11-15.ほっぺ?
私はノアちゃんと町エリアを見て回る。
他にも下階層への入口とか、
見落とした魔道具とかが無いかを調べていくのだ。
一通りの安全確認が終わって、
ギルド側の体勢も整ったら、
町の人達にも説明会をしなければ。
現状は知らせずにおいて済む話ではないのだし。
そんな事を考えながら町を歩いていると、
ノアちゃんが質問してきた。
「昨日セレネが変わったことをしませんでしたか?」
「どうだったかしら?
それがどうかしたの?」
「いえ、昨日は結局口を割、ごほごほ、失礼。
昨日はセレネがやたら嬉しそうだったので」
口を割らせようとしたの?
これ答えちゃダメなヤツなんじゃない?
少なくともセレネは誤魔化したのね・・・
どれの事だろう。
夕日の事は隠す必要も無いだろうし、
グリアの話しを聞いた後に、
私を励ましてくれた時かな?
けど、別にノアちゃんが気にする程の・・・
もしかしてあれのこと?
「ノアちゃんが気にしているのは夕方とちょっと前に一回ずつあった事?」
「やっぱり何かあったんですね!
さあ!教えて下さい!」
げ!つい気になって質問してしまった!
マズい!何か知らないけど、この事は、
キスの事は誤魔化さないといけない気がする!
「・・・セレネが内緒にしたのでしょう?
それを私が話すのはフェアじゃ無いんじゃない?」
「ぐっ!セレネみたいな事を言いますね!」
まあ、ちょっと参考にさせてもらったし。
「昨日セレネにも言ったのだけど、
なにかやりたいことがあるのなら、
遠慮なく言ってね?
私は二人が喜ぶことなら何でもやりたいの」
「何でも?本当に何でも良いんですか?」
「そう念押しされると困ってしまうわね。
けど、ノアちゃんの事を信じてるもの。
誰かの迷惑になるような事は頼まないものね。
良いわ。何でも言って!」
「・・・そんな言い方されたら」
「さあ!遠慮しないで!
ノアちゃんの頼みなら何でも聞いちゃう!」
「・・・じゃあ、キスして下さい」
「え!?」
「良いです!やっぱなしです!」
私はそっぽを向いたノアちゃんの頬にキスをする。
「え?なんで?
あれ?ほっぺ?」
ノアちゃんは混乱した。
真っ赤になってうずくまるノアちゃん。
なにかがクリティカルヒットしたようだ。
あれ?
ちょっと予想外。
自分で頼んでこんな反応をするとは。
私が絶対にしないと思ってたのかな?
ノアちゃんもセレネがした事を知ってて頼んだんじゃ無いのかな。
でも、そうするとセレネが隠したのは何のことなんだろう。
だめだ、良くわからない。
こんな時にノアちゃんに声をかけても良いのだろうか。
ノアちゃんはまだしゃがみこんだままだ。
どうしよう・・・
「ノアはどうかしたんか?」
そこにドワーフ爺さんが現れた。
ドワーフ爺さんの声を聞いた瞬間、
ノアちゃんは跳ね起きて逃げ出した。
「お前さんなんかやったんか?」
なんでちょっとキレてるのよ!
可愛い孫娘に避けられたからって八つ当たりしないでよ!
「思春期なのよ」
「・・・そうか。
まあそれは難しいな」
爺さんまともに人付き合い無さそうなのに、
六百年縁の無さそうな概念わかるのね。
「お前さん失礼なこと考えとらんか?」
「そんな事無いわよ。
悪いけど、私はノアちゃんを探しに行くわ」
「ああ、そうじゃな。行ってやれ」
私はその場を後にした。