45-37.帝国会議
『暇ね』
『暇ですね』
『ひま』
『暇かもしれません。マスター』
『ひま~♪』
どったん皆して。
『まったく。腑抜けていますね。融合組は』
『ふぬけ~』
『モエツキタ』
『良いではないですか。ここ最近は修行続きだったんですから。少しくらいゆっくりしましょうよ』
『せやな~』
『アルカ様がお望みとあらば侍らせて頂きたく』
『そんな事一々確認してたらここではやっていけないわよ、ミヤコ』
にぎやか~。
「悪いけど後でね。今はアルルがお昼寝中だから」
なんか様子も変だったし。今は私の上で寝てるけど。
『だから暇なんじゃない』
一応気は遣ってくれていたのね。けどそんな暇ならナノハとコマチみたいに私世界にでも行けば良いんじゃない?
『ナノハは一人で寝たいだけよ。それとアルルに取られて拗ねてるだけ』
ナノハにも分体を送っておこうかしら。
『コマチは仕事に戻りました』
そうね。ミヤコが心置きなく私の側に居られるようにって気を遣ってくれたのよね。コマチの方にも分体を送りましょう。ミヤコの代わりが務まるとは思えないけど、少しくらい手伝いたいものね。
『いまは』
『なんとなく』
『はなれがたい』
『そんなきぶん』
あらあら♪ うふふ♪
『そういえばノルンと話さなくて良いのですか?』
あ。忘れてた。ミーシャの事伝えないと。
「もちろん把握しているわ。けれどありがとう。こはる」
早速来てくれた。
「また後でね♪ その子を起こしてしまったら悪いもの♪」
と思ったら、またすぐに立ち去ってしまった。
『アムルの様子でも覗いてみましょうか』
そうね。今はアムルが私のふりをしてフロルの側に居てくれてるんだもんね。ばっちり私を演じられているのか確認しておかないとよね♪
『やる~♪』
お願い♪ ルーちゃん♪
ルーちゃんが覚視を千里眼モードで発動してくれた。しかもご丁寧にアムル目線っぽい。眼の前にフロルの顔が……。
『こらフロル』
「なんだアルカ。わらわは今忙しい。邪魔をするでない」
何故かフロルがアムルに壁ドンしている。部屋の中には二人きりっぽい。どう見てもチョメチョメの真っ最中だ。忙しいんじゃなかったんかい。
「誤解するな。アルカの顔が正しく作り込まれているか確認しているだけだ。変装がバレたら事だからな。ふむ。やはり美しい。しかし今ひとつ物足りん。アムルよ。アルカはわらわの伴侶だ。そう意識して表情を作るのだ」
「は、はい」
『まてやこら』
「邪魔をするなと言っておろう」
『間違った演技指導してるのはフロルの方でしょ。私とフロルはついさっき主従になったばかりなのよ。設定を遵守なさい。アムルもフロルの我儘に流されないで。グリア達の言葉が真実よ。でないと美味しく頂かれちゃうわよ』
「もう既に……」
可哀想に。ニクスは何を……ああそっか。私達が呼び出しちゃったから。
「なんだ。アムルはダメだとでも言うのか?」
『アムルとして愛するなら構わないわよ。けれど私の身代わりとして楽しむのは関心しないわね』
「もう少し我らを信じるがいい」
『まあそうよね。フロル程の器を持つ人がそんなケチ臭い事しないわよね』
「うむ。もちろんだ。一人ひとりを蔑ろにしていてはハーレムの乗っ取りも夢のまた夢であるからな」
『乗っ取りは無理よ。フロルだけには絶対にね。あなた肝心のセレネと相性悪いじゃない』
乗っ取り企む子も増えてきたわね。無謀な夢にすぎないけど。それでも一応ノアちゃんにならワンチャンあるかもだけど。ただノアちゃんの場合は一人一人しっかりと向き合っていくタイプだから時間がかかるのよね。私が増やすペースにまったく追いつけていないから、ノアちゃんはノアちゃんで難しいのかもしれない。パトラは無理ね。言うまでもなく。
「将を射んと欲すれば先ず馬からだ」
私が馬かい。
「しまった。アルカにちょっかいを出されたせいで時間が無くなってしまったではないか。戻るぞ、アムルよ」
「はい、フロル」
「皇帝陛下だ。アルカ」
「ええ。そうだったわね。皇帝陛下」
お。二人ともちゃんと切り替えたわね。さてさて。この後はいったいどうするのかしら?
二人は部屋を出て、すぐ近くの会議室へと入っていった。会議室には帝国中から集まった諸侯達が着席していた。中には当然アンジュ達も含まれている。アンジュは私が見ている事にも気付いているようだ。明らかにこちらに意識を向けてきた。なんかちょっと不思議な感じ。しかもこれ、まだアンジュの方が私より広く深く視えているのよね。
『む~』
ふふ♪ ルーちゃんがんば♪
「ふむ。揃っているようだな。結構」
フロルが一際立派な席に腰を下ろした。アムルはフロルの直ぐ側に控えるように立っている。
「皇帝陛下は我らを脅すつもりですかな?」
一人の男がそんな言葉を発した。
「なに。単に見せびらかそうと考えたまでのこと」
「過ぎたる力は身を滅ぼしますぞ」
「くっくっく。わらわの手には負えぬと申すのだな」
「誰しもが扱いあぐねる類のものかと」
「くっふっふ♪ だそうだ♪ アルカよ、お主からも何か言いたいことはあるか?」
「グントの王は度胸があるわね。トリシュはお父さん似ね」
「っ!」
「貴様! 我らを脅すつもりか!!」
「久しぶりね、シーグル王。あなたとユーニスもそっくり」
久しぶり? ああそっか。あの事件の時に各国に説明してまわったものね。そりゃあ国王の顔は知ってるわよね。肝心の私は知らなかったけど。あの時は皆に代わりに回ってもらったし。
「まさか……」
「ええ。シンシアの事も知っているわ。フィンブル王」
「これはどういう事ですかな! 皇帝陛下!!」
「わらわには何を喚いておるのかさっぱりだ。アルカ。わかるように説明せよ。わらわだけでなく、この場の全員にな」
「別に。どうもこうも無いわ。出奔した姫君が冒険者なんかやっていたから拾い上げただけよ。それもつい先日ね」
あらら。勝手にばらしちゃった。それとも事前に打ち合わせ済みだったのかしら? そもそも何の為に名前を出したのかしら? 本当に脅す気なの? 今更脅しになるの? 十年近くも前に出奔してるのに?
「そのような戯言を! 貴様が誑かしたのであろう!!」
「知らないわよ。ユーニス達が旅に出たのって十年近く前じゃない。その時私まだ冒険者になったばかりよ? そもそもヴァガル帝国には来てないし。疑うならギルドの記録を調べてみなさい。あなたにそれが出来るのかは知らないけどね」
うわ~。挑発してる~。
「アルカ。その辺にしておけ。我らは争い合う為に集まったわけではないのだ」
「承知したわ。皇帝陛下」
「よろしい。さて諸君。会議を始めよう」
この流れで?




