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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
45.白猫少女と(仮)

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45-13.アドリブ皇帝

「えぇ……フロル負けちゃったんだけど……」


 うっそでしょ? もうクレアと同じ手は使えないのよ?



「っ……はぁ……」


 セレネは舌打ちしかけたものの、ギリギリでルビィを抱いている事に気付き、誤魔化すように小さく溜息をついた。



「エルヴィ。ルビィを頼むわ」


「は~い」


 どうやらこれは想定外であるらしい。流石に私を驚かす為でもここまではしないだろう。フロルはあれだけ大見得切って負けたのだ。信じ難い事に。セレネはこれから緊急会議でも始めるのだろう。ここにはいないが今頃はカノンも頭を抱えている事だろう。



「私も」


「いいえ。アルカはここにいなさい」


 セレネはこちらも見ずにそう呟いて転移した。



「どうする、ノアちゃん?」


「最後、決着の瞬間だけフロルは本気を出し切っていませんでした。また何か企んでいます」


「けど流石のフロルだってこんな土壇場で悪ふざけなんかしないわよね」


「はい。だからどうしても必要な事だったのでしょう。あの場に立つフロルでなければ気付けない何かがあったのかもしれません」


 アリアの想定以上の人気を利用する事にしたのかしら? それだけじゃ理由としては弱すぎるかしら?



「このままアリアとクレアが戦って予定通りに邪神ツクヨミが現れたら場合ってどんな問題があるかしら?」


「問題は帝国の力を示せない事です。皇帝の名声は既に下落してしまったでしょう。フロルはアルカに敗北したのです」


 そっか。もう現時点でも……つまりそういう事?



「フロルは最初からここで負けるつもりだったの? 私との関係を公にする為に?」


「ここからアルカとズブズブの関係に持っていく事は出来るでしょうね。勝利したアルカに帝国ごと献上するのです。或いはフロルかステラ、もしくはコレット辺りが身を差し出すか。いえ、今更そんな事に意味はありませんか。アルカはムスペルからもツムギを迎えています。それは既に周知の事実です。帝国が後に続いたとしても後ろ盾には出来ても皇帝の評価に繋がるとは思えません。次のクーデターが起こるのも時間の問題となってしまうでしょう」


 折角鎮圧したのにね。むしろそれこそフロルの狙いなのかもだけど。



「そっか。まだ主力が引きずり出せていないからね」


「可能性は高そうです」


 クーデターが中途半端に終わってしまったからだ。鎮圧が早すぎたのだ。結果的に捕まえられたのは先走った愚か者達だけだ。けれど皇帝が悪しき魔女アルカに降ると言うなら意義を申し立てる諸侯も出てくるだろう。それが武力行使に変わるのもそう遠い未来の事では無い筈だ。



「けどだからって本来の計画の意義が薄まったら本末転倒じゃないかしら」


 結局力尽くで抑えるみたいな流れになっちゃうじゃない。どうせ最後には許しを示すつもりなんだから今の時点で十分とも言える筈だ。



「いいえ。手はまだあります。公表すればいいのです。クレアさんがフロルの手駒であると。それを証言出来る者も揃っています。民衆はともかくクーデターに加わる諸侯の中枢は掌握出来るかと。皇帝の真の切り札はクレアさんだったという結論に持っていくのでしょう」


「もう計画滅茶苦茶じゃない」


 だいたいクレア一度負けてるし。それもハルカに。ハルカに勝ったノアちゃんはハルカとの激闘による消耗を理由に棄権してしまったけれど、結局私の手駒代表なノアちゃんがクレアより強いという事実は揺らぐまい。例えクレアがアリアに勝ったとしても誰もフロルが私に勝ったとは認めないだろう。



「だからこそでもあります。一度負けたクレアさんよりは数々の激闘を制したアリアの方が勇者としても説得力があると判断したのでしょう。それにクレアさんは少々年齢が行き過ぎていますから」


 まあそこを突かれると……。と言うか今更……。



「なんで事前に根回ししなかったのかしら」


「そこはサプライズじゃないですか?」


 結局それかい。



「きっと民衆が信じないと考えたのでしょう。ここでフロルが勝っても、今度は何故フロルがそこまで強いのかという問題にも行き当たります」


「ああ。エルドガルト卿の件まで踏まえた路線変更なのね」


「タイミング的には関係もありそうですね」


「増々カノンやセレネを怒らせてまで黙っていた理由がわからないわ」


「そこは勘違いでは? 流石にカノンには根回し済みなのでは?」


「まあそうよね。怖くて確認する勇気は無いけど」


「大人しく見守っていましょう。セレネの言う通りに」


「そうね。私達が騒いでしまったら皆も不安になってしまうものね」


 さてと。



「リシュ。どうぞ。何か聞きたい事があるのでしょ?」


 なんかさっきから三人娘がこっちをチラチラ見ながらソワソワしてたし。中でもリシュは一度気にせず飛び出そうとしていた所を二人に止められていたのだ。



「何って事はないんだけどさ。お困りごとかなって」


「ええ。少しだけね。けれど心配しないで。他にも仲間は沢山いるから。その子達が今後の計画を話し合ってくれているわ」


「そっか……」


「聞きたかった事はそれだけ?」


 リシュにしては控えめだ。何か言いづらい事でもあるのだろうか。



「少し場所を移す?」


「お願い出来る? 出来れば人は少ない方が良いんだけど」


「心得たわ」


 私はリシュだけを連れて深層に潜り込んだ。



「ありがとう。それでね。少し話が聞こえちゃってさ」


「クーデターの事?」


「……よくわかったね」


「リシュの秘密もなんとなく察しているわ。というか三人ともと言うべきかしら。あなた達はお行儀が良すぎるもの。それに講習を受けたとはいえ理解力もありすぎた。それだけの地力があった。どこかで高度な教育を施されてきたのでしょう。三人とも元はどこかのお貴族様かなにかよね?」


「まあ、うん。ボクはそうだよ。他二人もそうかなとは思っていたけど。アルカから見ても二人はそう見えるんだ」


「ええ。うちってお姫様多いから。見ればなんとなくね」


 本当はシーちゃんが記憶覗いたから全部知ってるけど、これくらいはすっとぼけさせてもらいましょう。あまり嘘は付きたくないけど今回ばかりはね。



「そっか。なら話は早いね」


「祖国が心配?」


「うん。要はそういう話。ボク実は貴族じゃなくて姫なの」


「あら。それは驚いたわね」


「そうは見えないよ?」


「ごめんなさい。冗談というか、ここは話を合わせておこうと思っただけよ。さっきも言ったけどうちは姫が多いから」


「なるほどね」


 よかった。納得してくれたみたい。



「早速だけど結論から伝えさせてもらうわね。悪いけど今の段階でそちらの情報を明かす事は出来ないわ」


「……そうだよね。うん。わかってた。条件は?」


「家族になら条件は要らないわ」


「なら加えてくれる?」


「他の二人はどうするの?」


「二人も同じ道を選ぶんじゃないかな」


「ユニも?」


「きっとね」


「曖昧ね。今の時点で頷く事は出来ないわ」


「わかった。先に話し合っておくよ」


「あなたはどうして旅に出たの?」


「別に。特別な理由なんて無いよ。ただ王位争いに巻き込まれたくなかっただけだよ」


「そう。苦労したのね」


「大した事じゃないよ。今の生活は性に合ってるし」


「言っておくけどうちの子になったら気ままな旅生活なんて出来ないわよ。結構忙しいんだから」


「それでもアルカの下で暮らすのはきっと楽しいよ」


「諸条件はまた後でね。二人の説得頑張って。三人纏めてじゃなきゃ受け入れないからね」


「了解~」

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