45-27.子供達の成長
「ママ!!」
「ルージュ!!」
って、あれ? どうしてルージュがここに? というかここどこ? 私はさっきまで何してたんだっけ? どうして皆が近くにいないの? もしかして夢の中? 私がルージュに会いた過ぎて夢に見てるの? それともルージュの方から会いに来てくれたのかしら♪ ふふ♪ だとしたらとっても素敵な夢ね♪ 会えて嬉しいわ♪ ルージュ♪
「えへへ~♪」
あら? 私達いつの間に服脱いでたのかしら? もしかして最初から? やっぱりここが夢の中だから?
「~♪」
ふふ♪ ルージュは本当にこれ好きね~♪
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『妙ね』
「何が?」
『アルカの夢がよ』
「夢? あ~。そう言えばルージュが出てきたかも?」
うろ覚えだけど。たぶんそんな感じの夢だった。
『油断しないで。今のあの子を深層で育てるのは危険かもしれないわ』
どういうこっちゃ。
『一度ニクス世界に戻りましょう。時間の問題だけであれば「ILis」でも十分です』
『それもダメよ。最悪止められなくなるわ』
『私とアイリスが本気で抑え込めば問題はありません。心配ならばマグナの力も借りましょう』
『マグナは連れていきなさい。代わりにシイナは外から支援なさい。二人が取り込まれたらお終いよ。それからもちろんアルカは抜きでやりましょう』
なんかどんどん話しが進んでく。
「けどそれじゃあ感覚が違うんじゃない?」
『背に腹は代えられません。マスターの安全が最優先です』
「だからってそんな隔離するみたいな……」
『必要な事よ』
「せめてお姉ちゃんの深層を借りるのはどう? イオスにも力を貸してもらってさ。イオスがお姉ちゃんに同化しておけばもしもの時だってどうとでもなるでしょ? だから私も側に居させて。ルージュはきっと不安がると思うの」
ここは私の中の世界だ。だからルージュは世界を伝って直接私の心に働きかけてきたのだろう。それだけ私を求めてくれている。なのに完全に引き剥がすなんてしたくない。
ハッキリとは覚えてないけど、たぶんあの子は弱音を吐かなかった。ただ抱き合って私に甘えていただけだ。助けを求めていたわけでも、会いに来てくれと懇願していたわけでもなかった筈だ。ルージュもちゃんとわかっているのだ。それなのに一方的に距離を置くなんて勝手過ぎる。心の繋がりが危険だというならせめてすぐ側で見守ろう。無茶をする必要は無いのだと安心させてあげよう。
『『……』』
「あの子が『ILis』でやった事は私のハッキングだけよ。どれだけ邪魔をされてもアイリスを本気で傷つける事は決して無かったわ。あの子はちゃんと大切な事をわかっているの。誰からも教えられなくたって人を傷つけてはいけないと理解しているの。本当はそんな優しい子なの」
加減がわかっていないのは仕方がない。生まれたばかりなのに力だけは過剰に持たされてしまったんだもの。勢い余って誰かを傷付けてしまう事もあるのかもしれない。けどそれは教えれば済む話だ。本人だってちゃんと学んでくれている筈だ。だってあの子は優しく賢い子だもの。一度失敗したくらいで責め立てるような話じゃない。
「けれど今、私との繋がりを強引に断ち切ってしまえば、あの子は道を踏み外してしまうかもしれない。だからお願い。私も側に居させて。場所を移す事にまでは反対しないから」
安全な学びの場を用意してあげるのは私達親の務めだ。その重要性もわかってる。だから対策は講じよう。その代わりに私は常にあの子から見える場所に立っていよう。側で成長を見守っていよう。それできっと無茶はしなくなる筈だ。あの子もちゃんと理解してくれる筈だ。
『……わかったわ。アルカの案でいきましょう』
『そうですね。異論はありません』
「ありがとう、二人とも」
いつも気苦労ばかりかけさせてごめんなさい。私がしっかりしていれば二人だって強引な事はしなくて済むのにね。
『気にする必要は無いわ。家臣が王を支えるのは当然よ』
『今更何を言うのですか。マスターに出来ぬ事をするのが我々の務めです。むしろ今回は我々の方こそ謝罪すべきです。我々はルージュを誤解していました。必要以上に傷つけるところでした。止めてくださり感謝します』
「ふふ。こちらこそ」
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「ママ~~~♪」
「頑張れ~~♪ ルージュ~~♪」
「ほれ! 余所見するでない!」
「きゃはっ♪」
ルージュはとっても楽しそうだ。それにやっぱり凄い才能だ。ルネルと修行を始めてからまだそんなに時間は経っていないでしょうに。既に十分過ぎる程力を使いこなしている。
『身体の動かし方はまだまだですが、それでも随分と余裕がありますね』
ルネルはちゃんと相手が赤ちゃんだとわかっているのね。
『加減が絶妙です。これ以上厳しくしていれば早々に逃げ出していたかもしれません』
まあね。ルージュは優しい子だけど、間違いなく我儘でもあるし。それに結構気が短いタイプでもある。だからルネルは力ずくで躾けるような事はしていない。遊び感覚で修行をつけてくれている。ルージュがやる気をなくしそうな時は事前に察して挑発まで入れている。ヘイト管理まで完璧だ。
それもこれもきっと今だけの特別待遇だろう。ルネルって子供の扱いが本当に上手よね。
『長年エルフの国を見守ってきたのです。それに何よりルネルさんは子供好きですから』
そうね。うちでも子供達からは特に人気者よね。
『性に合っているのでしょう。いずれは配置換えも検討してみては?』
悩ましいわね。アリア達くらいの子達を見てるのも楽しそうだもの。
普段は十歳前後の子達を見てもらっているけど、もっと小さな幼年組の世話もルネルには合っているのかもしれない。そっちはそっちでエルヴィが見てくれているから心配は要らないけど、ルネルの希望くらいは聞いてみてもいいのかもしれない。
『ルカが卒業する頃にはルビィ達が次の教え子になっているでしょう。ルネルさんの身体が空く事は無さそうですね』
どの道よね。ならいっそ幼女組と少女組の交流をもっと増やすとかね。
『それも良いかもしれませんね。今度何かお試しで企画してみましょう』
ふふ♪ 楽しそうね♪ いっそ子供達自身に任せてみるって手もあるわよね♪
『アリア達学園組は忙しいでしょうが、きっと喜んでくれるでしょうね』
そうだわ。アリアと言えば。
『決勝の映像ですね。今見ますか?』
ノエルも持ってるの?
『はい。シイナから預かっています』
シーちゃん達は今手が離せないもんね。私を守るのに全力だから。ここはイオスが用意してくれた特別な空間だ。イオスに相談したらぽんと生み出してくれた。わざわざお姉ちゃんの深層を使うまでもないって。そんな経緯なもんで、ここは私達にとっても前例の無い未知の空間だ。シーちゃん達は調べておかないと気がすまないようだ。もちろん私から目を離してもいないだろうけど。
もしかしたらルージュを刺激しない為に姿を隠したのかしら? 二人はどうしてもルージュを警戒してしまうものね。あの子は敏感だから私と一緒に見守るのは遠慮したのかも。
「やっぱり後にしようかな」
『そうですね。今はルージュから視線を逸らせませんね』
ふふ♪ あの子ったら本当にすぐ気付くんだもの♪
『私だって気付きますよ』
あはは♪ なにそれ♪ 張り合ってるの?
『皆アルカの事を意識しているんです。流石にあの瞬間のアリアが気付けたとは思えませんが』
どうしよう。ちゃんと見てなかったって気付いてたら。
『流石に無いと思いますよ。ギリギリの勝利でしたから』
なにせあのクレアに勝っちゃったんだものね。やっぱり今見るわ。分体を使えば問題無いでしょ。
『はい。忘れない内にどうぞ』
分体を生み出し、ルージュ達からは少し離れた所で決勝の映像データを確認した。
「嘘でしょ? これまさか神威なの?」
『いえ。少し違うようですよ』
「けどクレアの神力を砕けるなんて他にどんな……」
『わかりません。ただ神威に限りなく近い何かと言った所でしょうか。実は本人すらも理解していないのです。無我夢中で頑張ったら何か出たと言っていました』
「ふふ♪ なにそれ♪」
アリアったらやっぱり主人公体質ね♪ 土壇場で新たな力に目覚めたのかしら♪
『まだまだ成長が楽しみですね』
ノアちゃんの方はどう? 白炎猫モードの強化は順調?
『ええ。先日のサバゲーではハルカにしてやられましたから。今も二人で競い合っている真っ最中です』
ハルカにも驚かされたわよね♪
『あの子は真似っ子ばかり上手なんですから』
それだけじゃないわよ?
『わかっています。人の生み出した技術を完璧に真似した挙げ句、やすやすとその先を行ってしまうのです。アルカの補助役としてはこの上ない存在ですよね』
ふふ♪ ノアちゃんにとっても良い親友になれるでしょ♪
『そうですね。ハルカとの修行は得るものが多いのです。けどだからこそルネルさんに咎められてしまったのでしょう。何事も程々が肝要ですね』
そうね。ノアちゃんまでハルカに頼ってしまったらそれは少し違うものね。
『安易に流されず自分の道を突き進む。その一点においては満点ではないでしょうか』
ルージュの話?
『ええ。あの子はきっと強くなりますよ。負けん気が強いですから』
そうね♪ 成長が楽しみね♪
『私もいつか戦ってみたいです』
その時はどっちにつくの? ノアちゃん? それとも私?
『うっかりしていました』
ふふ♪ ノエルとしての自分も見失わないようにね♪
『……そうですね。アルカの言いたい事も少しわかったかもしれません』
折角ならどちらも楽しまないとね♪
『はい♪』




