10-23.顛末
ノアちゃんが目を覚ました後、
私達は二人での調査に区切りを付ける事にした。
結局、ボスの居場所はわかっていないが、
隣のダンジョンも消滅したし、
この地下空間にある転移装置は全て使えないはずだ。
そもそもここは未開拓地の奥地なのだ。
仮に別のダンジョンに逃げていたとしても、
ここまで戻ってくる事はできないだろう。
それに、あのボスの持っていた魔道具は全て破壊した。
今のままではこれ以上ダンジョンコアを奪うことはできないはずだ。
ならば先にこちらを徹底的に抑えてしまって、
世界中の拠点を使えなくするべきだ。
そうすれば再起を図るのも難しいだろうし、
拠点への接触があれば足取りも追えるだろう。
私はギルド長さんに頼んで、
幹部エリアの調査人員を派遣してもらう事にした。
ギルド本部も信用出来ない部分はあるが、
ボスを取り逃がしてしまった以上はそうも言っていられないだろう。
「まさか本当に本拠地まで見つけ出してしまうとは。
一体何をしたんだ?」
「偶然よ。
ともかく後は頼んだわ。
転移装置は使えるようにしておくから、
転移先の接収も必要になると思うわ。
他にもやることは山積みよ。
町の人達にもいろいろ聞いてみなきゃだし。
証拠資料も調べて世界中の拠点も抑えなきゃだし。
あと捕らえている幹部連中も引き渡すから取り調べしておいてね。
全員がこの件に関わっているとは限らないのだから、
くれぐれも丁重にね」
「ああ。わかった。
本部にも要請して人を派遣しよう。
お前はどうするんだ?」
「暫くはこの町にでも滞在するわ。
まだ転移での送り迎えも必要でしょうし。
だから早めに転移装置の事はなんとかしたいわね。
あれ以外にここと外を繋ぐ手段が殆ど無いもの」
「そうだな。
済まないが、まだ暫く頼む。
こちらも迅速に対処しよう」
「あと、こっちからも何人か呼ぶから、
その人達とも上手く連携してね」
私はギルド長さんとの話しを切り上げて、
グリアとドワーフ爺さんを呼び出す。
「これからギルドの人達と調査していくから、
二人もお願いね。
結構時間はかかっちゃうと思うけど大丈夫そうかしら」
「準備は出来ている。
私も助力しよう」
「どうせ殆ど客もこんからのう。
問題ないじゃろう」
それは問題あるのでは?
「ところで、セレネ君が話したがっていたよ。
ノア君から聞いていないかい?」
「え?聞いてないけど。
セレネどうしたのかしら」
私はセレネに小型転移門を繋ぐ。
「アルカ!私もそっちに行きたいわ!
今すぐ!!」
「良いけど、仕事は大丈夫なの?
グリアもこっちに呼んでるんだけど」
「大丈夫問題ないわ!」
私はセレネに転移門を開く
「ア~ル~カ~!」
転移門を開くなり飛びついてくるセレネ
すかさず私とセレネの間に割り込むノアちゃん。
そんなにセレネと会いたかったのかな?
「ノア!やっぱりそういう事なのね!」
至近距離で見つめ合う二人
なんか二人の視線がバチバチしてる?
気のせいよね
そんな熱心に見つめ合っちゃって!
仲良しさん何だから!
「ところで、セレネは何の用事だったの?」
「えっと、そうよ!ルネルさんがカンカンよ!
何で呼ばない!って」
「あ・・・」
「その様子だと忘れていたのね。
流石に酷いと思うわ。
わざわざ国を出て付いてきてくれたのに、
肝心な時にのけ者にするなんて」
「アルカも大変だったんです!
危うく死にかける所だったんですよ!」
「ノアからそんな感情は伝わって来なかったよ?
アルカなら大丈夫。アルカならなんとかしてくれるって、
そんな感情ばかり」
「セレネ!!
どうして毎度毎度アルカの前で言うんですか!
そういうセレネだってアルカの事ばっかりじゃないですか!
本当に真面目に仕事してるんですか?
四六時中、アルカアルカって!
伝わってくるこっちの身にもなって下さい!」
「ノアがそれを言うの!?
あなたこそ!」
「セレネ!ストップです!
これ以上はお互いまずいです!」
「ぐ・・・自分は言いたい放題言ったくせに!
良いわ!私も暫くここにいる!
ノアにだって負けないんだから!」
「セレネは仕事があるのでしょう?
そんな事をしている暇は無いじゃないですか」
「よりによってあなたがそんな事なんて言うの!?
私にとってどれだけ大事なことなのか誰よりも知ってるくせに!」
「・・・そうですね。
すみません。言い過ぎました」
「・・・そこで素直に謝らないでよ。
私こそ熱くなりすぎたわ。
けど撤回はしないから。
アルカ!ちょっと準備してくるからまた送って!」
「え?うん良いけど」
ここまで熱くなって言い争う二人なんて初めてみた。
思わず呆気にとられて止められなかった。
二人は何の話しをしているの?
なんで私が原因で争ってるの?