11-13.ロリコン
目覚めると私は一人だった。
既に二人と一匹は起きて活動しているようだ。
ノアちゃんは料理かな?
いい匂いがする。
セレネはリヴィと遊んでいるのかな?
今はノアちゃんが近くで料理中だからか、
近くからセレネ達の声は聞こえてこない。
きっと邪魔をしない為に離れた所で遊んでいるのだろう。
今日はギルドに行かなければならない。
まだ人は揃っていないだろうけど、
いろいろ打ち合わせがあるのだ。
場合によっては拠点設営のための物資運搬もあるだろう。
忙しくなりそうだ。
私は身支度を整えて、
ノアちゃんの手伝いに向かう。
「おはよう。
今日はノアちゃんの番よね。
朝ご飯食べたらギルドに行きましょうね」
「はい。おはようございます。アルカ。
もう準備出来るので並べるのを手伝って下さい」
「いつもありがとう。ノアちゃん
すぐに準備するわ」
私はテーブルに食器を並べていく。
ノアちゃんは料理をよそっていく。
いい匂い。
「「「いただきます!」」」「キュ!」
家族皆で仲良く朝ご飯。
幸せだ。
「今日はセレネが待っていてくれるのよね?
お昼頃には一旦戻って来るつもりだけど、
遅くなっちゃうかもしれないわ。
ここに保存食もあるからね」
「うん大丈夫!」
私は食事を終えて、
ノアちゃんと一緒にギルドに転移する。
「聞いて良いのかわからんのだが、お前たち何かあったのか?」
ギルド長さんと会議室で話をしていると、
突然ギルド長さんがそんな事を言い出した。
「何が?」
「いや・・・お前たち妙にベッタリだな」
ああ、
そうよね。変よね。
正直私もよくわかってないのよ。
今、ノアちゃんと一緒にソファに腰掛けているのだが、
ノアちゃんは私にぴっちりくっついていた。
ノアちゃんが人前でこんな事をするなんて初めてのことだ。
昨日の事をまだ引きずっているのだろうか。
「気にしないで下さい。特に問題はありません」
ノアちゃんがそう答えると、
ギルド長さんは私に視線を移す。
私は肩を竦めてわからないと意思表示する。
「まあ、嗜好は人それぞれだからな・・・
けど流石にどうかと思うぞ?」
あれ?
何も伝わってない?
なんか私がノアちゃんに手を出したと思われてない?
「そんなわけ!」
「大丈夫ですアルカは正常です。
特に咎められるような事はしていません」
私の言葉を遮って、
ノアちゃんがフォローなのか何なのかわからない事を言う。
今最後にちっさく「まだ」って聞こえたわよ?
まさかノアちゃんまで私のこと疑ってるの!?
ノアちゃんは私の最大の秘密を知っている。
ノアちゃんには私が犯罪者予備軍に見えているのかもしれない・・・
信じて・・・
そんな事しないわ。
大事な愛娘に手を出すわけ無いじゃない!
「そっそうだよな。
悪い。妙なことを言ったな」
結局ギルド長さんは流すことにしたようだ。
深堀りしても得は無いしね・・・
え?
疑いはちゃんと晴れてるの?
まだ私の事犯罪者だと思ってない?
Sランクのアルカはロリコンだ、
なんて噂が流れたらあなたを疑うわよ?
私の内心等気にせず話は進んでいく。
ノアちゃんは指摘されても私から離れず話を続けた。
私も諦めて話に参加する事にした。
予想に反して、
既にギルド長は先遣隊を準備していた。
グリアと一緒に町の状況を把握する為の人員だ。
ギルド長さんは私の目的も知っている為、
町の維持にも協力するつもりらしい。
「では、先遣隊を頼む。
本隊は一月はかかるだろう。
今回の件は本部の動きが鈍い。
既に横槍が入っているようだ」
「そんな早いの!?
だってまだ二、三日しか経ってないじゃない!
もう横槍入れてくる国があるって、
どうやってそんなに早く連絡取るのよ。
スパイだってそんな手段持ってないでしょ?」
この世界に電話なんて無い。
唯一存在するギルドの通信システムだって、
そんな手軽なものじゃない。
そもそも国からギルドへの横槍だって、
そんな簡単に出来るものではないはずだ。
「ギルド支部側にも潜り込んでいたのだろう。
本部と支部で人員がいれば通信システムを使うこと自体は不可能じゃない。
どうやったのかまではわからんがな」
「それにしたって・・・」
「アルカ。その件はここで議論してもあまり意味はありません。
グリアさん達が対抗する為に頑張っています。
今は少しでも早く先遣隊を送った方が良いはずです。
協力して備えるしかありません」
「そうね。ノアちゃんの言う通りだわ。
ごめんなさい。
行きましょう」
私はノアちゃんと先遣隊を連れて、
再び地下の町に転移した。