10-22.休息
再び町に戻った私は再度幹部エリアに転移する。
もしまだ生きているなら、
ボスが戻っているのではと思ったからだ。
それにここを抑えておけば、
万が一生き延びてどこかに逃げていたとしても、
探し出すヒントがありそうだ。
幹部エリアは特に変化は無かった。
エレベーターは使えないままだし、
転移装置も壊れたままだ。
部屋が荒らされている様子も無い。
これなら証拠隠滅も大丈夫だろう。
「ノアちゃん。
ここで休憩にしましょう。
流石に疲れてしまったわ。
美味しいご飯を食べて、
交代で眠りましょう」
私はそう言って収納空間から
屋台で買い溜めしておいた串焼きや、
ノアちゃんが作ってくれたスープ等を取り出していく。
「「いただきます」」
二人でがっつきながら
次々に平らげていく。
食事を始めてようやく気づいたが、
かなりお腹が減っていたようだ。
この調子だと、食後は二人共寝てしまいそうだ。
やっぱり、一度自宅か拠点にでも転移するべきだろうか。
けれどこの場を離れるのは不安だ。
不在の間に誰か来ないとも限らない。
仕方がない。
なんとか頑張るとしよう。
食事が終わって片付けが済む。
「ノアちゃん。先に眠って。
私は少し様子を見ておくから」
ノアちゃんは首を横に振って、
私の隣に座ると、
私の肩を抱いて自分の方に横たえた。
!?
ノアちゃんの膝枕!?
なんで!?
急にどうしたの!
「アルカの方が疲れています。
私が見ておくので眠って下さい」
ノアちゃんは微笑みながら私に告げる。
急激に顔の温度が上がるのを感じる。
なぜ!?
ノアちゃんを膝枕した事は数あれど、
されたのは初めてだ!
なにこれ!
こんなにドキドキするものなの?
いや、そんなわけない。
ノアちゃんはいつもリラックスしていた。
私がおかしいのだろう。
ドキドキしすぎて眠れる気がしない!
「ほらちゃんと寝て下さい。
とりあえず目を瞑るんです。
何も考えないでボーとしていればすぐに眠れますから」
ノアちゃんは私の瞼の上から手のひらを置いて視界を塞ぐ。
なんだか余計に心臓の音が大きくなった気がする。
ノアちゃんの手のひら少しひんやりして気持ちいいなぁ。
少しずつそのひんやりが広がっていくような感じがして、
そのまま私の意識は落ちていく。
あれ・・・意外と眠れそう・・・
目覚めるとノアちゃんに膝枕されていた。
ああ、結局あのまま眠っていたのか。
長い事寝ていた気がするのに、
ずっとノアちゃんはこうしてくれていたのか。
寝る直前のドキドキが嘘のように、
今は心穏やかだ。
きっと初めてのことに驚いたのだろう。
さて、ノアちゃんを寝かせてあげなきゃ。
ちゃんと目を覚ますとしよう。
私は目を開けて上を向く。
すると、ノアちゃんの真っ赤な顔が目に映る。
?
どうしたのだろう。
熱でもあるのかな。
やっぱり無理させすぎてしまった!?
私は飛び起きて、
今度はノアちゃんを膝枕する。
「ありがとうノアちゃん。
お陰でぐっすり眠れたわ。
今度はノアちゃんが休んでね」
ノアちゃんは何も言わずにされるがままになっていた。
やっぱり相当疲れているのだろう。
ごめんねノアちゃん。
私はノアちゃんを真似て、
瞼の上から手のひらを被せてみる。
顔に触る瞬間、
ノアちゃんの肩がビクッとした。
驚かせてしまったようだ。
それからすぐにノアちゃんも眠りに落ちていった。