45-20.新種
「あなたの名前はルージュよ!」
『ルネルとアンジュの娘だから? 安直ね』
いいの! 可愛いでしょ!
「……あぅ?」
あら?
『きょういく』
『ひつよ』
なるへそ。今回はそっちのパターンだったか。任せた、ハルちゃん。
『まかせろ』
いつも通り生み出したばかりのルージュと契約し、私の中に取り込んで基礎教育を施すことにした。
「その後はわしが見てやろう」
「お願いね」
覚視の制御も覚えてもらわないとだものね。
「マスター。ルージュについて一つ問題が」
「問題?」
「あの子は吸血鬼ではありませんでした」
「吸血鬼じゃない? けど契約は無事に終わったわよね? 今は間違いなくフィリアスでしょ?」
「はい。ハルの術式は完璧です。多少の差異は許容します。今のあの子をフィリアスと呼ぶ事にも支障はありません」
「いったいどういう事?」
「何者かがコアに登録したのです。フィリアスを元として生み出した別の存在を追加したのです」
「どっかの世界のフィリアスが自己進化してコアの情報を更新したって事?」
「自己進化とは限りません。フィリアスの存在に目を付けた何者かが改造を施したのやも」
「それは驚きね。それで? 具体的にルージュはどんな存在なの?」
「わかりません。ただ通常の吸血鬼タイプとは身体の構成が明らかに違うという事がわかるだけです。竜や人魚とも異なります。おそらくこちらの世界には元となった種が存在しないのでしょう」
「そう。確かに気になる話ね」
「研究は任しといて~♪」
「うん。チグサ達に任せるわ」
「がってん♪」
新しいフィリアスねぇ。いったいどこの誰が作り変えたのかしら。
『フィリアスの流出は問題ね。いずれ私達に迫る存在がこの世界を狙ってくるかも』
ナナミみたいに同族に会いたくてって理由でも来るかもしれないしね。
『サミシ』
『イヤ』
『ミンナ』
そうね。フィリアス達は寂しがりやだから。もしかしたら現地の子達の仲間に入れてほしくて自分を作り変えたのかも。
『そんな平和な理由だと良いけれどね』
誰かが軍隊でも作るかもって?
『扱いやすいように加工したのかも』
イロハったら。発想が怖いわ。
『決してあり得ない話しではないわよ』
そうね。考え過ぎとまでは言えないわね。フィリアス達の価値に気付く者はどこにでもいるでしょうからね。そしてフィリアス達自身も喜んで協力しちゃうだろうし。
『そうよ。それに決して他人事とは言えないわ。この世界の中でだって起こり得る……まさか……』
……エデルガルト? 側にフィリアスがいる?
『いえ……それはないわよね。そうであるなら何が何でも止めていた筈だもの。三年もの間大人しく待っているなんてあり得無いわ。と言うか私やシイナが見過ごす筈が無いもの。少なくともパトラの記憶には存在しないって事よね』
だね。未来知識厳禁ったって限度があるものね。
『そもそもパトラは大した事を知らないのよね。別に大きな仕事を任されていたわけでもないみたいだし』
パトちゃんズもそっちの時間軸には無かった筈だものね。
『気になるわ。こんな事なら消してしまわない方がよかったかしら』
大丈夫よ。シーちゃんは把握しているわ。それにハルちゃんはルーシィの記憶だって持ってる。イロハは私の為に合わせてくれたんでしょ。ハルちゃんも言っていた通り基準点は必要よ。私達は今だけを忘れずにいましょう
『ええ。そうね』
ありがとう、イロハ。いつも頼りにしているわ。
『おわった』
「あら、早かったわね」
『とっきゅう』
「ありがとう、ハルちゃん」
『どいたま』
『……』
「ルージュ。気分はいかが?」
『……だいじょぶ』
照れ屋さん?
『シャイ』
『すこし』
ハルちゃんが言うなら相当じゃないかしら?
『……///』
可愛い。
「取り敢えず出てきてくれる?」
『……(ふるふる)』
「あらら」
『だす』
ハルちゃんがルージュを掴んで飛び出してきた。
「!?!?!」
ルージュはパニックになりかけながらも、すぐさま私にしがみついて顔を隠してしまった。
「なんじゃく」
「どうどう」
ハルちゃんたら。自分も人の事言えなかったでしょうに。
「むぅ」
「ありがとう、ハルちゃん。後は任せてね」
「がってん」
再び私の中に戻るハルちゃん。
「じゃあルージュ。ルネルお母さんに挨拶してみよっか」
「……(ふるふる)」
あらら。
「取り敢えず深層に戻りましょう。シーちゃん達もそれでいいかしら?」
「「ついてく!」」
チグサとミヤコが名乗りを上げた。
「おっけ~。コマチは?」
「勿論行くよ。ミヤコが行くんだもん。当然でしょ」
よしよし。
「…………ナノハも」
「大歓迎よ♪」
ナノハがこういう時に自分から来てくれるなんて♪ ママ嬉しいわ♪
「随分増えたのう」
「ごめんね、ルネル」
「しかたない。纏めて面倒をみてやろうかのう。何やら力をつけたいのじゃろ?」
「「師匠!」」
チグサとミヤコが食い気味だ。いっぱい修行して私と融合するつもりでいてくれたらしい。諦めていなくて何よりだ。
『私達も出来る限りの事はしてあげるわ。後は二人次第よ』
ありがとうイロハ♪
『それは構いませんが私達の事も忘れないでください』
『さい~』
勿論よ♪ ヤチヨ♪ ヒサメ♪
『私の忠告もです。マスター』
ええ♪ シーちゃんの合格が必須条件よ♪
『なんだか面白そうね♪ 私も付き合ってあげるわ♪ グラマス♪』
あら。アイリスまで。いったいどこから聞きつけて来たのかしら?
『なによ? 不満なの?』
いいえ♪ 歓迎するわ♪
『それなら良かった♪ お礼に一つ忠告をあげるわ♪ ノアとハルカにも声を掛けてあげなさい♪ こんな面白い話、後から聞いたら絶対怒るわよ♪ あの二人♪』
それもそうね。特にハルカには共有しておかないとだもんね。今後の修行内容にだって影響出るんだし。場合によってはハルカにもルージュの素質を与えないとだし。
『難しい問題ね。そこは私が研究してみるわ』
イロハやる事多すぎじゃない? 私と覚視の修行もしなきゃなのに、チグサやミヤコにヤチヨの修行もあるんだし。
『私が補助を行います。マスター』
『頼むわ、シイナ』
ありがとう♪ シーちゃん♪
早速ノアちゃんとハルカも抱き寄せた。案の定二人は修行に興味を示した。
さて。修行編再開と行きますか!
『『『『『「「お~~!!」」』』』』』




