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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
45.白猫少女と(仮)

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45-8.追跡者

「本当にあなたがあの?」


「ええ。そのアルカよ」


 警戒させちゃったかな?



「そう言われてみるとすっごく強そうに見えてきたかも?」


 ボクっ娘トリシュは単純ね~。



「くっ! 私とした事が! 何故気付かなかったの!?」


 ユーニスことユニちゃんは三人の中で最初に臨戦態勢に移った。しかも二人を守るように自然と前に出ている。判断の速さと身を挺したその行動は評価に値するわね。



「待って二人とも! アルカ、さんに敵意は無いわ!」


 お。リーダー(仮)のシンシアは冷静なのね。これも悪くない判断ね♪



「単にそれだけ力の差があるって事じゃないかな?」


 そうよ。こちらはあなた達に敵意を抱く必要すら無いの。リシュも良いところに気付けたわね。



「そうよ! 不自然な程に落ち着いているんだもの! その時点で気付くべきだったのよ! 私達どころかこの帝都中の人々が敵対しようが意に返しもしないのよ! こいつが本物で間違いないわ!!」


 本物? ユニはパニックを起こしかけている。そこは少々減点だ。今更後悔したって意味は無い。二人を守りたいなら先ずは逃がすべきだ。折角前に出たのに片手落ちだ。或いはシアのように私の動向を見極めるのもいいだろう。どちらにせよこの状況でただ声を荒げても良い事なんて何も無い。せめて意味のある言葉を発するべきだ。



「落ち着いて」


 ルカがユニの前へゆっくりと歩み出た。



「大丈夫。敵じゃない」


「誰がそんな言葉!」


「落ち着いて」


「……」


 よかった。ルカの説得は通じたようだ。こんなに小さな子供の言葉だもんね。警戒心を向け続けるのも難しいよね。



「こんな小さな子を使うなんて……やっぱりあなたは……」


 ありゃ? 何か勘違いされてる? まさかこの期に及んで私の実力を疑ってる? それともただの負け惜しみ?



「その娘はあなた達よりずっと強いわよ」


「……何よそれ」


 あらら。これは信じてないわね。



「安心して。私達を助けようとしてくれた心優しい子達に危害を加えるつもりは無いわ。それよりお礼をさせて頂けるかしら? 出来る事なら誤解を解いておきたいの」


「……お礼?」


「美味しいお茶でもいかが?」


 指をパチンと鳴らして我が家に転移した。既にテーブルの上にはお茶とお菓子が並んでいる。



「「「……」」」


 もう一度パチンと指をならして三人の服装を変化させた。



「あら。これは想像以上ね。よく似合っているわ。三人ともまるでお姫様みたいね♪」


「「「……」」」


 あらら。固まっちゃった。



「改めて自己紹介させてもらうわね。私はアルカ。魔女アルカ。お茶とお菓子と女の子が大好きな心優しい魔女よ♪」


「「「……」」」


 あら何かしらその目は。ちょっと洒落になってない感じ。



「アルカさんは……」


「何でも聞いてみて。遠慮せずにね」


「……美味しそう」


「「リシュ!?」」


「どうぞ♪ きっと気に入ってもらえると思うわ♪」


「頂きます!」


「「ちょっ!?」」


「うっ!?」


「「リシュ!?」」


「うっま~~~~~~い!!!」


「「え? えぇ……あなた何考えて……こんな時に……」」


「うまうま♪ うまうま♪」


 いい食べっぷりね♪



「ふふ♪」


「……どういうつもり?」


「どうって?」


「あなたは何を求めているの?」


「だからお礼がしたいって言ったじゃない」


「割に合わないわ」


「割? このお菓子の事? 何も気にする事は無いわ」


「それもだけどそうじゃない。あなたは身を隠していた筈でしょう? 私達に拠点を見せてしまって良いの?」


「ええ。別に構わないわよ。ここは未開拓領域のど真ん中だもの。知った所で誰も近づけやしないわ」


「は……?」


「気になるなら後で案内してあげるわね♪」


「そんなバカな事が!」


「ユニ!」


「っ!」


「ごめんなさい。アルカさん。私達にも敵対の意図はありません。数々のご無礼どうかお許しください」


 これは明らかな警戒ね。下手に出て状況を好転させようとしているのが見え見えだわ。冷静なシアですら心の内に秘めた負の感情を隠しきれていないもの。話し方を変えたのも距離を取る為よね。



「無礼だなんて思ってないわ。こちらこそごめんね。勝手に連れて来てしまって。お礼がしたいのは本当よ。それからあなた達と少し話をしてみたかったの。どうか仲良くしてくれると嬉しいわ♪」


「はい。こちらこそ」


「……」


 やっぱり何か含みがあるわね。とは言えこれでリシュとシアは落ち着いてくれたわ。ユニはまだ強い敵意を放ち続けているけど一先ずシアの方針に従う事にしたようだ。



「頂きます」


「どうぞ~」


「……美味しい」


 ふふのふ♪



「ふぇえふぇえ、ふぁルふぁはん」


「飲み込んでから喋りなさい」


「んぐ! ねえねえ! アルカさん!」


「どうぞリシュちゃん♪」


「アルカさんはなんであんな事したの?」


「リシュ!」


「沢山の人を殺しちゃったんだよね? ボクバカだからよくわからないの。アルカさんがそんな事をした理由が。そんな事をしておいて平気で人前を出歩いている理由が」


「そうよ! あなたは言ったじゃない! 三万もの命を自分の手で摘み取ったって! どんな理由があったかなんて知らないわ! あなたは何故平気な顔をしているの! あの日から一年も経っていないのよ! 罪悪感は欠片も無いっていうの!? 大切な人を奪われた遺族達に申し訳ないとは思わないの!? いったいどういうつもりで出歩いていたの!?」


 そうだよね。それが当たり前の反応だよね。シルも今回ばかりは二人を止めるつもりが無いようだ。この子達はこれを聞く為にハリボテの歩み寄りを見せたのね。



「返す言葉も無いわ」


「……それは卑怯です」


「そうね。……もしかしてあなた達の知り合いも?」


「……そうですよね。ご存知ですらないのですよね」


「ごめんなさい。勿論謝って済む事だとは思っていないけれど、私は」


「なら! ……理由を教えてください。私達はせめて知りたいんです。あなたに関する情報は集めました。肯定的な人も否定的な人も大勢いました。あのアルカさんがやった事なのだから必要な事だったんだと言い切る人が何人もいました。私達は段々わからなくなっていきました。だからもし本人と会うことがあったなら話を聞いてみようと思ったんです」


 そう……。



「あなた知っているの? 巷じゃ魔女アルカの偽物なんて珍しくないのよ?」


 それは知らなかった。



「アルカさんの悪評がどれだけ広まろうと信じ続ける人達がいるんです。そんな人達が利用されているんです。迫害される未来もそう遠くはありません」


 ……考えた事もなかった。



「なによその顔。本当に興味も無かったのね。そうよね。あれだけの力を持っているんですもの。当然よね」


「それとさ。かみってなに? なんか後からもう一人話しかけてきたよね。ボクそっちもよくわかんなくてさ」


「世界中の国々を回って説明したというお話も聞きしましたが、その具体的な情報を民へと流した国家は皆無です。少なくとも私達がこの一年近くの間に回った国々では一つも見つかりませんでした」


「片手落ちよね。保身しか考えていないのが見え見えよ。あなたを信じる人達はいずれ居なくなるでしょうね」


「説明してください。私達はその情報を広めます。その結果アルカさんが全てを敵に回すというなら私達は先頭に立ってあなたを討ちます」


『出来もしない事を言うものではないわね』


「「「!?」」」


「イロハ。引っ込んでいなさい」


『嫌よ。私大して知りもしない奴らから上から目線で説教されるの嫌いなの』


「ダメよ。私達に落ち度があったのは事実よ」


『それを巻き返す為に頑張っているんじゃない。私達の誰もが簡単に成せるだなんて考えてはいないわ』


「それでもよ。私達には誠心誠意伝えていく必要があるの」


『誰も信じはしないわ。こいつらだって証拠を突きつけたところで嘘誤魔化しと断ずるだけよ』


「そんなのやってみなきゃわからないじゃない」


『わかるわよ。さっきそう言ったじゃない。意味がわからないと。どの国も広めはしなかったと。これは信じる以前の問題よ。誰も理解なんてしていないの。宇宙人どころか宇宙の概念もまともに存在しないこの世界で「宇宙人が攻めてきた」なんて言葉に意味は無いのよ』


「それでも」


『そうよ。私達はそれでも理解を得ようと頑張っているの。けれどそれには時間がかかる。ヴァガル近辺まで神の教えが届くのは何十年も未来の話よ。けれどそれは届くだけ。理解して浸透するには更に何百年もかかるの。その時こいつらみたいな奴らはとっくにこの世を去っているわ。真面目に相手をするだけ時間の無駄よ。逆に中途半端な情報を教えてしまえば皆の努力を無駄にする結果にも繋がりかねないわ』


「それでもよ、イロハ」


『なら勝手になさい。アルカが私達の王なのだから。アルカの好きに決めるといいわ』


 ごめん、イロハ。嫌な役させちゃって。



「ごめんなさい、皆。全てを説明させてもらうわ。信じられない事ばかりだけど、どうか最後まで聞いてほしい」


「お願いします。アルカさん」

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