11-17.家族会議x
「私は!
・・・セレネの所に行って下さい。
喋りすぎました。行かないと・・・」
「わかった」
私はノアちゃんを抱きしめたまま、
セレネの元に転移する。
セレネはテントの前にいた。
私達を待ち構えていたようだ。
リヴィは横でひっくり返っている。
お昼寝中のようだ。
「リヴィに何をしたんですか?」
え?
「ちょっと眠くなるようにしただけよ。
危害なんか加えないわ」
「そうですか」
え?なんで!?
セレネはテントに入って席についた。
ノアちゃんも続いたので、
二人に合わせて私も席に着く。
「それで?
ここに来たということは決着を着けるの?」
「その前にごめんなさい。
勢いで言ってしまいました」
「大丈夫よ。
アルカはまだ完全には事態が飲み込めていないんじゃない?
今ならまだ止められるかもしれない」
「・・・それはそれで嫌ですね。
それに落ち着けば流石にわかってしまいます」
「まあ、そうよね。
勢いとはいえね・・・」
「「アルカ」」
「っはい」
「「私達はアルカが好き。
家族として以上に」」
「・・・え?それって・・・」
「「私達はアルカの一番になりたい。
二人で同じじゃなくてどちらかが!」」
「・・・何を言っているの?」
「ここまではっきり言ってもそんな反応だなんて。
少し悲しいわ」
「わかっていた事です。
本当はもっとゆっくりアルカの意識を変えていくつもりだったんですが、
私のせいで・・・」
「まあ、仕方ないわ。
ノアの感情は伝わってきたもの。
あんなの我慢できるわけないわ」
「アルカ酷いんですよ!
私達の事は逃さないって言うくせに、
あんな魔法まで作っちゃうくせに、
私達の気持ちと違うんです」
「そうね。本当に酷い。
私達はもう一生アルカから離れられないのに、
アルカは恋もさせてくれないんだから」
「一生側にいてくれるならそこまでして欲しいものですね」
「ね~」
「「アルカ?わかりましたか?」」
「・・・二人の気持ちはわかったわ。
けれどそれは・・・」
「私達の気持ちを疑うんですか?」
「そうじゃないけど・・・
あなた達は今、正常じゃないの。
あなた達の年頃ならそんな風になる事もおかしくはないし、
その上でパスなんてものが繋がって二人分の感情が合わさって過剰になっているのよ?
そんなのは正常な判断ではないわ」
「驚いたわ。パスの事をそこまでちゃんと知ってるなんて。
私達以外にこの感覚は正確には伝わらないと思っていたのに。
それだけ普段から私達の事を深く考えてくれているのね。
わかってはいたけど、とっても嬉しいわ」
「けれどね。それは違うの。
少なくとも私はパスが繋がる前からこうだったのだもの。
もちろんノアに影響されていないわけじゃないけどね」
「私は最初はセレネに影響されてですが。
それは単に好きの違いがわかっていなかっただけです。
セレネの感情を知って自覚しただけなんです。
その上でアルカが好きなんです!」
「・・・無理よ」
「「私達の事嫌い?」」
「そんなわけ無いじゃない」
「「私達は一生恋は出来ないの?
私達にはアルカしかいないのに?」」
「それは・・・」
「あんな魔法を生み出してまで、
私達を手放すつもりは無いのでしょう?」
「そうだけど・・・」
「何が問題なの?
アルカが私達をそんな風には好きになれないの?」
「・・・そんな事・・無いと思う。
考えた事は無かったけど」
「「じゃあ!」」
「違うの!
そうじゃないの!
少なくとも、まだあなた達は幼いの!
それを判断する人生経験が足りてないの!
私があなた達を縛り付けたから!
本当はもっと沢山の人達と出会って生きていくものなの!
もっと自由な時間を過ごすものなの!」
「それに、やっぱりパスがある限り、
二人の感情が影響し合っている限り受け入れるわけにはいかないのよ!」
「「・・・」」
「私はあなた達の気持ちを嬉しく思っているけれど、
だからこそ今あなた達の言葉を受け入れるわけにはいかないの」
「・・・ごめんなさい。
少し落ち着かせてくれる?
私だけじゃなくて二人もよ?」
「そうね・・・
ちょっと急すぎたものね」
「ごめんなさい。
私のせいで」
「もうそれは良いって言ったわ」
「はい・・・」
「アルカの言っている事がおかしいとは思わないし、
心の底から私達の事を思ってくれているのは嬉しいけど、
それって結局関係ないんじゃない?」
「私達は三人とも一生側にいるんですから。
その選択を後悔するつもりなんて無いんですから」
そう言って、二人は席を立った。