45-24.我儘娘
「アルカ? お疲れですか?」
「あら、ノアちゃん。久しぶりね」
「久しぶりですか。『ILis』を使っていたのですね。それも随分長く。呼んでくれればよかったのに」
「ルージュの為よ」
「順調ですか?」
「ええ。取り敢えずは」
また引き籠もっちゃったけど。まあ、素っ裸でその辺歩かれるよりかは私の中に居てもらった方がマシかもだけど。
『?』
おかしいわね。(計画に支障のない範囲で)最低限の常識は教えた筈なのだけど。
『ふくやだ』
外では着ないとダメなのよ~。
『ならでないもん』
もう。すっかりわがままになっちゃって。
『わがままちがーもん』
ルネルお母さんが見たらどう思うかしら?
『ルーのママ?』
そうよ。次はルネルと修行してもらうからね。
『やっ! ママ! ママだけ!』
ママはいっぱいいるのよ。
『いらーない!』
こら。そんな事言わないの。
『いや~ぁ~!!』
「ちょっと。何よその我儘娘は。いったいどんな育て方したらそうなるのよ」
「イロハだぁ……」
「育児疲れかしら? 随分苦労したみたいね」
「イロハも大概ですね。ここで甘い顔をしてはダメです。全て悪いのはアルカなんですから。誰にも告げず二人だけで籠もった挙げ句、ルージュを随分と甘やかしていたようです」
「そうね。ここは心を鬼にして二人とも躾け直しましょう」
そんなぁ~……。
「協力します。ルネルさんもお呼びしましょう」
「もう来とるぞ。お主鈍っとらんか?」
「私も鍛え直してください」
「一人でやれ。お主は逆じゃ。甘っちょろくなりおって。アルカの事ならなんでもかんでも真似とるからそんな事になるのじゃ」
「はい。師匠」
そんなぁ……折角ノアちゃんがこっち側に付いてくれるかと思ったのに……。
『しゃあない』
『ハル』
『こっちつく』
ハルちゃん!!
『じゃま! ママはルーだけなの!』
ルージュ!?
『むぅ』
『これはひどい』
『テツダウ』
『オサエル』
『よろ』
『いや~~ぁ~~の~~ぉ~~~!!』
ああ……ルージュ……。ごめんなさい……私が至らないばっかりに……。
「他人事じゃないわよ。ハル。ナナミ。その我儘娘を引きずり出してしまいなさい」
『『……』』
「二人とも? どうしたのよ?」
『ちょこまか』
『ニゲマワル』
「相手は子供よ? なに手こずってるのよ」
『『むムむ……』』
「まったく仕方がないわね」
イロハも私の中に入ってきた。
『こら! 待ちなさい!!』
『やっ!!』
『ハル! そっち行ったわ!』
『!!』
『ナナミ! 今度はそっちに!』
『!?』
『この! 大人しくしなさい!!』
『あっかん~~~べ~~~~~!!!!』
『『『(ぷっつん)』』』
あ、やば……。
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「びぇぇぇええええ~~~ん!!!!」
「ちょっとやり過ぎよ! 三人とも!」
『『『……サーセン』』』
「まったくいい大人がムキになって!」
「それもこれもお主のせいじゃろうが」
「いや、だからって」
「暫くわしが預かる」
「っ!? えっ!?」
私にしがみついて泣いていたとはいえ、ルージュはあっさりとルネルに捕まってしまった。
「ママ!!」
「ルージュ!」
引き止める間もなくルネルはルージュを連れて転移してしまった。深層からは出られないだろうけど、随分と遠い所に移動してしまったようだ。
「ルージュ……」
「いったい二人だけで何をしていたのですか? 随分な入れ込みようですね」
『そうよ。ルネルが預かるってんだから何の心配も要らないわよ。アルカは大人しく休んでなさい』
「……え? 休み?」
『随分無茶したみたいね。どうやらこれもルージュのせいみたいね』
『マスターの体内に存在するナノマシンの設定が異常な数値に書き換わっています。これが精神体に投影された擬似的なものであったから良かったものを。本来の肉体に同様の細工を施されていればどんな影響が出ていたかわかったものではありません。これは子供の玩具ではないのです。二度と触らせてはいけませんよ』
そう……。それは気付かなかったわ……。
『とんだ悪ガキだわ。先入観を持たせない為だからって教育を中途半端にしてしまったのは失敗だったわね。ごめんなさい。これはアルカだけのせいじゃないわ』
『きにせず』
『やすめ』
『メンテ』
『ヒツヨ』
「後の事は私達に任せておいてください。お疲れ様でした。アルカ」
「えっと、うん。わかったわ。少し休んだら様子を見に」
「行かせません」
『仕上がるまで待っていなさい。融合の準備まで整ったら会わせてあげるから』
「……がってん」
頑張ってね……ルージュ……。




