11-14.支配者
私達は先遣隊を連れて、
幹部エリアを訪れる。
拠点にする部屋を片付け終えると、
再びギルドに転移して荷物を運び込んでいく。
今回は収納魔法は無しだ。
不必要に不特定多数に手の内をさらすわけにはいかない。
どこから情報が広がっていくかはわからないのだから。
まあ、今更な気もするけれど。
そうして作業をしている内にあっと今に午前中は過ぎていった。
その後、私とノアちゃんは拠点に戻って、
また皆で昼食を食べた。
セレネはリヴィと遊び回っていたようだ。
服が泥だらけだ。
仕方がないので、ついでに露天風呂のお湯も張り替えた。
セレネもリヴィも大はしゃぎだ。
「二人共油断しすぎないようにね!
結界があったって、何があるかわからないんだから。
それに長風呂で風邪引いたらダメよ?
ちゃんと温かい内に上がって、
しっかり拭くこと!良い?」
「はい!」「キュイ!」
うん。いい返事。
・・・本当に大丈夫かしら?
その後は、もう一度ギルドに向かった。
ギルド長さんも来るので迎えに来たのだ。
「ついでじゃないけど、捕らえた管理者達も受け渡したいんだけど良いかしら?」
「二十人程だったか?
全員は支部だけでは受け入れられない。
一部ずつで構わないか?」
「それに可能ならば、話を聞き終わった者から
順次町に戻していきたい。
今後の事を考えるなら、
先行して使っている者達のように、
人格に問題ない者は町の運営にも関わらせるべきだろう。
ただでさえ人手が足りてないんだ」
「そうね。
リスクもあるけど必要な事ね。
元々運営していた人達の経験は必要だわ。
良いわ。一先ずまともそうな人から五人ずつ受け渡すから」
「助かる」
私はルスケア領主達の島に転移門を開き、
上から順に優秀でまともそうな人を五人引き渡すようにお願いする。
「「「「「御意!」」」」」
「お前!・・・私兵まで持っているのか!」
その光景を眺めていたギルド長さんが驚いていた。
「ちょっと成り行きで保護しているだけよ。
なんか信仰されちゃったみたいだけど」
「信仰?何を言っているんだ?
ともかく、絶対に他の者には見られるなよ!
Sランク冒険者が軍隊まで所有しているなんて知られたら、
最悪、世界が敵に回るぞ!」
「そうね。気をつけるわ」
「お前は迂闊だから心配なんだ。
町の管理者達も口止めしておかねばならんではないか」
「えっと・・・
多分必要無いんじゃないかな~」
「何を呑気なことを言っている!
本当に状況がわかっているのか!」
「良いから。見てればわかるわ・・・たぶん」
一人のルスケア領兵が五人の管理者を連れてきた。
誰も拘束すらされてはいない。
兵が私の前で跪くと、
管理者達もそれに続いた。
「ほらね?」
「・・・意味がわからん」
「実は私もなの」
私は管理者たちに向き直る。
「悪いけどギルドの調査に協力してくれる?
妙なことをしなければ危害は加えないわ。
なぜあなた達が捕まっているのかも、
ギルドから説明があるから」
「「「「「御意!」」」」」
管理者達は素直にギルドの職員に案内されてその場を去った。
その姿はどう見ても捕虜ではない。
ギルド長さんは最後まで唖然としていた。
「というか、お前説明すらしてないのか!?
何で彼らはそれで従ってるんだ!?
まるで意味がわからんぞ!」
多分、ルスケア領主達が判断するまともそうな人って、
入信した人たちじゃないかしら。
何か妙に素直なのよね・・・
というか、この調子だと
管理者達が全員私を信仰するの?
私に支配する意思が無くても勝手に町の支配者になっちゃわない?
まさかグリアに言われた事がこんな形で現実味を帯びてくるとは思わなかった。
外堀を埋められる前になんとかしなくちゃ・・・
もう手遅れかしら・・・
いっそ領主ごと放り込んで代理統治してもらう?
仮にも元領主なら教育くらい受けてるんじゃない?
でも、貴族としての立場は国を止める為にも使えるかも知れないしな~
何かあの人立ち回りだけは上手そうなんだよな~
あれ?
何で私あの逆恨み領主を重用しようとしているの?
どうしてこうなった・・・
「まあ、素直に話してくれると思うから、
良しとしましょうよ」
「言いわけあるか!!!」
ギルド長さんは荒れた。
その後、暫くしてからようやく地下の町に転移する。
ギルド長さんは午後いっぱいは時間を空けたので次は夕方頃に送り返す事になった。
ここで先行して協力していた管理者達は、
先遣隊とギルド長が面談していった。
あまりにも誰も彼もが素直に喋ってくれるので、
ギルド長さん達はかえって困惑していた。
まあ、後は任せて私はノアちゃんと町の再調査に行くとしよう。