10-21.魔物除け
私は念の為、地上から町に向かって転移門を開く。
いきなり転移して土の中とかだったら最悪だ。
そんな事もなく、町は無事だった。
隣でダンジョンが消滅した事に気付く者すらいなかったのだろう。
特に騒ぎにもなっていないようだった。
回収した魔道具は収納空間に収めておいた。
後で爺さんに見てもらおう。
私には良くわからない。
それに適当にいじるのは危険すぎる。
あの魔物?は、
魔道具が核になっていたようだ。
少なくともこの魔道具が貫かれた事で、
あのスライムもどきも砕け散った。
魔道具にはばっちりと、
ノアちゃんが貫いた形跡がある。
その辺りも詳しく調べてみよう。
結局、パタラとかいうボスはどこにいるのだろうか。
ダンジョンコアが出てきたという事は、
あのスライムもどきに一緒に取り込まれてしまったのだろうか。
少なくとも、あのスライムを送り込んでくる直前までは、
ダンジョンにいたと思う。
その時にあの男の声を聞いている。
あれ以降喋らなかったのは、
別のダンジョンに転移したのか、
スライムに取り込まれたかのどちらかだろう。
それにまだリヴィアが苦しんでいた理由が見つかっていない。
ダンジョンにいた魔物達の様子を視る限り、
奴らも同じように力を引き出されていたように視えた。
あの戦いで、原因ごと消えてしまったのだろうか。
でも、ダンジョンと町は繋がっていないようだった。
通路の逆側になにかあるの?
私はノアちゃんを連れて最初に入ってきた地下通路内部に転移する。
「なにか気になるんですか?」
何も言わずに転移した私にノアちゃんが質問する。
「今度は町と反対側に行こうと思って。
リヴィが苦しんだ原因も入口にあるのかもしれないし」
「なるほど。
じゃあこっちですね」
私はノアちゃんと一緒に町と逆方向に歩き出す。
暫くは代わり映えしない通路が続く。
いつの間にかノアちゃんが私の手を握っていた。
そういえば、最初に入った時もこうして歩いていたんだった。
あれから何時間たったのだろう。
地下空間は時間の経過がわかりづらい。
かなり長いこと調査や戦闘を行っていたはずだ。
そろそろ休息を取るべきかもしれない。
「ノアちゃんは疲れてない?」
「問題ないです。
アルカこそ平気ですか?
あんな戦いの後ですし、
何かあったらすぐに言ってくださいね!」
「ありがとう。大丈夫よ。
もう少し頑張ったら休憩しましょう」
「はい」
そうして、入口に到着する。
そこには先程スライムから出てきたのと
似たような魔道具が設置されていた。
これは魔物除け?
でもなんでスライムもどきの核と似ているの?
もし同じものなら放置しておくわけにはいかない。
あのスライムもどきはとんでもない脅威だった。
けれど、単に魔物除けとして配置されているなら、
これを動かすわけにはいかないかもしれない。
リヴィには悪いが、この町にとっても必要なのだろう。
一応入口はドワーフの国と似たような仕組みで
隠蔽されているけど、魔物が入ってこないとも限らない。
仕方がない。
お爺さんに助けを求めるか。
魔道具の事なら彼に聞くべきだろう。
私はお爺さんを転移門で呼び出して、
先程あった事を説明して、
二つの魔道具を調べてもらう。
「これは魔物の力を吸い上げて苦しめる事で魔物を近づけない仕組みじゃが、
ここに置かれている物は安全装置が付いておる。
下手に弄らなければ際限無く吸い上げる事もあるまい」
「じゃがこっちは・・・
流石にお前さんの言うような事まではわからんのう。
この魔道具が力を吸い上げて魔物のように変異したのか、
なにか別の要因があるのか。
少なくとも、安全装置が存在せん」
「やろうと思えば、この魔物除けでも同じことが出来る可能性もあるのよね?」
「そうじゃのう。
同じ条件が揃えば可能じゃろう。
少なくとも魔道具自体は同じものじゃ。
もう少し詳しく調べてやろう」
「お願いするわ」
私はお爺さんにスライムから出てきた方の魔道具を渡して送り返す。
町の調査もお願いする事になるだろうから、
この後も一緒にいても良かったかもしれない。
まあ、いいか。
結局、この町にいる間はリヴィには収納空間に居てもらうしかない。
原因がわかっただけでも良しとしよう。
私はノアちゃんを連れて、再び町に転移した。