一に備えられない。
「さあ、どんどんいくわよ」
重くなりかけた空気を払拭するように声を出す。
まさか私がこんな大勢の前で喋れるようになるとは。
まあ、どうせまたオフモードになったら戻るんだろうけど。
「次は、元ルスケア領主
私の直接的な部下ね。
彼の下には三十人程の兵士達もいるわ。
基本的には各部署の補助が主な役割ね。
元領主として、指導者としての知識も教えてほしいわ。
場合によっては国に戻ってもらっていろいろやってもらいたいと思っているの。
頼りにしてるから頑張ってね?」
「は!恐悦至極に存じます!」
私が語りかけると、
領主は涙まじりに答えた。
・・・え?
何で?
それは悔し涙的なやつ?
憎き怨敵にこき使われている現状を憂いて?
違うの?純粋な喜び?
なんで?いみわかんない。
いや、まあ、
もうそういうものとして散々こき使っておいて今更なんだけども。
よっよし!
気分を切り替えて次に行こう。
「次は、
この町の元々の管理者の一人であるマーヤさんね。
管理者達をまとめてもらうわ。
後、グリアの補助ね。
この町の事には誰よりも詳しいから、
ギルドの人達とのやり取りも多くなると思うの。
もろもろ宜しくね」
「御意!」
なんて?
「そっその次は、町の代表であるダーナさんね。
ダーナさんには町の人々の取りまとめと、
へパス爺さんの補助もお願いするわ。
これからこの町は大きく変わっていくわ。
町の人々から不満や不安も沢山出てくると思う。
大変だけど、改めてどうか宜しくね」
「はい。始祖様に連なる方にお供できるならこれほど名誉な事はございません。
それに、少なくとも貴方が真剣にこの町の現状を憂いているのは伝わりました。
これから我々にとって困難な時代が訪れるのでしょう。
けれど変革の時を否定せず、ありがたいことと受け入れて参ります」
「それは良かったわ」
「最後にピレウス支部のギルド長と、
その補佐エイミーよ。
彼らには今のところ役割は無いけれど、
今日の会議を通して状況を共有したいと思ってる。
そして可能であれば助力して欲しい。
正直私の我儘で巻き込んでしまって心苦しいけれど」
「今更そんな事は気にするな。
あのピレウスの町がどれだけお前に救われたと思っているんだ。
まさかその町を何度も滅ぼしかけた男まで味方にしているとは思わなかったがな」
「私もできる限りの事はさせてもらう。
それはそれとして、
後でアルカには個人的な話があるから時間を空けてね。
これはお姉ちゃんとしてのお願いよ」
エイミーさん?
何か叱られる事しましたっけ?
まさかノアちゃんとセレネの事?
私の言う事信じてくれないの?
まだ何もしてないって!
ちゃんと我慢したから!
「逃げちゃダメよ?」
「えぇ・・・」
お願いって言いませんでしたっけ?
結局強制じゃない!
大丈夫・・・
エイミーならきっと話せばわかってくれる・・・
二人に余計な事を言わせないように気をつけよう。
「それじゃあ、これで顔合わせが済んだわね。
一旦休憩を挟むから、各々でも話をしてみてね」