11-2.ギスギス
「本当に大丈夫?」
私達はいつの間にか教会で寝ていた。
ルネルが運んでくれたのだろう。
なんとか立ち上がれるようになって、
準備が済んで様子を見に来ていたセレネと再び地下空間に転移する。
ルネルは行かないらしい。
このまま久しぶりに旅に出るとセレネに告げて出ていってしまったそうだ。
まあ、教会にセレネもグリアも居ないんじゃ、
居続ける意味もないだろう。
今度なにか見つけた時は必ず声を掛ける事にしよう。
もう同じことを繰り返すのはごめんだ。
「大丈夫よ。
さあ、一通り声をかけたら、
今日の所は一先ず近くの拠点で休みましょう。
明日またこっちに引っ越ししてこなきゃね」
私はノアちゃんとセレネを引き連れて、
ギルドから来た人達を一度送り返していく。
グリアと爺さんは早くも魔道具保管庫だった部屋を拠点にすると決めたようだ。
既に寝床も食料も運び込んである。
ギルドの人達は流石にそうも行かなかった。
今日の所は一旦現地を見て、
どれくらいの調査期間が必要か調べてから、
改めて人員を準備するようだ。
本部からも応援を要請する必要があり、
下手すると数ヶ月は私もこの地に縛られる事になるだろう。
一応まだ転移装置は復旧させていない。
こちらから乗り込む準備が整ってから、
装置を修復することにしている。
万が一向こうから誰かが来てこの状況を見たら、
先手を取られてしまうかもしれないからだ。
そんな感じで、
皆を呼んでからの一日目が終了した。
今日の所は私達も自分達の拠点に戻って、
明日には引き払ってくるとしよう。
グリアと爺さんにも今日は一緒に行かないかと誘ってみたが断られてしまった。
まあ、ここの方が魔物だらけの森の中よりは安全だろう。
単に気を使ってくれただけかもしれないけど。
私はノアちゃんとセレネを連れて、
森の拠点に転移する。
そして、久々にリヴィアを自由にする。
相変わらず、収納空間から出た直後はキョトンとしていたけど、
全て終わったことを説明すると、
すぐに納得してくれた。
リヴィアからしたら、
さっき収納空間に入ったばかりなのだろう。
空間内は時間が止まっているようだし。
けど、またすぐ収納空間に入ってもらう事になるのよね・・・
やっぱりここの拠点も残して置くべきかしら。
それとも、入口から離れた所なら影響は受けないのかしら。
もしかしたら、
階層の違う幹部エリアとかなら問題無いのかもしれない。
けれど、そこはギルドから来る人達が調査する場所だ。
流石にまだ魔物であるリヴィを放り込むわけにはいかないだろう。
地下空間自体も調べるから、
書類だけ持って帰ってもらうわけにもいかないし。
おそらくあの階層はギルドの拠点としても使うはずだ。
かといって、
数ヶ月はかかりかねないのに、
収納空間にずっといてもらうわけにもいかない。
それはいくらなんでも酷すぎる。
困った。
どうしよう。
一先ず考えるのは保留して、
私達も休む事にした。
結局、ノアちゃんに膝枕してもらったのも、
一晩ゆっくり休んだほどじゃない。
その上でルネルのしごきを受けたのだ。
その後少し気絶していたとは言えもうへとへとだ。
晩ごはんも収納空間の中から適当に済ませて、
私とノアちゃんのベットをくっつけて三人で横になる。
リヴィは私の足の間に潜り込んだ。
なんで?
いつもノアちゃんと寝てるじゃない。
まあ、良いけど。
両腕に抱きついてきた二人の感触に安心して眠りについた。
翌日、起きたら昼過ぎだった。
ノアちゃんは私の腕を抱いてまだ寝ている。
本当に疲れていたのだろう。
セレネは先に起きて動き出したようだ。
外からリヴィとはしゃいでいる声が聞こえる。
私が体を起こそうとすると、
ノアちゃんが腕に力を込めた事で引き戻される。
「ノアちゃん?起きてるの?」
「・・・寝てます。
だからアルカももう少しここに居て下さい」
なにそれ可愛い。
どうしたのノアちゃん!
久々の甘えん坊モード!
うん!良いわ!いくらでも一緒にいてあげる!
私が内心大興奮していると、
セレネがやってきた。
「ノア!流石にそれは認めないわ!
随分前から起きていたのも私は知っているのよ!」
「じゃあ、セレネも一緒に寝ればいいじゃないですか」
「もうお昼よ!
疲れているのはわかっているから無理にとは言わないけど、
やることはいっぱいあるのだから起きて動き出しても良いと思うの」
「そんな事言ってセレネだってリヴィと遊んでただけのくせに」
「リヴィアが可哀想じゃない!
そろそろこの子のお昼ご飯も用意しなきゃ!」
「ぐっ・・・
そうですね。流石に寝すぎました。
アルカ起きましょうか。
一緒にお昼の準備をしましょう」
「あっ!ノアずるい!私も!」
「セレネはリヴィと遊んでいて下さい。
お昼の準備に三人もいりません。
それにセレネは料理ができるのですか?」
「うぐ・・・
じゃあ、食後は私の番だからね!
ノアはもう十分独り占めしたんだから!」
「まあ、良いでしょう。
流石に不公平ですから」
「そんな余裕何時までも続かないわ!」
「じゃあ気を使わなくて良いのですか?」
「・・・仕方ないわね。
午後は私の番だから!」
セレネはそう言って飛び出していった。
リヴィも続いていく。
すっかり二人は仲良しになったようだ。
そのかわり、ノアちゃんとセレネがギスギスしている。
突然どうしちゃったの二人共・・・
私はまた何も言えなかった。