45-12.決勝戦
「おはよう、シア、リシュ、ユニ」
「おはようございます。アルカさん」
「おっはよ~♪ アルカ♪」
「おはよう……アルカ……さん……」
リシュは元気そうね。シアはギリギリ。ユニはまだしんどそうだ。
「今日は一緒に武闘大会の観戦に行きましょう」
「え? 観れるの? 今日決勝でしょ? 席なんて空いてないんじゃない?」
「心配要らないわ。特別席を確保してあるから」
今日は私も初めてのVIP席だ♪ とっても楽しみね♪
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「え? これ私の席なの?」
「何を驚いておるのだ」
いやだって。まるで玉座みたいだ。いやまんま玉座なんだろうけども。それがフロルの分と並んで用意されている。所謂皇后様の席だ。けど私とフロルの関係は帝国の中枢にだって内緒だ。あくまで家族の中だけの秘密だ。まだ仕上げは済んでいない。最後まで気を抜くべきじゃないと思うのだけど。
「くだらん事を気にするでない。ほれ。早う席に着け。試合が始まるぞ」
「って、そうよフロル。あなたここに居ちゃダメじゃない」
「うむ。だから手を煩わせるな。折角特等席を用意してやったのだ。ありがたくふんぞり返っておれ」
「そう言うなら。ありがとう。試合頑張って。アリアもクレアも強敵よ」
今更言うまでもない事だけど。
「うむ! 我が実力を以って勝利をもぎ取ってみせよう!」
気合十分ね♪
「私は棄権させられました」
「ノア、空気読みなさい」
あはは♪
フロルを見送って席に座ると、シア、リシュ、ユニの三人が恐る恐る近づいてきた。
「本当にグルだったのね」
あら。気付いていたのね。
「私達の特別席も十分凄い筈なのにアルカの椅子見ると霞むよね」
ふふ♪ 面白い着眼点ね♪
「こらリシュ。失礼よ」
大丈夫よ。そんなにかしこまらないで。折角仲良くなれそうなんだから♪
「三人も好きに寛いでね。けど出入りはダメよ。どうしても外に行きたい時は私達の誰かに声を掛けてね。転移で送ってあげるから」
「「「はい!」」」
良いお返事♪
「それで? こいつら誰よ?」
しれっと空いたフロルの玉座に腰掛けるセレネ。なんの躊躇いもなかった。私の一番として当然の権利だとでも言いたげだ。流石にフロルも怒るかもしれない。言わないけど。
「私の事を調べていたから教えてあげてるの。まだ家族云々の話はしてないわ」
「そういう事は先に根回しなさいな」
「ごめんて。許してくれるでしょ?」
「最後まで責任持つならね」
「もちろん♪」
「ならいいわ。好きにやりなさい」
「ありがと♪ セレネ♪」
「セレ姉。三人は私の担当」
「そう。ルカなら心配要らないわね」
「ふふん♪」
可愛い♪
「「「えっと……」」」
「私はセレネ。アルカの正妻よ」
そういう言い方するとまたノアちゃんが……あれ? 気にしてなさそう?
「なんですか?」
「ノアちゃんは私の膝に座る?」
「喜んで」
ふふ♪
「ズルいわ。私もそっちが、いえ。こっちでいいわ」
ルビィとリヴィの視線に気付いたようだ。
「リヴィ」
「うん♪」
ノアちゃんが広げた腕の中にリヴィが飛び込んできた。
「ルビィ」
「えへへ♪」
セレネもルビィを呼び寄せた。
「皇帝の玉座を何だと思っているのかしら……」
ユニがドン引きしている。
「後でボクも座らせてもらえないかな?」
「やめなさい」
ふふ♪ 後でこっそりね♪
「まぁま~」
アルルが少し寂しそうにこちらを見ている。ふふ♪ エリスの膝の上も離れ難かろう♪ その気持ちよくわかるよ♪ 私もエリスの膝枕大好きだもの♪
「始まりますよ」
そうね。上の皇帝席でフロルが演説を始めたわ。観客の皆もとっくに気付いていたと思うけど、自分が参加者であった事を暴露するつもりみたいだ。
「アリアよ! よくぞ我が帝国の誇る最強の将を打ち負かした!」
セフィ姉の事ね。アリアとセフィ姉が準決勝で戦ったのもこの流れに繋げる為だったのね。後はフロルがアリアを下せば私の差し向けた少女達は全員敗れる事になるわけだ。同時にそれは私が皇帝の傘下に加わる事も意味している。
「その健闘は讃えよう! お主の実力はただ与えられただけのものではあるまい! 弛まぬ研鑽あってのものだ! わらわはそう確信している! これまでの試合を観てきた諸君らもそう思うことだろう!」
観客席から盛大な歓声が上がった。アリアの人気も彼らの信頼を勝ち得た要因だろう。ノアちゃん対ハルカみたいな派手な試合は無かったけれど、それでもアリアはこの大舞台で多くの人々に実力を証明してみせたのだ。今回のMVPはもしかしたらアリアなのかもしれない。
「魔女アルカよ! 観ているか! お主の差し向けた小さくも強大な刺客は残す所あと一人だ!」
このままだとクレアの印象薄まらないかしら? やっぱりそれも意図的かしら?
「約束を忘れてはおるまいな!! アリアが敗れればお主も我が傘下へと加わるのだ! 首を洗って待っておれ!」
それでも観客達は小さなアリアの活躍に期待している。大会が魔女アルカに荒らされてしまったなんて冷めた視線を送る者は最早一人もいないだろう。アリアの人気はそのまま私の印象改善にも繋がっていたのだ。
「待たせたな! これ以上は語るまい!! 後は力を以って示すとしよう!!!」
フロルが皇帝席から闘技場のど真ん中に飛び降りた。観客席からは驚きの声ではなく、熱狂的な大歓声が鳴り響いた。
「そう! 我こそが最後の相手だ! カロルとは仮の姿! この九十九第皇帝フロリアーナが手ずから降してやろう! ゆくぞ!! 我が勝利は帝国と妹エステリーナの為に!」




