10-4.露天風呂
私はテントから少し離れた所に露天風呂を作ることにした。
今までは自宅に転移していたけれど、
この泥だらけの二人をそのまま連れて行くわけにはいかない。
せっかくなら魔法の練習がてら新しく作ってしまおう。
近くの岩場に転移して大量に切り出していく。
露天風呂の建設予定地に戻って、
魔法で穴を掘って固め、
収納空間から取り出した岩を敷き詰めていく。
最後に魔法で岩と土を均してとりあえずは完成だ。
使っていて気になったら直していくとしよう。
魔法でお湯を出し二人を呼ぶ。
折角なら温泉掘りたいな~
適当に掘ったら湧かないかな~
「嫌です!なんでこんな所で裸になるんですか!」
ノアちゃんから猛反対を受けてしまった。
最初の頃は旅の間に水浴びしてたし、
ちょっと前にもエルフの人達と一緒に水浴びしてたじゃない。
これも同じよ?
「ここは強力な魔物の生息地です!
いくらなんでも油断し過ぎです!」
「大丈夫よ結界も張っているし。
お湯に入るのがそんなに嫌なの?
なら隣に水風呂も作ってあげるわ」
「・・・それなら」
それで納得すると言うことは
お風呂に入りたくなさすぎて悪あがきをしてたのね・・・
水風呂ならまだマシってどうしてなのだろう。
猫的な本能なら大きな水場自体嫌がりそうだけど。
やっぱり少し甘やかしすぎかしら?
まあ、そんなに嫌なら仕方ない。
近くに川もあるが、
結構流れが急なのであまり水浴びには適さない。
私はもう一度同じ工程で隣に小さな水風呂を作る。
どうせ長く浸かるつもりはないだろう。
案の定、ノアちゃんは一人水風呂でササッと洗い流してしまった。
私はリヴィアと一緒にお風呂に浸かる。
リヴィアも気に入ってくれたようだ。
楽しそうに泳いでいる。
やっぱり水風呂も大きく作るべきだったかしら。
プール代わりにしても良かった。
「まだ出ないんですか?
お腹すきましたよ」
ノアちゃんは退屈そうだ。
そう言われても、
久しぶりの露天風呂からはなかなか出られない。
けれど、ノアちゃんが可哀想だから、
お昼を食べてからまた入り直すことにしよう。
渋々私も露天風呂から出るが、
リヴィアはまだ入っているようだ。
泳ぐのを止めてプカプカ浮いている。
「リヴィものぼせないようにね~」
「キュ~」
通じているのかいないのか、
気持ちよさそうな気の抜けた鳴き声で返事を返してきた。
まあ、お腹が空いたら出てくるだろう。
テントに戻ると昼食の準備は万端だった。
これは悪いことをしてしまった。
ノアちゃんはいつの間にかお昼ご飯を作ってくれていた。
どうやら思っていたより長いこと浸かっていたようだ。
「「いただきます」」
うん。いつも通り美味しい。
ノアちゃんの料理は完璧だ。
こんな場所でも普段と何ら遜色ない。
「今日は何をするの?」
「またリヴィの飛行訓練です。
もう少しで飛べそうなんですよ!」
ノアちゃんは結構な教育ママさんだ。
日々何かしら訓練している。
ノアちゃんの扱いが上手いのか、
リヴィアは遊んでもらっていると楽しそうだ。
既にとっても良いコンビだ。
「アルカ~」
食後の片付けをしていると、
リヴィアを迎えに行ったノアちゃんが戻ってきた。
なんか珍しく情けない声を出している。
「どうしたの?」
「リヴィがお風呂から出てきません・・・」
「そんなに気に入ちゃったの?
もうお湯も冷めてるでしょうに」
「助けて下さい」
ノアちゃんはやっぱり近づきたくないらしい。
仕方なく露天風呂のところに行くと、
リヴィは肩まで浸かってのんびりしていた。
「リヴィ。続きはまた夜に入りましょう。
後で温かいお湯を出してあげるから」
「キュ~!」
やっぱり言葉が通じているようだ。
素直に冷めた湯から出てきた。
私は魔法でリヴィを乾かして、
ノアちゃんママに差し出す。
「ありがとうございます!」
ノアちゃんはリヴィを受け取って
直ぐ様その場を立ち去った。
リヴィに夜にしようと言った手前、
私もそれまで我慢するべきだろう・・・
仕方なく残ったお湯を取り除いて掃除を済ませて、
テントに戻ることにした。
私は何をしようかしら。
ノアちゃん達のところに混ぜてもらおうかな。
晩ごはんに手の込んだものでも仕込んでおくのも良いかも。
お昼に待たせてしまったお詫びになりそうだ。
私は何を作るか考えながらテントに戻った。