44-43.勝負の結果
「え? 私達の勝ち?」
『だってこれ殲滅戦だもの。ヤチヨが一人で倒しきってくれたわ』
「結局アルカ達も負けちゃったの?」
『ええ。側近組もハルカに全員倒されたわ』
「ハルカ姉は何したの?」
『う~ん♪ ふふ♪ それは直接見てのお楽しみね♪ きっとその方が楽しいから♪』
「やっぱりアイリスとは気が合うね♪」
『でっしょ~♪』
「あ、でも。マグ姉がどうやって負けたのかは気になる」
『あれね~。私も驚いたわ』
「アイリスが?」
『ええ。ヤチヨったらマグナを泣かせてしまったの』
どういうこっちゃ。
『執拗に狙撃し続けたのよ。やった事はただそれだけなの。それも本人を狙うんじゃなくて、わざと足元とか周囲の草木に向かって撃ち続けたの。マグナの奇跡が及ばないように』
なるほど。初見でマグ姉の力を見抜くなんてやるなぁ。あれはマグ姉を守る為に自動で発動するけど、無意識で影響が及ぶ範囲はそんなに広いわけじゃない。
『ヤチヨも使えるみたいよ。特別な覚視』
「それは知って……あれ? もう?」
『ええ。パトラの知っている未来とは違うわよね』
「うん。もっと先の筈だよ。ヤチヨが遠見の力に目覚めるのは。そもそも旅をしていたなんて話も聞いた事無いし」
ヤチヨはアンジュ姉と同じ千里眼タイプだ。まあ、アンジュ姉は読心以外の全部が使えるんだけども。けど中でも遠見については群を抜いている。ヤチヨの遠見はアンジュ姉程の距離は無理だけど、より戦闘に特化している感じだ。相手の弱点とかも見抜いてしまう。流石にまだそこまでじゃないだろうけど。
『アルカと離れた事で早く目覚めたのかしら?』
「たぶんそうだよね」
実にヤチヨらしい。
『レヴィの未来視は今のうちから育てておかないとマズそうね』
「え? 今って何の訓練もしてないの?」
『ええ。本人が嫌がっているのよ』
「レヴィ姉は平和主義だからね。けど放っておいたらダメだよ。レヴィ姉が苦しむことになっちゃうから」
『そうね。力が弱い内に制御技術を学ばせておきましょう』
「お願いね」
あと他に問題がありそうな子っていたかな?
『大丈夫そうよ。念の為後で私が確認しておくわ』
「何から何まで」
『いいえ。あなたが提供してくれた情報はありがたいものばかりよ。こちらこそお礼を言いたいくらいね』
「それはキッシュ姉に言ってもらうやつだね。けどアイリスは別時間軸の知識に頼るの反対だったんじゃ?」
『それはそれよ。盲信はダメだけど無視する手はないわ』
「……そうだね。私もちゃんと見つめ直すよ」
結局あの後未来視は使えなくなっちゃった。火事場の馬鹿力ってやつだったみたい。何にせよまだまだ修行が足りないらしい。
『頑張りなさい♪』
もしかしてアイリスが何かしてくれたのかな? それは聞かない方がいっか。ふふ♪
「パトラ!」
「おかえり、ジャン姉。私の勝ちだね♪」
「勝ったのは私よ。チームとしては負けてしまったけど」
「じゃあ今回は引き分けって事で」
「結局キリが悪いままね。すぐに次の試合を始めましょう」
「今度はジャン姉と一緒がいいな♪」
「……仕方ないわね。なら討ち取った数が多い方が勝ちよ」
「そんなに私と勝負したいの?」
「違うわ。パトラを負かしたいのよ」
「ひっどいお姉ちゃん」
「言ったでしょ。私達の精神年齢に大した差は無いわ」
「対等でいたいってこと?」
「ええ。私とパトラは対等よ。一番の相方よ」
「残念だね。その枠はキッシュ姉にあげちゃったんだ♪」
「ちょっと。それはどういう事よ?」
「あれ? 言ってなかったっけ? パトちゃんズのナンバーワンはキッシュ姉だよ? つまり私のハーレム一号もね♪ ジャン姉は二番目♪ あーゆーおーけい?」
「聞き捨てならないわね。今すぐ訂正なさい」
「や~だよ♪」
「勝負よ! 私が勝ったら順位を繰り上げなさい!」
「ダメだってば。だいたいジャン姉が悪いんでしょ。早く素直にならないからこうなったんだよ? 私は先にジャン姉を誘ったんだからね?」
「そこは今更言ったって仕方ないでしょ!」
「だから諦めて♪」
「諦めないと言ってるの!」
「そうやっていつまでも追いかけてきてね♪」
「あなた性格悪すぎよ!」
「でも好きなんでしょ♪」
「そうよ! だから逃さないわよ! 絶対に!」
「逃げも隠れもしないってば♪ 私もジャン姉が大好きだもん♪ けど私はジャン姉だけで我慢出来ないの♪ アルカもキッシュ姉もカティ姉もラーラ姉もマグ姉もアイリスも♪ みんなみんな私のものにしちゃうんだから♪」
「必要ないわ! あなたには私だけがいればいいのよ!」
「自分だってアルカも好きなくせに。それからフロル姉やマキナの事だって」
「私はいいのよ! けどあなたはダメよ!」
「なんて自分勝手な」
「あなたが言えたことですか」
「お互い様だね。似た者同士って事だね♪」
「わかったのなら委ねなさい」
「なんでさ。いくらなんでも無茶苦茶言い過ぎだよ」
「あなたも同じような事言ってるじゃない」
「違うよ? 私はジャン姉の一番でさえあればそれでいいんだよ? ただ私の一番はあげないよって言ってるだけだよ。ジャン姉が誰を二番目以降に据えようが気にしないってば」
「どの口で自分勝手だなんて言えたのよ!?」
「仕方ないじゃん。この家は元々そういう家なんだからさ」
「不健全過ぎるわね」
「その意見には同意するよ。私にとっては天国だけど」
「いっそ連れ出してしまおうかしら」
「アルカは地の果てまで追ってきてくれるよ」
「まるでそんな光景を見たことがあるかのように言うわね」
「あるよ。何度か。未来のジャン姉もよくヘラってたから」
「へら?」
「えっと、落ち込んで極度のカマッテちゃんみたいになること? かな? 少し違うかもだけど大体そんな感じ」
「それで家出を?」
「うん。その度にアルカが迎えに行って増々依存させてた」
「まるで迎え酒ね」
「そうそう♪ そんな感じ♪」
上手い♪ 座布団一枚♪
「それになんだか他にもいるみたいな口ぶりだわ」
「未来のアルカは手が回りきっていなかったのかも。こっちのアルカと違う所も意外と多いし」
「私達のアルカは頼りになるのかしら?」
「なるよ。きっとどんな時間軸のアルカよりもね」
「その分この時間軸は敵も強大みたいね」
「あれ? ジャン姉はもう知ってるの?」
「あなたこそなんで知らないのよ。少しは勉強なさい。アーカイブは何時でも観れるんだから」
「え~めんどくさ~い。そうだ♪ ジャン姉が教えてよ♪ パトちゃんズ初任務だね♪ あれ? 二回目だったかな? まあいいや。とにかくよろしくね♪」
「話を戻しましょう」
「やっべ! 藪蛇だった!」
「こらっ! 待ちなさい!」
「もう一回やるんでしょ! 皆の所まで競争だよ!」
「その前に話よ! 待ちなさいってば!」
「ふっふっふ♪ なら捕まえてみるんだね♪」
「言ったわね! 約束よ! 捕まえたら昇格よ!」
「それはダメだってば! ジャン姉しつこい!」
「何度でも言うわ! 何度でも振り向かせるんだから!」
「あはは♪ ジャン姉私の事好き過ぎだよね♪」
「だからそう言ってるでしょ!」
「なら絶対捕まえてね♪」
「当然よ!!」




