11-8.聖女と探索
「さて、続きを始めましょう!
まだまだ見ていない所はいっぱいあるのでしょう?」
「アルカの決断がどうあれ、
グリアさんも言っていたように、
最低限この町が自立できる手助けは必要よ。
その為にも、まずはこの町を知ることから始めましょう」
「それはきっとアルカの気持ちを見つけるのにも役立つわ。
よく知りもしない相手を心の底から想うなんてできはしないのだから」
「そうね。
行きましょうセレネ」
「うん!」
私はセレネと共に地下空間を探索していく。
幹部エリアはだいぶ手が入っている。
昨日はギルドの人達も来ていたし、
今はグリアも必要な資料を探してくれている。
グリアに整理させるのは不安だ。
誰かに付いていてもらわなくちゃ・・・
ここを制圧した時はあまり細かく見て回る余裕が無かったので、
改めて隠し扉や魔道具等が隠されていないか確認していく。
そうして調べて周りながら、
私はセレネに気になっていた事を質問する。
「セレネはどうしてここに来ることにしたの?
今までずっと忙しかったのに、
そうまでして何かしたい事があるの?
私に出来る事なら何でも言って欲しいの。
私もセレネに恩を返したいから。
それに私がセレネを大好きなことをもっと知って欲しいから」
さっきセレネに言われた事を思い出しながら言葉を付け足していく。
「それは・・・
そう言われては困ってしまうわ。
思わず言いたくなってしまうもの。
けれど、言ってしまうのはフェアじゃないの。
私はノアに酷いことはしたくないのだから」
「ノアちゃん?
セレネが来た理由にはノアちゃんが関係あるの?
二人が私を独占しようとしていることと関係があるのね?
突然二人共どうしたの?
パスが繋がった事と関係があるの?」
「・・・」
「ごめんなさい!
言いたくないって言ってるのに。
今のは忘れて。
冷静じゃなかったわ」
「ありがとうアルカ。
これだけは言っておくね。
私はアルカの側にいたくてここに来たの。
それは私にとって何よりも大事なことなの」
「うん。私もセレネと一緒にいられて嬉しいわ。
セレネがそう思ってくれるのもとっても嬉しい」
「アルカ!」
セレネは私に飛びついてきた。
セレネはスキンシップが大好きだ。
そのまま、セレネは私の頬にキスをした。
「セレネ!?」
セレネはそのまま私の肩に顎を乗せて思いっきり抱きしめてくる。
顔が近すぎてセレネの表情は見えない。
大きな心音。
とっても速い。
どっちのだろう。
暫くそうしてから、
セレネは離れて私の前を歩き出す。
「後でノアに怒られちゃうなぁ」
小さな声でそう呟いたのが聞こえた。
「アルカ!
もうこの階層は良いんじゃない?
危険そうな物は無いようだし、
後は皆に任せてしまいましょう」
少し歩いてから、
セレネは振り返ってそう言った。
「そうね。
上に行きましょう。
次は保管庫のエリアね」
セレネは私の近くに戻ってきて、
私の手を引いていく。
セレネの柔らかくて小さな手。
ノアちゃんとは少し違う。
ノアちゃんの手は剣を握る者の手だ。
「今ノアの事を考えていたでしょ!
アルカ酷いわ!私が一緒にいるのに!」
セレネ鋭い・・・
「セレネの手も柔らかくて気持ちいい。
ずっと握っていたいな」
答えになっていない事を言って誤魔化しを試みる。
「もって言った!
今だけは私の事だけ考えて!
私のことだけを見て!」
「それは無理よ・・・
私は常に二人の事を考えてるのだから」
「だから・・じゃない・・・」
「?なんて言ったの?」
「なんでもない!」