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11-7.聖女のカウンセリング

私はセレネと二人で探索していた。



「アルカはこの町の人達も守りたいの?」



「・・・どうかしら。

そうしなきゃって思ってたんだけど、

グリアに冷静に指摘されて難しいのはわかったの。

それで・・・よくわかんなくなっちゃった」



「それは私達がいるから?」



「それだけじゃないわ。

私は守りたい理由自体が無かったんだなって思っちゃったの」



「そっか・・・

そうだね。

アルカは理由も無く誰かを助けられる人だから。

アルカ自身気付いていなかったんだね」



「何も考えていないだけだわ」




「何も考えずに人助けが出来るなんて凄いことよ?

普通の人は見返りを求めるものなの。

助けたらこんな良いことがあるなって考えて助けるの」


「けれどそれは別に悪いことだけじゃないわ。

この人を助けたら私も嬉しい。

あの人を助けたら私が愛している事を伝えられる。

普通の良い人はそんな事を考えるの。

けれどアルカは違うのね」


「アルカは考える前に助けてしまう。

助けようとしてしまう。

それはとっても素晴らしい事。

誰よりも優しい人。

けれど、アルカに助けられた方は困ってしまうのよ?」




「私を助けてくれたアルカに恩を返したい。

アルカが困っていたら助けてあげたい。

アルカが泣いていたら抱きしめてあげたい。

けれど、アルカはそんな事は求めてくれない。

その前にまたアルカに助けられてしまう。

どんどんどんどん恩だけが増えていって、

感謝に押しつぶされてしまう」


「私とノアは運が良いほうね。

アルカに一緒にいさせてもらえるのだから。

助けさせてもらえるのだから。

抱きしめさせてもらえるのだから」


「けれど他の人達は違う。

この世界は違うの。

アルカがどれだけ助けても、

その人達は、世界は幸せでいられない。

大好きな人が苦しんでいるのを知っていて

何もせずに幸せにはなれない」


「普通の優しい人達はそう思うの。

それはこの世界だって同じこと。

だって世界は人が作るのだから」


「アルカがこの町を助けたとして、

アルカはこの町が恩を返すことを望まない。

そうすればこの町は幸せにはなれない。

その場を凌いでもいつか破滅は訪れる。

返せなかった感謝に押しつぶされる」




「だから、

アルカが守る事に理由を求めるのはとっても良いことよ!

それは誰もが幸せになれる第一歩なの!

アルカが間違った事だなんて思う必要はないの」


「本当は理由がなきゃ助けちゃいけないの。

見返りを求めないで手を差し伸べてはいけないの。

必ずそこには歪みが生まれるものなの。

恩を受け取り続ければいつかは潰されてしまうの」


「アルカ。

優しいアルカ。

アルカの力が足りないのなら私達が力を貸してあげる。

今までの恩を返させてもらう。

だから出来るか出来ないかなんて考えなくて良い。

目指す先がどんなに困難でもいつか必ず辿り着ける。

私達はアルカがどんな道を選んでも一緒にいるから」



「だから、アルカのやりたいことだけをやって欲しい。

それで、皆に恩を返させてくれたらとっても嬉しい。

きっと皆も力になってくれる。

アルカの周りにいるのはそんな優しい人達ばかりなんだから」


「そうすれば、アルカにも自然に理由が出来るから。

助けたい時に助けられる力が湧いてくるから」


「アルカは一人じゃないんだもの」




「セレネ・・・」


「うん」


「ありがとう」


「うん!こちらこそ!」


「私、もう少しだけ考えてみるわ。

セレネは側で見守っててくれる?

私の支えになってくれる?」


「よろこんで!」



セレネが私を抱きしめる。


ふわふわで柔らかくて優しい感触。

セレネの優しさが伝わってくる。


私はもう何度も二人に助けてもらってるよ。

私だって二人に返しきれない恩があるんだよ。


だから私にとってセレネとノアちゃん以上に理由になる存在はいないんだよ。

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