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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
45.白猫少女と(仮)

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45-9.一蓮托生

「金属生命体?」


「それが皆の頭の中に?」


「バカバカしい。やっぱり真面目に答える気なんて」


「ユニ」


「シアはなんでこんな奴を庇うのよ!」


「私達はただ真実が知りたいだけよ。ユニも同意してくれたじゃない」


「真実なんてどこにあったの!?」


「それは……」


「帰りましょう。用は済んだわ。これ以上は時間の無駄よ」


「待って、ユニ。アルカさんは嘘ついてないと思うよ」


「リシュ!! ふざけないで!!」


「ふざけてなんてないってば。だいたいどうやって帰るつもりなの? ここは未開拓領域の」


「そんなの嘘に決まってるじゃない!!」


「ユニこそなんでそこまで疑うの? アルカさんがすっごく強いのは事実でしょ? ボク達はこの目でその痕跡を見てきた筈だよ? 少しは落ち着いてよ。ようやく本人とも会えたんだからさ。こんな機会を逃したら勿体ないじゃん」


「……どうせ菓子が食べたいだけでしょ」


「美味しいよ♪」


「……はぁ」


 リシュのお陰でユニも少し冷静になったようだ。とはいえ折角だけどこれ以上ここでのんびりお茶をしているべきじゃない。私は三人に情報を明かすと決めたのだ。これは勧誘とは別の話だ。例え彼女達が敵対すると決めたとしても仕方のない事だ。それでも私は説明するべきだと思うのだ。この子達はこうして私の下へと辿り着いたのだから。



「場所を移しましょう」


 今度は私世界のシーちゃん船に移動した。



「「……」」


 二人は言葉も出ないようだ。何時もの経路で船や世界を見て回ったけれど、その間口を開いていたのはリシュ一人だった。



「ねえねえ! アルカさん!」


「これはね」


 次から次へと興味を示すリシュに様々な機器を説明していく。リシュは素直に感心してくれている。他の二人より明らかに友好的だ。けどこの子は油断ならない。たまに何を考えているのかわからなくなる。


『心を覗いたら一発じゃない』


 ダメよ。この子達には悪いけどこれも良い機会よ。言葉で説明する努力は続けるべきよ。


『そうかもね。頑張って、アルカ』


 ありがとう、イロハ。



「二人は? 聞きたいことあるんでしょ?」


 ルカがシアとユニに話しかけている。



「……あなたが私達より強いって本当?」


「うん。行こ」


「え? どこへ?」


 どうやら訓練場に移動するようだ。たしかにそれも一つの手かもしれない。彼女達は冒険者だ。戦った相手の実力については他の事より正しく理解出来るだろう。



 それから程なくして三人は訓練場の床に倒れ伏していた。ルカが一人で転がしたのだ。まるでルネルのように綺麗な投げ技だった。ルカも本当に強くなったものだ。どんどん先を進んでいくアリアに追いつこうと必死だったものね。



「まけた~~♪」


 リシュは何故か嬉しそうだ。



「手も足も出なかったわ……」


 シアは何か納得した様子だ。



「こんなバカな事が……」


 ユニはまだ認めきれていないようだ。それでもその言葉は随分と弱々しくなっている。



「実は全て幻術だったのかしら……」


「そんな筈ないじゃん。お菓子美味しかったもん」


「何の根拠にもなってないじゃない」


「そうでもないよ。味覚なんてそう簡単に騙せないもん」


「私は魔術の事なんてわからないわ」


「魔術はボクの担当だもんね♪」


「うちの専門家が間違いないって言ってるんだから信じましょう」


「実は既に洗脳されているのかもしれないわ」


「そんな事に意味があるかな? アルカさんはいざとなったら始末出来る人だよ? ボク達に付き合ってるのなんて誠意か趣味のどっちかだと思うけどなぁ」


「女の子が好きって言ってたじゃない。リシュは小さくて可愛いらしいもの。きっと目を付けられているのよ」


「なら付け入る隙もあるかもね♪」


「二人とも本人の前でなんて話してるのよ……」


 別に気にしてないわ。どうぞそのまま続けてて。



「ルカ。今度は私とやりましょうか」


「望む所」


 三人を脇のベンチに寝かせてルカと向かい合った。きっと私達の修行風景も何かの参考になるだろう。




「……これが」


「……凄いわね」


「アルカさん達は悪い人達じゃないと思う」


「だから許せと?」


「あの子を殺したのはアルカさんじゃないよ」


「甘すぎるわ。自ら手にかけたと証言したじゃない」


「千三百五十人。アルカさんが命を奪った数。アルカさんはその全てを記憶しているみたい。あの子の、ハンナの事も覚えていた。私達が友達だった事までは知らなかったけれど」


「ハンナを殺したのはボク達だよ。あの子は冒険者でもなんでもなかった。何の変哲もない普通の宿屋の看板娘だ。そこに寄生虫を持ち込んだのはきっと」


「私は信じないわ!!」


「アルカさんは命の恩人よ」


「シアまで信じてるの!?」


「……」


「三万人よ! あの事件で奪われた命の数は! 既にその多くが死んでいたですって!? 自分が実際に命を奪ったのは千人ちょっとですって!? 寄生虫に乗っ取られて生前の行動をなぞっていただけですって!? そんな話しが信じられる!? あのハンナがそんな得体の知れないものに変わっていただなんてある筈がないわ!! 私達は笑いあっていたじゃない! あの時! あの瞬間まで! 女将さんが泣き崩れる様を見たじゃない! それもこれもあいつが簡単に切り捨てたからよ!! 世界の為だからなによ! 千人はまだ生きていたんでしょ!? 広まらないようにって言うなら隔離し続ければよかったじゃない!! それだけの力があるんでしょ! この船なら千人くらい暮らせるでしょ! あいつは出し惜しんだのよ! 全力を尽くさなかったの! 世界の為じゃない! 保身の為に千人を犠牲にしたの! あいつの言葉が全て真実だったとしても善人なんかである筈がないわ!」


「……言ってたでしょ。もうどうやっても助からなかったんだって」


「自分達に出来ないからって見限って一方的に命を奪ったのよ!」


「ユニ。だからってそれで当たってしまっては今度は私達が勝手すぎるじゃない。私達にはどうして助かりようがなかったのかもわかっていないのよ。出来る事をやっていなかったと責めるには判断材料が足りていないわ」


「なんでそんな冷静なのよ!? 仇が眼の前にいるのよ! 事実はそれだけでしょ!?」


「手も足も出なかったじゃん。力も無いのに吠えてたって意味なんか無いよ。逃げるか仲良くするか。二つに一つだよ。後者の方がまだ可能性はあると思うけど」


「……なによそれ……仇を討つためにあいつに師事するってこと……」


「違うよ。知る必要があるって話だよ。シアがそう言ってるじゃん。ボク達がこんな態度じゃいつまでアルカさんの優しさが続くかわかったもんじゃないけどね」


「なにが優しさよ……ただの罪悪感でしょ……」


「そうだよ。きっとアルカさんは感じてるんだよ。だから全てボク達の勘違いだったんだよ。後で謝らないとね」


「謝ることなんて何一つありはしないわ」


「もう意固地になってるだけじゃん」


「あいつがどれだけ悔いようともあの子の命を奪ったのは事実よ。そして本人が何食わぬ顔で祭りを楽しんでいた事も」


「なら一生閉じ籠もってろって? 世界を救ってくれた人にそう言うの? 今も世界を良くしようと頑張ってくれているのに? 全ての責任を被せて責め立てるの? ボク達は何の役にもたっていないのに? 後から半端な事実を知ってただ騒ぎ立てるの? そっちの方がよっぽど悪人だと思うよ?」


「……」


「アルカさんが再び表舞台に出てきたのは必要な事だったと思うの」


「……」


「恥ずべき事は無いって示す必要がある。このお祭りはその為の舞台なんだと思う」


「……つまり皇帝もグルなのね」


「ユニは悪役が欲しいんだよね。自分の悲しみをぶつける相手が欲しいだけなんだよね」


「……そんなんじゃないわ。おかしいのはあなた達の方よ」


「そうかもしれない。私は自分でも驚く程冷静なの。私だってユニみたいに言いたい事は沢山あった筈なのに」


「きっとユニが代わりに言ってくれたからだよ。ボク達が冷静でいられるのは」


「そうね。きっとそうなのよ」


「なによ急に……」


「急じゃないよ。ボク達は一蓮托生でしょ」


「だから一緒に謝りましょう。私達は言いすぎた。それからもう一度話を聞かせてもらいましょう。いずれ全ての真実を知るために」


「もちろん付き合ってくれるよね?」


「……わかったわよ」

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