11-18.続・家族会議x
私は一人、取り残されて考える。
二人の気持ちは驚いた。
二人からそんな風に見られるとは思ったことも無かった。
けど、別に嫌なわけじゃない。
二人の言うように、
一生側に居ろと縛り付けるのだから、
いつかは受け入れるべきなのだろう。
その言い分はわかる。
私の勝手で縛り付けるのだから。
けれどやっぱり今はだめだ。
二人はまだ11歳だ。
いくらなんでも幼すぎる。
セレネの事にも驚いたが、
ノアちゃんは二ヶ月程前までそんな事は考えた事も無かったはずだ。
パスの影響でセレネの感情を知ってしまったのだろう。
早熟なセレネに引きずられたのだろう。
パスが無くなったからって、
二人の気持ちが無くなるなんて思っていない。
一度得たものは失われたりしない。
私はまだ家族に会いたいと心の底から思っているのだから。
顔も思い出せないのに愛しいと思っているのだから。
二人が他の人達と知り合ったからって、
仲良くなったからって、
いつか私の元を離れてしまうとはもう思っていない。
私だって二人を取り戻すためになんでもやるだろう。
二人を幸せにできるのは私だけだと証明してみせるだろう。
セレネの言うように、こんな悩みに意味は無いのかもしれない。
けれど。
それでもダメだ。
せめて二人が一人前になるまでは。
せめて二人が一人で考えられるまでは。
私がそんな事を認めるわけにはいかない。
二人が心の底から望んでいても。
叶えることで幸せに出来るとしても。
それだけは叶えてあげることは出来ない。
選択肢を無くす事は出来ない。
二人の想いが失われる事は無くとも、
それ以上の想いを抱くことはあるかもしれない。
私が二人をどれだけ必死で捕まえても、
それでも旅立つ事はあるかもしれない。
そんな選択肢を今の時点で潰すわけにはいかない。
私がそれをどんなに望んでいなくとも、
二人もそれを望んでいなくとも。
私にとって一番大事なのは二人の幸せなんだから。
二人が未来を選べる道を残すのは私の役目だ。
これだけは最低限の努めだ。
二人が私にそんな役目を望んでいなくとも、
これだけは譲るわけにはいかないんだ。
それを捨ててしまえば、私達は堕ちるだけだ。
人として最低限守るべきものはあるのだから。
私の心は決まった。
もう狼狽えたりしない。
----------------------
私達は再び集まった。
「結論から言うわ。
私は二人の想いを受け取る事はできない。
それはまだ二人が幼いから。
二人が自分一人だけで考えていないから。
だから、条件は三つよ。
二人が15歳になる事。
二人のパスが解消される事。
いつか二人が私以上に優先したい存在が出来ても
家族でいてくれるのを約束する事」
本当の想いは説明しても理解できないだろう。
それは私も求めていない。
年齢はこの世界の成人年齢に合わせた。
二人もそれ以上は納得しないだろうし。
「「・・・」」
「それでも良い?」
「年齢と家族で居続けるのは問題ないですが、
パスの件は難しいですよね?
皆目見当がつきません」
「年齢ももう少し下げて欲しいのだけど・・・」
「セレネ。そこは私達が頑張りましょう。
アルカが我慢できなくなれば済む話です」
「ノアちゃん?あまり妙な事はさせないわよ。
もう二人の気持ちは知ってしまったのだから」
「うぐ・・・」
「ノアはまだまだね。
そんな事は口にしないものよ」
「・・・セレネは腹黒ですからね」
「ノア!?」
「はいはい。セレネの行動にもしっかり注意するわ。
パスの件は正直なんとも言えないわね。
そもそも何で繋がってるのかもわからないし」
「無茶な条件をつけて遠回しに断わるのはよくないと思うの」
「セレネは本気で私がそんな事を考えていると思うの?」
「ごめんなさい。
思い通りにならなくてムキになりました。
そんな事思ってないの」
「そうね。あまり意地悪な言い方はしちゃダメよ。
セレネは賢いのだから相手の気持ちもわかるでしょう?」
「そんな言い方はあんまりよ!
私達の気持ちを躱しといて言うことじゃないわ!」
「そうね。言い過ぎたわ。ごめんなさい」
「はい。二人共これで仲直りです。
二人共カリカリし過ぎです。
いろいろあって緊張しているのはわかりますが、
私達は仲良くあるべきです。
それが発端の話し合いです。
喧嘩なんかしてたら本末転倒です」
「「はい」」
「一旦話しは終わりにしてリラックスしましょう。
お茶を入れてきます」