10-5.故郷の料理
私はノアちゃんが食べたことが無さそうで、
喜びそうなものを考えた結果、
ラーメンのようなものを作ることにした。
醤油とか無いし中華麺の作り方も知らないけれど。
数種類の肉とネギ、生姜、にんにくっぽい野菜を煮込んでいく。
麺もうろ覚えながらなんとか用意した。
これうどんじゃね?
まあ、良いか。
調味料と薬味になりそうな野菜をいくつかすりつぶして混ぜ合わせて、
タレを作り、少しずつ味を調整していく。
幸い、ノアちゃんが王都で買い集めた香辛料と一緒に大量に収納に入っていた。
せっかくなら役立ててしまおう。
もう本来の目的で使われる事はないだろうし。
数時間煮込んだスープと
タレが準備出来たので、
器で少しずつ合わせて微調整していく。
う~ん・・・
なんか違うけど・・・
まあ、ラーメン風うどんっぽい何かが出来た気がする。
本当は醤油が欲しいところだ。
今度探してみようかしら。
ノアちゃんがいれば私が一人で旅をしていた時より沢山の情報が集まるだろう。
冒険者として必要な情報ならともかく、
それ以外は素通りしている可能性も高いし。
まあ、今日のところはとりあえず美味しければ何でも大丈夫さ!
一先ず満足した所で、
ノアちゃんがリヴィを連れて戻ってきた。
「なんですかこの強烈な臭いは!」
ノアちゃん半ギレモード。
肉を沢山煮込んだり、
普段使わないような臭いの強い調味料を使ったり、
慣れてないと強烈だよね・・・
しかもテントの隣でこんな事やってたらダメだよね・・・
「故郷の料理なの。
ノアちゃんに食べてもらいたくて・・・」
「そうなんですか。
それは失礼しました。
随分変わった料理なんですね」
ノアちゃんは素直な良い子だ。
怒りは直ぐに鎮火した。
「もう少しで出来上がるから待っててね」
私は麺を茹でて盛り付けていく。
塩チャーシューくらいしか具材が無いな。
他のはまた今度にしよう。
リヴィの分と合わせて三人前を用意してテーブルに着く。
「「いただきます」」「きゅ~!」
「熱いから気をつけてね」
「はい・・・」
ノアちゃんは強烈な臭いを発しながら、
濛々と湯気を立てる器に怖気付いているようだ。
リヴィは躊躇無くがっついている。
やけどとか大丈夫かしら。
ブレス吐くし問題ないか。
怖気付いているノアちゃんには、
私から先に食べて見せて大丈夫だよと笑いかける。
恐る恐る手を出すノアちゃん。
しっかりフーフーしてから口に運ぶ。
「美味しいです!」
良かった。
口に合ったようだ。
その後はノアちゃんも少しずつ口に運んでいく。
ノアちゃんは猫舌だ。
今度カレーも作ってみよう。
持っていた香辛料で近いものが作れそうだったし。
米は持ってないけど、ナンくらいなら作れるはずだ。
食べ終わると、
料理についていろいろ質問してくるノアちゃん。
もしかしたら今度ノアちゃんも作ってくれるのかもしれない。
私より美味しく出来るだろう。
とっても楽しみだ。
この世界にもパスタとかはあるので、
ノアちゃんもたまに作ってくれる。
うどんも口頭の説明だけで十分だろう。
それでも一緒に作ってみるのも良いかもしれない。
仲良く料理するのはきっと楽しいはずだ。
「セレネが話したいそうです・・・」
突然、ノアちゃんが気まずそうにそう言った。
どうしたんだろう?
私がセレネに転移門を繋ぐと、
興奮したセレネが捲し立てる。
「アルカ!
ノアから色々伝わってきたわ!
私も食べたい!」
「ごめんなさい。
もうないの・・・」
「そんなぁ!!」
どうやら、ノアちゃんの感情が伝わって何があったか大体知っているようだ。
詳しく話を聞くと、
仕事中にノアちゃんから強烈な喜びの感情と、
美味しいって気持ちと、私への愛情を感じたそうだ。
何があったのか気になってノアちゃんに疑問を向けると、
ノアちゃんから誤魔化そうとする感情が伝わってきたのだと言う。
状況から私がノアちゃんに何か美味しいもの作って喜ばせたのだと察したらしい。
そしてようやく、仕事に区切りがついて
今になって連絡してきたようだ。
セレネに全ての感情を暴露されたノアちゃんは
顔を真っ赤にしてテーブルに突っ伏してしまった。
「今度はセレネの分も作っておくから」
「絶対よ!約束だからね!」
それから少しだけ話をして、セレネは仕事に戻っていった。