44-41.時間稼ぎ
「ごめん! ラーラ姉!!」
「えっ!? えっ!? きゃっ!?」
『『ラーラ! アウト!!』』
よし! ラーラ姉が銃の扱いに手間取ってくれていて助かった!!
『まだよ!!』
そうだった! まだ六人のジャン姉が! けどこれで包囲は抜けられる!!
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「ふふ♪ なぁんて思っているんでしょうけど♪ 狩りの時間はこれからよ♪ 兎ちゃん♪」
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『マズいわ! 追い込まれてる!』
くっ! 油断した! 完っ全に油断した!!
「仕方ない! 迎え撃つよ!」
『ダメよ! せめて体勢を立て直さないと! ゲーム中は覚視も制限されているのよ! いつも通り一方的に勝てるとは思わないで!』
「そんな事言ったって!」
『大丈夫よ! 私の言う通り進んで! まだ手はあるわ!』
「うん!!」
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「ふふふ♪ やっぱりここを選んだのね♪」
「これもジャン姉の計画通り?」
「そうよ♪ あなたはもうどこにも逃げられない♪」
「ならさっさと撃ちなよ。グズグズしてたら皆来ちゃうよ」
「大丈夫よ♪ 手は出さないでってお願いしてあるから♪」
「来るのは私の仲間だよ」
「それはどうかしら?」
「NPCを六人も出しちゃうのは早計だったんじゃない? そうしなければアルカの不正を突く事だって出来たのに。いくらフロル姉だって多勢に無勢だよ。それともまさかマグ姉の奇跡を当てにしてるの? あれはそういうもんじゃないよ?」
「知っているわ。ふふ♪ あれが奇跡だなんて♪ そう呼ばせた人、いえ神は、とんだペテン師よね♪」
「……どうしてそんな事まで」
「戦いっていうのは始まった時点で終わっているものよ。パトラの方こそ準備が足りていないんじゃないかしら?」
「本当に何したの?」
「簡単な話よ。少し予習をしただけ」
「たったの三十分で?」
「それだけあれば十分よ。時間の速さは一定ではないんですもの♪」
「ズルっ子だ」
「用意周到と言いなさい♪」
「NPCの使用も注意されてたよね?」
「別に命を生み出そうってわけじゃないわ♪ それにシイナさんの許可は貰ってあるもの♪」
「後でアルカに叱られるよ」
「覚悟の上よ♪」
「他のジャン姉は認められないんじゃなかったの?」
「ええ。だから試合が終わったら綺麗さっぱり消えてもらうわ♪」
「よくないよ。そういうの」
「普通はNPCに命が宿ったりなんてしないものよ」
「そういう問題じゃ!」
「そういう問題よ。私は正しく理解しているわ」
「……今のジャン姉あんまり好きじゃないかも」
「……そう。なら早く終わらせてしまいましょう。話に付き合ってくれたお陰で既に包囲は完了しているわ。今度こそ諦めなさい」
「それはどうかな?」
「っ!?」
『『ジャンヌC! アウト!!』』
「いったい!?」
『『ジャンヌD! アウト!!』』
「どこから!?」
『『ジャンヌE! アウト!!』』
「ちっ!」
『『ジャンヌF! アウト!!』』
これで後二人。
「さてどうするジャン姉? 二人だけで勝てるかな?」
『『ジャンヌB! アウト!!』』
「あらら。一人になっちゃった」
「こんな筈が!? いったい何をしたのよ!?」
「だから言ったじゃん。皆来ちゃうよって」
「まだどこも決着なんて!? まさかアルカが!? シイナさんはなんで何も!?」
「今更気付いたの? 誘い込まれていたのはジャン姉の方だったんだよ♪」
「なっ!?」
ジャミングってやつだ。アイリスはここに罠を張ってくれたのだ。ジャン姉は私をここに追い込んだつもりだったけど、私達もここまでジャン姉を誘い込んだのだ。これもジャン姉の弱点だね。確かにジャン姉は勉強熱心だし経験豊富だけど、まだ知らない事にはとことん弱い。サポーターとの通信を一時的にとはいえ断ち切る手段が存在するなんて想像もしていなかったようだ。
『けれど隔離しておくのも限界よ。それとハルカがこっちに向かってるわ』
「ありゃ。ノア姉負けちゃったんだ」
これは二回戦もありそうだ。ノア姉が勝つまでやることになるだろうなぁ。また長引きそう。
「さて。私達も始めよっか」
「くっ!」
ジャン姉は判断が遅いなぁ。これも弱点、ってあれ?
「今の避けられた? あの体勢から?」
『パトラ!!』
うわっとっと。
『またインチキよ! 今度は思考加速ね!』
まったく次から次へと。往生際が悪いんだから。
『時間を稼がれたらマズいわよ! 今のハルカはハル達じゃ止められないわ!』
なんですと!?
『とにかく急いで!』
よくわかんないけど! がってん!!




