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12-1.既成事実

「セレネダメよ。もう触らせないわ」



ようやく一日が終わり、

私達は昨日と同じように露天風呂に浸かっていた。



「横暴よ!

ノアには許しといてそんなのあんまりじゃない!」


「だってノアちゃんはまだそこまで理解していないもの」


「ぐぬぬ!ノアに私の妄想を送りつけてやる!」


「止めなさい!

というかセレネ開き直りすぎじゃない?

なんかもう性格まで変わってるじゃない!」


「仕方がないの。

ただでさえ聖女の想いを継がされた上に、

組織のトップになるには必要な事だったから・・・」


「セレネ・・・」


「アルカ騙されないで下さい。

いくら何でもチョロすぎます。

セレネの言い分自体は事実でしょうけど、

言い方には作為を感じます」


「ノア!どうして言うのよ!

互いの感情は言わないんじゃ無かったの!?」


「これは表層から読み取れる事を指摘しただけです。

感情を視るまでもありません!」


「うぐ・・・」


「セレネは私達の事を甘く見すぎです。

私達だってセレネの事を良く見ているんです。

いつまでもそんな手は通じませんよ」


「わかった。もうしないよ」


「それはそれとして、

妄想って何のことですか?

アルカの胸を触ろうとした時の堪えきれない不思議な感情が関係あるんですか?」


「ノアちゃんダメよ!

まだそれを知る必要はないわ!

それを知ったらお腹も触らせないからね!」


「!?

セレネ!その感情を送ってきたら嫌いになります!」


「無茶言わないで!

どうしようもなく湧き上がるものなの!

自分で制御しきれないのよ!」


「知りません」


「ノア!お願い!嫌いにならないで!」


「すみません。言い過ぎました。

嫌いにはならない代わりに、

セレネがその感情を持ってアルカに接する時は警告する事にします。

どうやらアルカはその感情を向けられたく無いようなので」


「ノア!?

それは残酷よ!酷すぎるわ!

それにその認識は間違ってるの!

その感情は向けられたくないんじゃなくて、

向け続けられるとアルカがどうして良いかわからなくなるだけよ!

この方向なら押し切れるかもしれないわ!」


「セレネ!何言ってるのよ!

そんな事ないわ!

まだ二人には早いの!」


「ほら、アルカの顔が真っ赤になったでしょ?

今が押し時だわ!ノアもとりあえず抱きつきなさい!」


「セレネ!

良い加減にしなさい!」


私はセレネを転移で露天風呂の離れた所に飛ばす。



「ごめんなさい。もうしません。

だから側にいさせて下さい」


「ごめんねセレネ。

セレネの気持ちもわかっているのだけど、

本当になし崩しにされるわけにはいかないの。

辛いだろうけどもう少しだけ我慢していてね」


私は戻ってきたセレネを抱きしめる。



「二人は最近喧嘩しすぎじゃないですか?

どうして仲良くできないんです?」


「何言ってるの?

大好きだから喧嘩するんじゃない。

大好きだからやりすぎてしまうの。

相手を独占したいと思うの。

時によっては相手の気持ちすら無視してね」


「それはわかりますけど・・・」


「だからと言ってセレネはやりすぎよ。

そこまで欲望に忠実だとは思わなかったわ」


「あっアルカそれは・・・」


「私が今までどれだけの思いで!」


その後またセレネが荒れた。


今日だけでセレネの初めて知る姿がいくつあったのだろう。

セレネは本当にいろいろな物を抱え込んでいたのだろう。

よく今まで私に隠し通してきたものだ。


きっとセレネは聖女の想いを継いだことで、

その恋心までも知ってしまったのだろう。

その想いに魅せられてしまったのだろう。

もしかしたらセレネもきっかけは他者に引きずられた恋心なのかもしれない。


多分あの試練の前のセレネは私のよく知っているセレネだった。

試練とその後の教会での日々がセレネを別人のように変えてしまったのだろう。

私のためになりたくて。私を喜ばせたくて。


けれどそれでも私はセレネに厳しくするしかない。

既成事実にされるわけにはいかない。


本当に私の理性は保つのかしら・・・


こんな大きな想いをぶつけられ続けたらどこかで踏み外してしまいそう。

私は変わらずセレネの事も大好きなのだから。


心を強く持たなきゃ。




それにしても、

あんな事があってもすぐに元に戻ったノアちゃんは凄いのかもしれない。

もしくはまだ完全には理解していないのかもしれない。

セレネの感情に引きずられて無理やり成長した恋心はまだ根付ききってはいないのかも。


今のうちに軌道修正するべきだろうか。


・・・無理ね。

二人の未来を奪わないと決心はしたけど、

二人を私から遠ざける事は出来ない。

私が耐えられるわけがない。

これでも人として、

親としては最低なのかもしれない。

けど・・・それでも。



「「アルカ!」」


私は二人の声で埋没していた思考から引き戻される。



「どうかしたの?」


「「大好き!」」


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