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異世界で始める白猫少女との二人暮らし ー だったのに、いつの間にか美少女ハーレムの主になって世界を救ってました ー   作者: こみやし
45.白猫少女と(仮)

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45-3.評論会

「流石に高度過ぎたわね」


 マグナの戦い方は見世物試合向きじゃなかったようだ。マグナ自身もそれを理解していたらしい。結局本気を出すまでもなく程々の所で降参してしまった。これ以上続けていたら危なかっただろう。きっとセフィ姉が手を抜いているようにしか見えなかった筈だ。セフィ姉の未来視を以ってしても成長したマグナの力の前には手も足も出なかった。


 それも当然か。マグナの力は相手の認識を自在に書き換えてしまうのだから。催眠だとか幻術だとかそんなちゃちなものじゃない。五感どころか思考すらも完全に支配されてしまうのだ。マグナの領域に一歩でも足を踏み入れれば。


 そういう意味では試合向きではある。見世物としても派手に演出する事は出来る。けれどそれはもう試合ではなく演劇かなにかだ。だからどうやっても対戦相手はピエロにしかなれない。武闘大会の会場で、それも国の人気者である軍団長様相手にやる事じゃない。きっと誰も納得しないだろう。


 試合前は今のセフィ姉ならもう少しどうにかなるかと思っていたんだけどなぁ。どうやら私は新生マグナの実力を見誤っていたらしい。シーちゃんとアイリスはどんな魔改造を施したんだか。



 きっと最初から間合いの内である闘技場の試合では、誰も今のマグナに勝つ事なんて出来はしない。シーちゃん抜きの私でも太刀打ち出来ないだろう。それくらい今のマグナはインチキだった。ヤチヨがマグナを翻弄出来たのはその間合いを正確に見極める目と狙撃の腕が噛み合った結果だ。マグナ自身が自分の力を扱いきれていない事も原因だろう。ヤチヨだってこの闘技場内で向かい合ってしまえば勝ち目は無かっただろう。



『でしょうね。ここまでやるとは。素直に驚きました』


『けれどまだまだよ。シイナとアイリスは教育方針がなってないわね。力だけカサ増ししたって意味無いじゃない』


『そうですね。功夫が足りていません。あれならばまだ付け入る隙もあるでしょう』


 本当に? イロハやツクヨミだってアリンコに変えられちゃうかもよ? 今のマグナなら自由自在に現実を書き換えちゃうんだからね?


『問題ないわ。私達は本体が別であるもの』


 それはズルくない?


『アルカ様に頼らずとも勝利は容易い事です。彼女が認識するより早く動けばいいのですから』


 そりゃそうだろうけどさ。流石に大掛かりな改変はマグナ自身の意識が向いていないと発動できないみたいだし。オートガードっぽいのもあるけど、あっちはかなり機能が限られているようだ。多分わざと制限を設けているのだろう。でないと自身に近づいてきた敵を片っ端から消滅させかねない。


 今のマグナの力は以前と別物だ。ノアちゃんとハルカの試合を誤魔化した時とも全然違う。相手を「ILis」内に引きずり込むまでもなく世界そのものを侵食している。消してしまったものは永遠にそのままだ。どうしてこうなった。



『当然ながらイオスには通用しないでしょうね。彼女は世界や空間を超越した存在だもの』


 確かに相性悪いわね。流石は原初神。


『私も早撃ち勝負に持ち込めば……いえ。無理ですね。彼女には認識外の脅威を取り除く自動防御までありますから。こちらの世界でも弾丸を消されて終わりでしょう。やはり私の場合は間合いに入らない事を徹底すべきですね』


『そろそろ~』


『そうですね。小春先輩。行ってきます』

『ます~』


 二人とも頑張ってね♪ 応援しているわ♪



 シーちゃん。マグナの事は後でまた話しましょう。どうやってレイヤーに干渉する術を見つけたのか教えて頂戴。


『流石はマスターです。お気づきでしたか』


 前にハルちゃんが言っていたやつよね。イオスの力もそっち側のものなんだっけ。


『ええ。その認識で間違いありません。イオスは更に下の階層です。ノルンやルネルがその上で、マグナが扱っているのは更に上位の階層です。この世界そのもののテクスチャを張り替えているに過ぎません。そしてこれはマスターにとっても身近なものです。そうです。覚視で視えるものとはこれにあたるのです。つまりは四次元的な』


『ストップ。後でよ。後で』


『イエス、マスター』


 シーちゃんたら。さては聞かれるのを待っていたのね。でもごめんね。折角だけどお楽しみはお預けよ。今日の所は皆の試合を見守りましょうね。




----------------------




 ヤチヨとヒサメの試合が始まった。ヤチヨは袴ブーツに二丁拳銃の早撃ちスタイルだ。対してヒサメはサメ型着ぐるみパジャマだけだ。他に武器も防具も持っていない。


 試合開始と同時にヒサメの姿が掻き消えた。どうやら地面に潜っているらしい。背びれだけが高速で地面の上を走っている。わざわざ出さなくてもいいだろうに。なんというサービス精神。それとも拘りかなにかだろうか。普段はノンビリした子なのに戦闘時は打って変わって機敏な動きで相手を翻弄している。ヤチヨの弾を避けるなんて相当だ。


 当然観客達には何が起こっているのかわからない。うちの子達の試合は大体そうだけど。実況役の人もどう実況していいのかわからなそうだ。なにせ絵面的には少女が見慣れない武器を地面に向けているだけだ。異様な速さで繰り出される両手のスナップがマシンガンのような勢いで地面に穴を空け続けている事がわかる程度だろう。いやそれもわからんか。見えないってあんなの。



『確かに実力は上がっているけど所詮この程度なのかしら』


 こらこらイロハさんや。



『よくやっている方ですよ、あの子達は』


 さっすがツクヨん♪



『ですが、ノアと同じ過ちを犯しています』


 ……ああ。なるほど。



『正直銃なんか使うより殴った方が早いのよね。魔術ならもっと早いわ。私なら地面ごと引っ剥がしてやるのに』


『いいえ。早いのは拳と脚です。私は地を踏み砕いてみせましょう』


 こらこら。喧嘩しない。



『とくしょく』

『ハルも』

『ほしい』


『ナナミモ』


 結局行き着くとこまで言っちゃうと身一つで十分ってなっちゃうものね。


『そうとは限りませんよ』


 まあシーちゃんはそうでしょうけども。


『私も本体の方の私も特色らしい特色は無いわね』


 お姉ちゃん達には莫大な神の力と蛇ちゃんがいるじゃない。


『世界ごと飲み込んでしまうのが最強よね』


 イオスなら消滅させられるかも。前にミーシャが管理していた世界を凍結させてたし。


『最強だなんて話をしだしたら時間軸ごと砕いてしまう邪神やそれを虫けら扱いするイオスの本体なんかもいるのよね』


 ねえ、どんどん話逸れてるから。もっと素直な心で応援してあげて。


『アルカが余計な事言い出したんでしょ』


 はいはい。もうそれでいいから。



「きゃっ!」


 ラーラがしがみついてきた。闘技場いっぱいに広がる竜巻が出現した影響だ。どうやら地面から出てきたヒサメが今度は暴風に乗って空を泳ぎ回っているらしい。シャークネ◯ドじゃん。パクリじゃん。


『だから言ったじゃない』


『言ったのは私です。このツクヨんです』


 気に入ったの?



『未熟な子達ってどうしてこう型に嵌めたがるのかしら』


『それが自らの成長に枷をしてしまうとも知らずに』


 そりゃあ術師と拳法家の到達点みたいなあなた達を意識してるからでしょ。同じ事やったってイロハとツクヨミには勝てないもの。だから皆新しい何かを探して試行錯誤を続けるのよ。けど皆が皆ハルちゃんみたいな極まった研究者タイプってわけでもないもの。何かを参考にして技を増やす事自体は悪くないと思うわよ。



『そこで満足しているから幼稚なのよ。工夫を忘れてはいけないわ』


『銃に拘るならば弾の種類を増やすべきです。再び我が弟子となるなら概念付与をお教えしましょう。体捌きも一から鍛え直して差し上げます。そうすれば弾も当たるでしょう』


 それはたしかに有効かも。ツクヨミみたいに自分の身体を壊しながら戦う必要も無いし。



『サメに拘るからって自分で突っ込む必要は無いわ。折角あれだけの暴風を扱えるんですもの。ヒサメには私が魔術の何たるかを叩き込みましょう』


 魔術を鍛え直せば技のレパートリーも増えるかもね。



 けどまあ、誘いをかけるのはもう少し見守ってからにしましょうか。二人だってわざわざ私達から離れてまで自分達を鍛え直してきたんだし。実際その成果も出ているんだから。



『……そうね。少なくともヤチヨは今のハルカに銃弾を当ててみせたんだものね』


『ヒサメもそんなヤチヨの弾丸を避け続けています。少なくとも覚視の鍛錬は合格点と言えるでしょう』


 よかった。二人とも少しは冷静になってくれたみたいね。



『マグナの……を流用すれば……弾丸は……サイバーシャーク……』


 もう一人ブツブツ言ってる。さては途中から聞いてなかったわね?

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