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10-14.思惑

私達は町の探索に区切りをつけて、

地下空間の奥へと向かう。



「苦労してこれだけの町を作り上げたのに、

どうして平気で他の町を襲えるのでしょうね」



「そうね。

もしかしたら国を逃げ出して、

この町を作り上げたドワーフは

そこまでは求めていなかったんじゃないかしら」



「どうしてそう思うんですか?」



「なんとなくなんだけどね。

この町の至る所にあのドワーフの国と同じような作りがあるじゃない?

それって、自分で滅ぼしてしまったあの国を作り直したかったんじゃないかなって。

そんな事を考えるなら滅ぼしてしまった事を後悔していたんじゃないかなって思ったの」



「ならどうして滅ぼしてしまったのでしょう」



「もしかしたら意図したことじゃなかったのかもしれないわ。

この町の設備は明らかにあのドワーフの国を模してはいるけれど、

再現出来ていないんじゃないかしら。

つまり、腕が劣っていたから劣化品になってしまったのよ。

天井の光が弱かったり、入口通路の材質が中途半端だったりね。」


「同じように、お爺さんの作り出した魔道具の真似をして劣化品を作ってしまった。

その結果があの国を滅ぼしてしまった魔道具なんじゃないかしら」


「それにね。

最初から悪意を持って行動していたら数百年も隠れていられなかったと思うの。

最初にこれだけの町を作るには沢山の人の大きな熱意が必要なはずだわ。

たぶん、最初は真剣にこの町を作ることだけに注力していたはずだと思うの。

けれど、人が集まれば悪意を持つ人も出てくる。

そういう人達は大きな力に敏感だわ。

ドワーフにしか作れない強力な魔道具なんて尚更ね」


「そんな人達が魔道具を利用して悪さをしていったのではないかしら」



「けれど、魔王はそのドワーフを明確に憎んでいたようですよ?

しかも邪神から力を貰ってしまうほどに。

あの魔王がそんな人を憎むでしょうか」



「そうね。

そこは私も疑問ね。

本人と会ったルネルも、初代聖女の記憶を見たセレネも

魔王はとっても優しい人だったと言っているわ。

だからこそ大好きな国の人々を滅ぼした犯人の事を許せなかったのかもしれない。

もしかしたら魔王も事故だとは知らなかったのかもしれない。

もしかしたらわかっていても許せなかったのかもしれない」



「まあ、そもそも私の思い違いの可能性も高いわね。

単純に便利だからあの国の技術を真似ただけかもしれない。

技術が劣っていたわけではなく,

この地で手に入りやすい材料の問題だったのかもしれない。

人間と一緒に作るには高度な技術が必要な物は作れなかったのかもしれない」




「逆に、年若かったお爺さんに劣っている事が許せなかったから、

あえて模倣した物で国を滅ぼしたのかもしれない」


「最初から悪い人たちと組んで、

沢山の人達を利用してこの町を作り上げたのかもしれない」


「もしくは悪い人たちに捕まって、

技術を提供して生きながらえたのかもしれない」




「何もかも想像でしかないわね。

唯一なにかを知っているとしたら、

あのボスやこの組織の幹部たちじゃないかしら」



「そういえば、あのボスの人は、

爺様の想いをと言っていました。

もしかしたらあのボスの人には慕われていたのかもしれませんね。

爺様というのがそのドワーフならですが」



「それにはボスの話しを聞いてみるのが良さそうね。

根っからの悪人なら慕う相手も悪人かもしれないし。

なにか全然別の思惑もあるのかもしれないし」



「考えてもわからない事だらけですね」



「そうね。

けれどきっとそうやって考える事は

ここを調べる上でのヒントになると思うの。

流石に私達だけで全ては調べられないから

当たりをつけて探っていかないとね」



「そうですね。

ここは広すぎますから」



「それで最初のノアちゃんの質問に戻るけど、

他の国を襲っても構わないと思っている人達は

この町の事もなんとも思っていないかもしれないわ。

単純に自分たちの利益や目的のためだけに利用しているのかもしれない」


「それを探るためにも奥で働いている人達の様子を見てみましょう。

無理やり働かされているようなら、

そんな酷い人たちが牛耳っているのかもしれないわ。

逆にそうでもないなら、そんな悪い人たちは一部だけかもしれない。

絶対にそうとは言えないけどね」



「わかりました。

偵察は任せて下さい!」



「お願いね。

ノアちゃん一人なら近くで見てくる事もできるものね」



「はい!」



「どうかした?すっごく嬉しそうね」



「・・・アルカが危険な事を私一人に任せてくれたので」



「もうノアちゃんは一人前だもの!

頼りにしてるわ!」



「・・・えへへ」



照れ照れノアちゃん可愛い。




私達は入口から目撃した、

地下空間の奥で働く人達の近くにやってきた。


私は物陰に隠れたまま、

偵察に行ったノアちゃんを待つ。



暫くして戻ってきたノアちゃんが見てきた事を報告してくれる。



「見張りのような人達こそいますが、

特に酷い扱いには見えませんでした。

少なくとも日常的に暴力が振るわれている様子はないです。

服装とかも特に状態が悪いようには見えませんでした。

おそらくあの町に住んでいる人達が働いているだけではないでしょうか」


「採取しているのは普通に鉱石とかですね。

特に変わったものはありませんでした」


「後は、掘り進めて拡張しているようにも見えます。

ああやって、少しずつあの町も大きくしていったのではないでしょうか」



「ありがとうノアちゃん。

じゃあ、一旦あそこは放っておきましょう。

今すぐになにかする必要もないでしょうしね」



「私もそう思います」



私達はその場を離れて、更に探索を続けた。


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