45-17.家出娘の行方
「「「……」」」
「……」
ダメだ。「トリウィア様お戻りを」しか言ってくれない。完全な硬直状態だ。この子達ロボットか何かなの?
『あながち間違いでもないかもしれないわね。いっそ契約でもしてみたらどうかしら。それなら言う事も聞くでしょう』
なにバカな事言ってるのよ。本当の主になっちゃったら本末転倒じゃない。
『もちろん冗談よ』
真面目に提案して。
『始末して見なかった事にするのはどうかしら』
イロハ。
『嫌なら追い出してしまいなさいな』
それが一番平和的かしら……。
『そもそもどうやって入ってきたのかしら?』
……そうね。この子達大した力は持ってないのよね。ニクスの守護するこの世界によく入ってこれたものよね。
「あなた達をここに寄越したのは誰?」
「「「……」」」
三魔神は無言でミーシャを指し示した。
「どういうこと?」
「知りませんよ!?」
「「「ディアーナ様」」」
「誰ですそれ!? 私はアルテミシアです! ディアーナなんて知りませんよ!?」
どういうこっちゃ。
『ディアーナはヘカテーやアルテミスと同一視される神ね。ちなみにユピテルの娘よ』
なるほど。一応繋がりはあるのか。本人は理解していないようだけど。
「先代様の事じゃないかしら?」
「先代? ミーシャの?」
「ええ。既に存在しないお方よ。わたしがミーシャの世話を焼き始めたのは昔あのお方に良くして頂いたからなの」
なるほど。
「つまりこういう事? そのディアーナ様から言われていたの? なにか困ったらミーシャの下を訪れるようにと?」
「「「肯定します」」」
「けどトリウィアは私なの? こっちのミーシャじゃなくて?」
「「「肯定します」」」
困ったものだ。
『一応言っている事は真実なのでしょうね。神の約束とミーシャの存在が導いたのは間違いないわ。でなければニクスが侵入を許す筈ないもの。神の約束は強力よ。あのイオスですら手を出せなかったくらいなんだから』
だね。この子達にはこの子達なりの根拠があったわけだ。
「ニクス」
「無いよ。無い無い。アルカが元神だなんてある筈無いじゃん」
「トリウィアについては?」
「何も知らないなぁ」
うん? なんか怪しいわね? 態度が微妙に変だ。本当に些細な差だけど私の目は誤魔化せない。
「ニクス。知っている事があるなら話しなさい」
「本当に知らないんだってば。トリウィアについては」
『なら"ヘカテー"の事を話しなさい』
「……」
「ニクス」
「……のーこめんと」
「はぁ? 通るわけ無いでしょ。この子達の身にもなってみなさいよ」
「……怒らない?」
子供か!
「はいはい。怒らないから言ってみなさい」
「……昔家出してきた事があるの」
知り合いだったんなら早言えや。
「それで?」
「……暫く置いてたんだけど」
「けど?」
「ある日突然居なくなっちゃって」
「て?」
「帰ったのかな~って思ってたんだけど……」
「今に至るまで放置していたと?」
「あはは~……」
『他に何を隠しているの? それだけならアルカが叱るような話じゃないわよね?』
「……」
こんにゃろ。まだ誤魔化す気か。
「わかった。もういいわ。セレネ達を呼びましょう。どうやらニクスには心当たりがあるみたいだから。皆が頑張って準備してきた計画を台無しにしたんだもの。ニクスだって弁明はしておきたいわよね」
「……ごめんなさい」
ニクスが気にしていたのはそこか。流石に最後まで誤魔化し続けるつもりは無かったんでしょうけど、罪悪感が口を重くしていたのだろう。
「話す気があるなら先に聞いてあげるから」
「……ありがとう。ごめんね、アルカ」
「私じゃなくて皆にね。それから心配は要らないわ。フロルだって散々やらかしていたもの。反省会は皆でしましょう」
「……うん」
ニクスは観念して話しだした。ヘカテーはノルンと同じパターンだそうだ。ニクスからしたら他人だけど、ヘカテー自身はニクスを母と呼んでいたらしい。
「テルスの系譜じゃなかったの?」
「そこは私もよくわかんない。トリウィアって名前にも聞き覚えなかったし」
『ニクスの子とされるパターンもあるそうよ』
なるほど。神話って曖昧だもんね。そういうとこ。
「それで娘と名乗る子が強引に住み着いてきたと」
「本当に強引だったよ。その上とても懐っこいんだ」
それで家出娘に絆されてしまったと。
「どうやっていなくなったの?」
「世界に穴を空けて。書き置きも無しで」
「最後も強引に飛び出して行ったと?」
「そう思ってたんだけど……」
「ニクスにバレず隠れ続ける事なんて出来るの?」
「普通は無理だけど……」
確信は無いわけね。実際ヘカテーの従神達が来ちゃったわけだし。
「イオスはどう思う?」
「今回は自分達で解決してみなさい!」
なんでさ。




